とにかく線を伸ばそう!
2015-01-14 06:57
Audio/Visual業界の「とにかく性能を向上させよう」という意欲には畏怖の念すら覚える。多くの人は忘れていたと思うが彼らはついこないだまで
「これからは3DTV」
と称し、誰も放映していない3DTVを売ろうとしていたのである。そして最新の「トレンド」は「4K,8K,ハイレゾ音源」だ。
批判すべき対象ではなく、憐れむべき対象になったソニーだが、ああ、どうしてこうネタにことかかないのか。
ソニーからは再生音質を重視した高音質版のmicroSDカードも発売される(ただし、こちらはまだ話で出ていただけなので、詳細は不明だ)。もちろん、通常のmicroSDカードも使える。
何事もそうだが、「正常」と「異常」の間に明確な境界線はない。そしてオーディオマニアという世界はそのグレイゾーンからかなりはみ出している、ということは知っている。しかし他に売るものがないとこんな発言を公にするようになるのだな。
シャーシにはアルミと銅を使ったハイブリッドシャーシを使用する。フレームには総削り出しのアルミ材を用いたうえ、金メッキを施した銅板を組み合わせることで、本体の剛性を高めるとともに抵抗値を大幅に下げ、クリアで力強い低域再生の実現につなげている。
引用元:2015 CES:ソニー担当者に聞く――ウォークマン「NW-ZX2」と新コーデック「LDAC」の特徴 (1/3) - ITmedia LifeStyle
本体の「剛性」を高めることで「クリアで力強い低域再生」ってさあ、本体が振動するならともかく、そこから接続されたヘッドフォンが鳴るんだよね?
いや、別に個人の金だから何に注ぎ込もうと自由だろうというのはもちろん正しい。シャーシの抵抗値が下がっているからこのウォークマンはいい音がするんだ!と大金を払う人がいようが私が文句をつける道理はない。ただ驚くのが、「あの」ソニーが、こういう「オカルトビジネス」を表に出してきたことだ。窮すれば鈍すとはよく言ったもの。
と嘆いているばかりでは生産的ではない。一つ思いついた。こういう「オーディオオカルトロジック」は学会でときどき見かける「感性を取り入れたなんとかシステム」とよく似ている。
何が似ているか?例えば「感性を取り入れた作曲システム」では途中のロジックに組み込まれた「感性表現変換アルゴリズム」が如何に慎重に設計されたかが語られる。しかし
「でもってその出力だけから本当に元の感性が反映されていると誰か識別できるわけ?」
という出力の評価が完全に欠落している点だ。そう指摘しても
「いや、感性を取り入れているので、大丈夫です」
という堂々巡りの議論にしかならない。それはあたかもソニーの担当者が「これだけインピーダンスを低下させ、これだけ剛性を向上させています」ととうとうと述べるようなもの。で、それ剛性が低い筐体に取替えて、ブラインドテストで判別できるの?と聞くのは「禁句」なのだろう。
どうやら大学というところで、そうした不思議な営みを続けることは意外に簡単らしい。きっとオカルトオーディオの教授も存在していろいろなことをやっているのだろうな。私が知らないだけで。そしてソニーは今やそうした「ニッチ」な領域しか売るものがないらしい。