題名:HappyDays-54章

五郎の入り口に戻る

 

日付:1999/7/2


54章:最後の審判Part 2

 さてその日は結構涼しくなってきたかな?という日であった。もっともそれまでが異様に暑かったから涼しくなったといってもしれたものであるが。

バスで栄に向かった。バスにのると、ボーイッシュできれいな感じの女の子と目があった。そのときの私の印象は「不吉」であった。前回の「史上最低の合コン」に向かう時に「きれいな女の子にたくさん会った」ことが思い出された。このような類推はありとあらゆる理屈をもってしても正当化できるものではない。しかしながら「黒猫が前を通ると不吉だ」という迷信を作り上げた男は、きっと黒猫が前を通った後に一生忘れられないようないやな目にあったに違いない。。。。などと漫然と考えていた。たとえそれが一度であったとしてもきっとその男は(女かもしれないが)それ以降黒猫を見る度に身震いがするほどいやな予感にとらわれたのだろう。。。そして私は「合コンに向かう途中できれいな女の子に会うと恐ろしいことがおこる」という迷信に捕らわれつつある。。。。などというくだらない考えはどうでもよろしい。とりあえずバスは目的地についた。

例によって早めに栄についてしこたま本を買い込んで喫茶店で読んでいた。今回購入して読んでいるのは北朝鮮に関して書かれた本である。TVディレクタが書いた本で、意気込んではいるが、その意気込みがから回りになっている部分が目立つ本であった。

 

本を読みながらふと考えた。今日の相手の名前はなんだっけ?

 

すっかり忘れている自分に気がついた。たとえば幹事として合コンに望む際に、以前ならば一応相手の自宅の電話番号くらい万一の場合にそなえてもってくるのが普通であった。ところが本日にいたっては相手の名前すら覚えていない。これではなにかあった場合にどうするのか?また仮に待ち合わせ場所で相手をみつけたとしてもなんと行って声をかければいいのだろう。。

50音を「あ」から順番にたどってなんとか名字を思い出そうと心がけたがなんともならない。しょうがないからへれへれと相手の名前が思い出せないまま待ち合わせ場所に向かうことにした。

さて日産ギャラリの前で立っていればまず現れたのはBUNである。彼は例によって「ちーっす」と挨拶をした。ほどなくしてHNYも現れた。

さてここで私は心配していた事態に直面することになった。相手はどこだ?また名前はなんなのか?である。しょうがないから一回り相手を捜すことにした。

女の子がこちらを向いて手を振っているのに気がつけば相手の幹事であるところの「健康体操」である。彼女の傍らにはもう一人女の子が立っていた。これがまた妙にたくましい女の子「会計事務所」である。私は「じゃあ」と行っていったんその場を離れた。

BUNとHNYのところに戻って(一応ほほえみを保ちながら)「結構悲惨かもしれない」と言った。2週続けてのこの有り様。この事実は私になにかを語っているのかもしれない。。。

ほどなくして相手の最後のメンバ「アパレル2号」が現れた。そして我々は宴会場所に向かうことになった。

 

宴会場所は過去に2度ほど使用した贔屓屋である。依然Mr.Kが頭をぶつけた入り口は普通になっていたのでおもしろくなかった。さて案内された座席の配置は以下の様である。

この配置自体にはとりたてていうほどのこともない。単なる「男女互い違い」である。

さて適当に飯など食べながら会話を進めた。私のとなりの会計事務所はなかなかはっきりものを言う人であり、ときどきうけるようなことを言っていた。へらへらとしゃべっていると、突然アパレル2号が「オール阪神に似ている」というから誰のことかと思ったら私のことなのである。これに一番近い評価というのは先輩の奥さんから数年前にうけた「ラサール石井」というやつであっただろうか。人の顔をみたときの評価というのはいろいろふれておもしろいものである。

となりの会計事務所からは「トトロ」と呼ばれた。私は「隣のトトロ」なのだそうだ。実のところあまりよく覚えていないが、トトロというのは結構まるっこい生物だったように記憶している。なるほど最近の体型ではそう言われても文句の言いようもない。(後日うちの母と会社の同僚KTMは「確かに」という反応を返してくれたが)

話題はなんというかあまり弾むわけでもなくこけるわけでもなく、といった感じだった。今回の合コンでは相手から「温泉ツアーをやりましょう」とか言われていたので、自称温泉オタクのHNYに検討を依頼しておいたのである。しかしながらこの場でそれを持ち出すほど私は陽気ではなかったし、HNYもそのことにはふれなかった。彼の心境も理解できないことではない。

さて女の子の外観のレベルはまあどうでもいいとして、今回は相手の会社の愚痴を延々と聞かされることもなかった。従って私には「それなりに」の合コンであった訳だ。リターンマッチをやりたいなどとは夢にも思わなかったが。

 

特に書く話題もないのでさっさと一次会をお開きにしてしまおう。1次会の場所を出ると女の子達は早足で有無をいわせず栄方面に向かいだした。あら、ここでお開きなのかしら、と思ったが一応礼儀として健康体操に「これからどうしますか?」と聞いた。彼女たちの間で適当に会話がかわされたあと、「10時までならばよい」と言われたのでサテンにはいることにした。

サテンの中の配置も覚えているがここに書く気もおこらないような心理状態であった。さっさと時間がすぎてくれればよい。。しかしBUNはアパレル2号の手などつっついて結構仲良くしていた。彼にいわせれば「スキンシップは人間関係の基本。相手にさわれてなおかつ仲良くなれるという、一石二鳥の攻撃」なのだそうだが。

 

さてあっさりと2次回のサテンもでるとお開きにした。会計事務所があいかわらず私の事を「トトロ」などと呼んでいたが、私はにっこり笑って手をふるだけのことである。

 

3人でBUNの運転する車に乗って帰った。(彼はほとんど酒を飲まないのだ)彼は「合コンってこんなものですよ。何十回と合コンやったけど彼女ができたことってないもんな」と言った。おそらくそれが本当なのだろう。そしてこの2週続いた合コンのほうが本当の姿なのだろう。

これらは何かを示唆するものかもしれない。馬鹿は死なないと直らないというが、とにかく猫でも一度やかんに手をふれて熱い思いをすれば、2度とさわらなくなるかもしれない。あと一つ確定した合コンがあるが、それ以降は少しおとなしく暮らすことにしよう。

 

翌日の日曜日はKB達の主催による「夏だというのにモツ鍋とキムチ鍋をたべておまけに暑くなったら長良川に飛び込んで泳ごう」大会であった。異常な暑さのなか、異常な時間をかけた買い物の末にみんなで「にんにくてんこもり」の鍋をたらふく食べた。このにんにくの量はちょと想像を絶するもので、ひとつの鍋ににんにくが10個くらいはいっているのはまあいいとしよう。キムチ鍋の「たれ」(のようなもの)にも「おろしにんにく」がしこたま注入されていた。その量たるやY田の奥さんがおろしにんにくを指して「それ大根おろし?」と聞いても誰も笑わないようなささまじさであった。

ツアーにはIZも参加していた。集合場所の駐車場でぼーっとしているとIZがよってきて「これお礼」と言ってクッキーを一箱渡してくれた。

あけてみれば中に「お礼:IZ、丸顔」と書いてある。ここまで丁重なお礼をもらったのは初めてだ。。。彼らが私が企画した合コンで知り合って結婚する3組目となることを期待しよう。

STには「ST君をスペイン村につれて行って風船を持たせようツアー」の参加許可をもらった。もっともそんな言い方はしていない。これでまた私はツアーの準備にとりかかることになる。

Cと話をしていたら「大坪さん合コンつれていってくださいよ」と言った。私は従来からの主張を繰り返したが彼は「いや。私は”合コン”に出席したいんです」と言った。彼もそこまでの悟りを得るに至ったか。「一応心にとめておきましょう」と返事をした。

 

夜にはYDがギターを引いているバンドのコンサートがあった。狭いライブハウスのなかでにんにく付けになっている我々はさぞかし迷惑な存在であったろう。私とCの間には「夏だというのにモツ鍋とキムチ鍋をたべておまけに暑くなったら長良川に飛び込んで泳ごう」大会に参加していなかったOBが座っていた。彼女にとってみれば周りはにんにく人間だらけで非常に悲惨な境遇だったかもしれない。

YDのバンドはとても上手であった。 唯一の欠点はアダルトな雰囲気の曲とバンドに会わないYDの「思いきりハワイアン」という服装であったかもしれない。YDが前から宣伝していた「ちっとやそっとの美人ではない」キーボードプレイヤーは確かに美人だった。もっともあのバンドで唯一リズムがあっていないのは彼女だったような気がするが。

さて大盛況のうちにコンサートは終わった。そして私は一人で安らかな眠りにつくことになった。

 

会社にでてみれば、奇妙な郵便物がとどいている。あけてみれば「いよいよでました」退寮勧告だ。通称赤紙と言われているやつで「おめえみてえな年寄りはさっさと寮から出ていけ」と書いてある。とっくの昔に30を超えた私に言い訳する余地はない。期限ぎりぎりの平成7年2月に退寮すると言って返答した。これが5月までいられればなあ。しかしそれは言ってもしょうがないことだ。留学中の費用を全部返してしまえば私は無一文になる。100万くらいへそくりをつくっておこうか。同じく赤紙を受け取ったTRちゃんは「会社の見通しのなさ」をしきりに憤慨していた。そんなことは何年も前からわかっている。見通しがなくてもつぶれないのがうちの会社の偉大なところだ。言われたことだけ適当にやっていれば-そしてそのようにしむけられて-50くらいまでは平和に暮らせる。

 

翌日会社にいって電子メールでCに9月9日合コンの出席を依頼した。私が合コンをできる機会ももう多くはない。SBYはあまり大人数を集められないようだし、最後に一度くらい出席してもらっても罰はあたらないだろう。STにも出席を依頼すると彼は最初あまり乗り気でないような風であった。私が「人数は5対5だよ」と言うと彼はとたんに乗り気になった。なぜかしらねど彼は少人数で会うことを極端に恐れているのである。大人数であれば「勝手にやってればいい」なのだそうであるが。さてこれで4人そろった。あと一人だ。。

 

ところが例によってこれは最後の合コンではなくなった。ある夜半分寝かかった私は東京海上と話をしていた。

彼女の声はなぜか異様に遠かった。従って私の返答はちゃらんぽらんだったらしく「酔ってるんですか」と2回ほど聞かれた。

彼女の用件はただ一つ、合コンのリターンマッチである。彼女は「4ー5人で」と行ったが、正直いってあの再現が起こる可能性を排除することはできない。それを考えれば男の参加人数は少ない方が良い。従ってすったもんだの論議の末に「10月1日をめどに4人で」と話を付けた。参加人員は適当に考えよう。どうせ先の話だ。

 


注釈

「不吉」:(トピック一覧)今の所このジンクスはかなりの確率で正しいことになってしまっている。本文に戻る

リターンマッチ:この合コンの様子はHappyDays56章参照のこと。本文に戻る