題名:HappyDays-11章

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日付:1998/5/22


11章:雨の栄と小泉今日子

 

その日は大雨であった。その中を私は栄の中日ビルに向かうことになった。またもや合コンの待ち合わせである。

例によって例のごとく中日ビルは混んでいた。さて5時45分に待ち合わせ時間を設定したので、ちょうど中日ビル一階のハイビジョンでお相撲をみれることになった。あっさり若の花が負けて勝負がついたなあとおもっていたら、SGを見つけた。そしてほどなくCOWも見つけられることになった。

さて女の子はどこかななどと考えていると、写真よりかなりかわいい感じの女の子と目があった。K島である。彼女は私の着ていたジャンパについている赤い靴下のマークを確認して私に挨拶した。 彼女はまだ女の子のメンバがそろっていないと言った。

しばらく所在なげにまつこと数分。女の子がそろった。そして私は幹事最大の法則に反する例をまた目の当たりにすることになった。彼女がつれてきた二人は男性100人を選んで投票をすれば、多分ルックスの点でK島よりも高い点がつく女の子達だったのである。というわけで自分が考えたくだらない法則の限界を思い知りながら、予約してあった店に向かうことになった。

 

午後いっぱい雨はしとしとと降っていたが、我々が中日ビルをでて外を歩き出したとたん、夕立と言ってもよいくらいの降りになった。例によって私などはベタベタに濡れたって気楽なものだが、女の子たちにはきつかったかもしれない。かといって私になにができるわけでもない。

苦労のあげく店について、案内された場所は、いまだかつて経験がしたことがないような配置であった。すなわちひとつのこじんまりとした座敷なのであるが、二つの小さなテーブルに分かれていて、それぞれ3人ずつ座るようになっているのである。ここで最近脳味噌の弱っている私はパニックをきたした。そこで数分間立ちすくんだあげく、COWの提案によって座ったのが次の座席である。

このなかで私、SG,COWが男の子である。この場所は結構他と隔離された静かな場所だったので、最初は私たちの回りを沈黙が支配しようとした。それは私の耐えるところではない。従っていきなり酒の注文もきていないのに、私はなんだかんだとしゃべりはじめて場をつなごうとしたのである。

ここで格好の話題があった。K島は他の男の子経由私の写真を手に入れていた。そのみんなで回覧したのである。「大坪君はどこにうつっているでしょー」という感じである。

その結果、誰も写真の中での私を認識することができないことが判明した。理由は簡単。私はいつも変な顔をして写真にうつるので、実物とはかけはなれた顔をしているのである。

これに対してだれも予想していなかったにもかかわらず私にそっくりだったのが、K島が描いてきた私の似顔絵である。彼女は私が電話で話したところの「私の容貌」を元に似顔絵を描いてきたのであるが、これが信じがたいことにそっくりであった。唯一の間違いは私の眼鏡を実際の縁なしではなくて、黒縁にしてしまったことであるが。

そうこうしているうちに酒の注文も来て、そして料理も運ばれてきて例によって例のごとく自己紹介シリーズとなったのである。

K島については特にここで書くこともないので省略。トライアスロンとTVについ書いておこう。順番にしたがってTVから書くと、彼女は昔名大の医学部で秘書をやっていて、その前だか後だか、トライアスロンといっしょにコンパニオンをしていたのである。そして現在は東海テレビでアルバイトをしているのだそうだ。

彼女の話でおもしろかったのは、昼飯を食べる場所として栄のカラオケボックスを利用しているという話であった。弁当とかをもちこんで、5人で使えば、一人200円くらいだし、おまけに歌まで歌えてじゃまされずにご飯を食べることができると言うわけである。

次に挨拶したのがトライアスロンである。彼女は現在名大の秘書をしているのだそうだ。走るのが趣味で、5kmを10分で走るのだそうだ。(実は違ったかもしれない)小泉今日子だといわれていたのは彼女のことであろう。そこから会話は妙なほうに進んだ。私が「それでは学生時代陸上部にいたとか?」と聞いたら、彼女は「いえ剣道部でした」と言った。それから「瞬発力のない人間が剣道をやるといかに悲惨か」という話題に進んだのである。

私は中学時代剣道部に所属していた。そして自慢じゃないが結構瞬発力がない人間だったのである。というわけで結構まじめに3年間練習したにもかかわらず、後輩にもあっさり負ける始末であった。これはじつになさけない。「うりゃうりゃ」などと言って相手を見ていると、どこかに激痛が走って、いつのまにか審判の旗が相手にあがって負けているのである。彼女は一度も勝ったことがなかったと言った。私も似たようなものである。一回だけ勝ったことがあるが、他は全部あっさりまけたのである。もっと正確に言えば、相手に何本とられたか覚えていないが、私がとったのは一本しかないのであった。

などという会話はどうでもよろしい。今回はほとんどの場合みんなで話をするパターンであった。というわけでいろいろわけのわからない話題が続いていたのである。なんだかんだと言っているうちに、TVが実は昔スチュワーデス希望であり、ECCスチュワーデス科に通っていたと。その同じクラスに「あみん」の顔の大きい方がいたという話がでた。(顔の小さい方は岡村孝子である)彼女はスチュワーデスを目指してがんばったのであるが、不幸にも合格できなかったのだそうだ。この話題は私を刺激し、新説「バスガイドのほうがスチュワーデスより偉い」説を唱え始めたのである。

あまり知られていない話であるが、先進国のなかでスチュワーデスが不当に高い評価を受けているのは日本だけである。中国語ではスチュワーデスは「空中飯盛人」と書く。私はこれが彼女たちに対する正当な評価であると思うのである。別に空中飯盛人が悪いと言っているのではない。誠実な立派な仕事である。

しかしながら私が知っている限りにおいて、スチュワーデスの仕事の大半は、空中で飯を配っているだけである。スチュワーデス物語にでてくるような日本の文化について説明するような場面などめったにないと言ってよい。要するに空飛ぶウェイトレスである。

それに対してバスガイドはいろいろその日のコースに合わせて名所の説明をしなければならない。また場合によれば話を盛り上げたり、歌まで歌わなくてはいけない。当然飲み物、弁当も配るし、さらにはツアーコンダクターのようなことまでしなくてはいけない。というわけで少なくとも空飛ぶウェイトレスよりもずっと知的にChallengingな仕事をしていると考えるのである。

そういう話を数分にわたって力説したのであるが、彼女にはあまりわかってもらえなかったようだ。本当にその道を目指した人にとっては私のあやしげな新説などどうでもいいことだったのかもしれない。それどころかこの話題はかなり失礼な話題だったかもしれない。反省することしきりである。

他にはSG社員の妙な私生活などが話題になっていた。これはあまりに変なので省略しよう。TV発の別の話題は、「製薬会社の営業さんは大変だ」であった。研究室がどの薬を使うかというのは実の所薬の性能云々よりも、営業の努力にかかっているのだそうである。(性能はどこも50歩100歩なのだそうだ)従って製薬会社の営業は薬を買ってもらうためになんでもする。得意先の研究室のお花見の手配だってやるし、はてには研究室にケーキをもってきた。それがただのケーキではなくて、そのケーキのうえについていたクッキーにその会社の薬の名前が書いてあったのだそうだ。

我々が自分たちの仕事を卑下して技術営業などと言っても実のところ、自衛隊の人たちの花見のお手伝いをするわけでもないし、ケーキを持っていくことがあるわけでもない。確かに自分の今の境遇に対してあまり文句をつけることはできないかもしれない。

そうこうしているうちに、いつか話題はそれぞれのテーブルで盛り上がるパターンとなった。ここで体力自慢のCOWとトライアスロンが盛り上がっていたようであるが、隣の机の話題なので私はよく知らない。

さてへらへらと話題をつなぎながらきたが、はっと時計をみるともう9時になっていた。店に来たのが6時だから結構時間を食ってしまった。なんでおいだされなかったのかなと思ったら、土曜日の夜だというのにお店ががらがらなのであった。店の人の説明によると雨がひどくて、誰も外にでたがらなくてこんな日は商売あがったりなのだそうである。私からもう一つつけ加えれば、この店は少し高いかもしれない。

 

さてそんなこんなでみんなで店をでて、エレベータで下に降りたところで、今回の幹事である私は2次会の交渉をすることになったのである。

K島は乗り気なようであったが、TVとトライアスロンは時間がないと言った。しょうがないねということで、栄の駅に向かい始めたが、いきなりSGの提案でカラオケに向かうことになった。そこで男の子とK島はカラオケボックスに向かうことになったのである。しかしそこでトライアスロンは「今度是非夜じゃなくて夕方くらいに食料持ち込みで、みんなでカラオケに行きましょう」と言った。というわけでまたはなはだあてにならない次につながるお話ができたのである。TVは正直なところあまり乗り気ではなかったかもしれない。まあそれはそれでしょうがない。みんなに等しく気に入っていただけるわけにもいくまい。

 

カラオケにおいては特に目立った話があったわけでもない。みんなで順番に歌っていただけである。SGが妙に渋い曲-つまり演歌-をやるので、私は発狂しそうになっていた。私は演歌が大嫌いである。それはともかくとしてK島も結構上手に歌ったし、それなりに楽しかったのである。11時をまわるというときに私たちはカラオケをお開きにして、駅に向かうことになった。そしてK島を地下鉄の駅に送ると、我々はタクシーにすしずめになって寮に向かうことになったのである。

車のなかで簡単に反省会をしたところ、人気投票では僅差でトライアスロンがトップのようである。。もしカラオケツアーが企画されたら来たいか?という質問に対しては、COWが間髪をいれず「うん」と答え、SGは「日程が合えば」と言った。後でよくよく聞いてみたらSGは「自分の精神年齢が低い」せいもあって、もっと若い人たちの宴会のほうが好みだそうである。というわけでその日はおとなしく眠りにつくことになった。

 

若い人たちの宴会といえば、実はひとつあてがあったのである。KN社員から電子メールが来て、彼が言うには「大学の時の後輩(みたいなもの)と合コンの約束ができた。相手は22ですよ」という話であった。相手は簡単に6人そろったそうだから、もし男の子が集まらなければSGを推薦してやろうと私は心に堅く誓ったのである。

 

火曜日私は電話をした。

「いいとこを紹介してもらってありがとうございました。しかし残念ですが辞退したいと思います。正直いって一点以外はこれほど好条件の話はないと思います。しかし私はものをつくることが好きです。なんらかの形で。証券に長い目でみて情熱をそそげるとはおもいません。わがまま言ってすいません。またよいところがあったら紹介してください。」

二つ目の扉は開いた。しかしこちらから閉めた。また新しい扉をさがそう。

 

日曜日、K島にお礼の電話をかけた。そして火曜日に電話があって、カラオケプロジェクトがスタートすることを告げられた。小泉今日子が参加するだろうから今度は天下の面食い男HRをつれていこう。SGを大学合コンに推薦したので、今回彼は欠席だ。

 

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注釈

赤い靴下のマーク:待ち合わせの際の目印として、胸に赤い靴下のついたジャンパを着ていることにしていたからである。ちなみにこれはBoston Red Soxのジャンパーである。何故Bostonに一度も住んだことがない私がこのジャンパーを着ているかというと、Cheers(参考文献)のファンだからである。本文に戻る

 

幹事最大の法則:トピック一覧)合コンにおいて、幹事は自分より容姿の点で高い点がつく友達はつれてこない、従って幹事の容姿のポイントが参加した女性の中で最大となる、という経験則。この法則を声高らかに提唱される方は世の中に多いが、多くの点で間違っていることをこの数年で痛感することになった。本文に戻る

 

バスガイドのほうがスチュワーデスより偉い:トピック一覧)この説を聞くと本職のスチュワーデスの方の中には「むっ」とされる方もいらっしゃるかもしれない。しかし私の知り合いにスチュワーデスはいないからとりあえずいいのである。本文に戻る

 

空中飯盛人:トピック一覧)誰かが「自分がスチュワーデスとつきあっている」ことを声高に自慢して、うるさかったら是非この言葉を使ってみてください。私の従兄弟が一度使用して効果があったらしい。本文に戻る