ゴジラが来た

2017-03-06 06:28

息子が「地理のレポートで、ハザードマップについて書いた。付録としてゴジラが我が家を通るかどうか調べたい」と言って来た。

ちょっとまて。誰が鎌倉から武蔵小杉に直線ルートで進むと言った、とか不毛な会話が続いた後、ふと気がついた。本当にゴジラが来たらどうすればいいのだ。以下シン・ゴジラの設定に沿って考える。

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11/3 ゴジラ登場-街を破壊した後海に戻る。

まずここでどう対処するか考えねばならない。ゴジラは無傷で海に戻った。次はどこにくるのか?どこかに疎開するか?ではどこへ?

問題はゴジラの居場所が特定できない以上どこに来ることもあり得る、という点。日本再上陸も考えられるが、海はどこにも繋がっている。シベリアあたりに上陸してもおかしくはない。実家のある名古屋に避難したとしても、そこでまたゴジラに遭遇するのは御免である。

あれこれ考えたあげく「確かに不安だが日常の生活を送るしかない」という結論に達する。これが地震なら(余震はあるもの)ほぼ一回で済む。台風ならば事前に進路と規模が報道される。ゴジラはなんともならない。「再度襲来」の可能性だけは色濃く残り続ける。なのに場所も時期も全く想像がつかない。ずっと「自宅待機」をするわけにもいかない。


11/7 11:35 由比ヶ浜上陸


時間帯からしてゴジラの上陸をおそらく職場で知ることになるが、ここは話の都合で自宅にいることとしよう。問題はゴジラがどこに向かうか全く予想がつかない点。そして運の悪いことにゴジラは私の自宅と同じ県にいるのだ。ええい、せめて千葉に上陸してくれればいいものを。

ゴジラがどうやら内陸に進んでいることが報じられる。どう考えても自宅が踏み潰される可能性がある。逃げなくてはならない。問題は

「どちらの方向に」

「どうやって」

車は間違いなく使えない。このニュースが流れた途端ほとんどすべての車両が移動を始めるからだ。当然バスもだめ。となると頼れるのは鉄道だけということになる。

幸いにして私が住んでいる家の近くの鉄道は普段あまり混雑しない。しかし今だに東日本大震災の翌日のスーパーの光景を覚えている。つまり普段混雑しないと思っても、皆が同じことを考えるととっても混雑するのだ。電車でおしあいへしあいしている間にゴジラが

「がぉー」

っと来るのは勘弁である。

ここでゴジラの形態を思いだす。おそらくあいつは山に登れない。あの短い手を使って四つん這いで山に登っている姿は想像できない。

となると津波ではないが、とにかく高いところに避難するのが良さそうだ。近くにある丘の上に、とりあえずの荷物を抱えて、徒歩で逃げる。丘の上から遠くにゴジラの進行が見える。誰かが

「こちらに向かって来るぞ!」

と叫ぶたび周りがパニックになる。


11/7 16:30 武蔵小杉到着


この後何が起こったかは映画を見た人間なら知っている。しかし当家に関していうと、これでほぼ安心。つまりゴジラは北上しており、武蔵小杉は我が家より北にある。我が家は空襲警報解除。そろそろ夕方になり気温も下がって来る。一旦家に帰る。問題はここから。どちらに進むかわからないゴジラはまだ近くにいる。こうなれば実家がある名古屋に避難しよう。問題はどうやってそこまで行くか。

新幹線は間違いなく不通になっている。(上陸後新幹線を横切っている)飛行機も多分だめだろうから(この時点では内閣総辞職ビームはわかっていない。もし飛行機が飛んでいればどうなるかは考えたくもない)車で移動するしかない。ものすごい渋滞であってもとにかく進むしかない。家財道具と食料、水を詰め込み車での移動を試みる。高速を使わずに下道を這うように進む。万が一ゴジラが向かって来た場合には車を捨てる覚悟を固めながら。

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ここでは「11/7の昼頃自宅にいる」という想定をしたが、仮に会社に居ると状況ははるかに悪くなる。自宅が危機に瀕していることはわかるが、自宅に帰るということは、ゴジラに向かって進むということ。私は毎朝毎晩武蔵小杉を通っているのだ。だったらきっと電車空いているねとか呑気なことを言っている場合ではない。何もなければ1時間で帰れるが、おそらく電車は止まる。歩いて帰ろうとすれば間違いなく途中でゴジラとコンニチハである。

じゃあじりじりしながら会社にいればいいかといえば、それをやっていると夜に「内閣総辞職ビーム」を食らうことになる。となると可能なのは、直線で家に帰るのではなく、西方を迂回してなんとか家に接近を試みる方法。これとておそらく自宅近くでは電車が止まるが、ゴジラプルームを食らうよりましである。

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書いていて気がつく。内閣総辞職ビームさえなければ、ゴジラのもたらす被害はそれほど広範囲には及ばないではないか。たかだが幅100-200mの範囲がペッチャンコになるのだけ。移動距離を考えても、被害を受ける面積はさほど大きくない。となると(重ねていうが、内閣総辞職ビームがない、という想定の上で)ひょっとするとゴジラに直接踏み潰された人より、避難の際のパニックにおける事故で死亡する人のほうが多いことがあり得るのではないか。

となるとより広範囲に被害を及ぼすのは人間によるもの(B-2による爆撃、核攻撃含め)というのもそう突飛な話ではない。尾頭課長補佐の

「ゴジラより恐ろしいのは私たち人間ね」

というセリフにはそれなりの意味と重みがある、ということにいまさらながら気がつく。

というわけで本考察の結論としては

「ゴジラが出現したら、その進行ルートに関する情報を集め、近くに来る可能性がある場合だけ徒歩で避難する」

というのが一番よさそうだ。足遅そうだしね。