従業員50名の会社の価値:1.9兆円

2014-02-21 07:24

昨日私が見ているNews feedはFacebookによるWhatsAppの買収でうめつくされた。

その額がどうとか、Facebookの戦略がどうとかは好きな人に考えてもらえばよい。私が衝撃を受けたのは「4つの数字」だった。

Facebookが買収することが発表されたWhatsAppに関する4つの数字。
アクティブユーザ:4億5000万人
エンジニアの数:32人(エンジニア一人あたりアクティブユーザ数:1400万人)ちなみに社員数は50名。
ユーザが払うコスト:$1/year
マーケティングに費やしたお金:$0

基本方針
No Ads!(広告は表示しない!)
No Games!(ゲームは提供しない!)
No Gimmicks!(ギミックなし!)

Facebookが買収する金額:1兆6000億円(160億ドル)

引用元

上記は私が社内のSNSに投稿した内容。(1.6兆と1.9兆円と2つの数字があるが気にしない)

この数字が何を意味しているかわかるだろうか?

この会社にはマーケターもPR担当もいない。たった32名のエンジニアを含む50名の会社が1.9兆円の価値を持つと評価されたのだ。

第一にこれは「文字通り」一騎当千だということだ。この額はソニーの時価総額より10%程度大きいと言う。(引用元)まあ同じだとするとソニーの従業員数(関連会社含まず)は約15,000人。無茶苦茶な計算だが、WhatsApp一人の従業員はソニーの従業員300名に値する。(ソニーの関連会社も含めれば一人あたり4000人以上に相当)

そんな怪しげな計算をしなくても、アクティブユーザ4億人以上のサービスを32人のエンジニアだけでマネージしていると聞けば、IT方面の人は卒倒しかねない。NTTデータに派遣されていたときは、紙の仕様書を作るだけで、10名以上のエンジニアが座っていた。(そして半分以上遊んでいた)

これが先日書いた「プログラミング能力で世界で戦う」という意味だ。この会社にやとってもらう力があれば、世界中どこへいっても仕事が見つかるに違いない。

「Javaで書こうが、Cで書こうが、COBOLで書こうが、そこに価値の本質はないから。」

真顔で公言できるような人が働いている会社では雇ってもらえないだろうけどね。(ちなみにErlangを使っているそうだ)

もう一つ。Steve Jobsが言っていたと言われる「少しのことを徹底的に上手に行う」戦略の成功をこれほど雄弁に物語っている数字はないと思うからだ。「付加価値」を提供しようなどという寝言はこの会社に存在しないのだろう。

貼ってある標語

引用元

ただメッセージングサービスを磨き上げる。それだけで彼らはこれだけの価値を作り上げたのだ。マーケティング戦略がどうとか、広告宣伝戦術がどうとかM1層がどうとかは一切関係ない。

誰もが日常使っていながら、誰もが(無意識のうちに)不便を感じている。そうしたサービスを徹底的に上手く行う。それだけのことがこれだけの価値を生む。この買収劇が意味するところは巨大だ。

書いていてぼんやり思い出す。2000年頃、いろいろな検索エンジンを使ってあちこちの情報を集めていた。(当時はいろいろな検索エンジンがあったのだ)そのうち一つの検索エンジンが妙に良い結果を返してくることに気がついた。ただその検索エンジンの名前をどう発音するのかわからない。問い合わせ窓口に聞いてみたら

「グーグルです。みんなに宣伝してくださいね」

とメールが帰ってきた。そして当時も「検索エンジン競争の時代は終わり、これからはポータルとしてどれだけ付加価値をつけられるかが勝負だ」と声高に主張していた人もいた。