題名:Java Diary-57章

五郎の入り口に戻る

日付:2004/12/13

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Goromi-Part8(WISS2004前)

よれよれとUISTからかえってくると今度はWISSが一月後に迫っている。さて、問題です。何をどうやって発表しましょう。今度はデモをやらないから、プレゼンに必要な機能だけ動いてくれればいいとも言える。しかし短い時間のデモで印象に残って欲しいと思えばそれなりにあれこれ考えなければならない。

そう考えるとあれこれやらなければならないことが思い浮かぶ。まずは写真とか題名をおしたらそのページが表示される機能だ。あれこれ考えてはいたが、もう単純な方法で実装してしまおう。マウスを押している間だけページの内容が表示される。そのままマウスを上下に動かすと上下にスクロールする。そのまま左端にマウスを持って行くとそのURLを保存することができる。改造は思ったより順調に進んでいったが思わぬところで躓いた。

もうこれ以上上下にスクロールできなくなったらそこで止まって欲しいのだが、なぜかそれがうまくできない。あれこれ変数やら追加するができない。そうしたところ会社で不思議な研修が行われる。ええい、この忙しいのに、と思うがこの問題解決には役に立った。このように煮詰まった時には少し離れると

「あれ、そうじゃん」

という解決策にたどり着くことがある。研修の間「をを」と思った方法を休み時間に試してみれば見事問題解決。いや、ここに書くのも馬鹿馬鹿しいような問題だったのですけどね。

他にもノード配置をする上での恥ずかしいバグとか、とにかく見栄えで問題になるところをぶちぶちつぶしていく。それと共にプレゼン資料も作り始める。今度はMacだけで動くKeynoteというプレゼンソフトを使う。初めてだが、Apple社のソフトであるからたちまちなんとかできるようになる。しかしソフトを使うことができる、というのとそれで美しいプレゼンテーションをすることができる、というのは全く別の話なのであった。

頭の中にいくつかの要素は浮かんでいたから、それを並べてみる。なんかできたと思い誰もいないときに(朝早く)声に出して読んでみる。面白くない。全然面白くない。前にもこんなことがあったような気がするから少しは慣れているがやはりしくしくしながらしばらくプレゼンのファイルを見ないようにする。

などとやっている間により根本的な機能拡張について思いを巡らせる。そもそも「WISSに論文が通ったらこれをやろう」と思っていたネタは二つあった。一つはプレゼンテーションをGoromiでできないか、というもの。もう一つはこのインタフェースをもっと限定されたデータに適用できないか、ということだ。今やハードディスクの容量はやたらと増加し、個人でも1TB(テラバイト)の容量をもてるようになった。しかしその内容を全部把握できる人間がいるわけもない。となればローカルデータを同じようにふらふら眺めてもいいのではないか。

と思いつきはしたのだが、実装はなかなか大変である。やることは考えつくのだが手間は結構かかる。UISTから帰ったらさっそくそれの準備だと思っていたのだが、いざそのときになってみるとたった一月しかない。ううむ。

まず前者の「Goromi自身でプレゼン」であるが、「それができるほどGoromiの動作を信用できない」という現実的な理由により却下する。次に後者の願望だが、なんとか手間を省いて、というのを考えていった結果「Googleの検索範囲を一つのサイトに限定するのはどうだろう」と思いつく。これなら改修の手間は最小限で済むし、元々の目的に有る程度添ったことになる。思いつくとさっそく改修。検索範囲をamazon.comに限定するとアマゾンの中をふらふら動き回っていることになるわけだ。結構よさそうだが、あまり画像が表示されない。このプログラムでは画像がでないとそのおもしろみが半減する。プログラムをのぞき込み(随分前に作ったものだからあらかた忘れている)あれこれ考える。あまり小さい画像は装飾用とか記号の事が多いからスキップするようにしていた。どうやらその値が悪かったようである。amazon.comにある画像はあらかたスキップの対象となっていたようだ。値を調節するとそれなりに画像がでてくる。

などとやっている間にもプレゼンテーションの準備を進める。早い話作っては直し、作っては自分でしゃべってみて落ち込み、の繰り返しである。ほぼ固まったかな、そろそろグループ内で披露し意見をもらおうかなと思った頃、あるMac関連ニュースサイトの記事が目にとまる。KeynoteProというサイトが新しいテーマをリリースしたとのこと。テーマというのは元となるデザインのようなものだ。それまで黒っぽいバックを使っており、それなりに気に入っていたのだが、この新テーマはどのようなものか。

サイトにアクセスすると緑を基調にしたなかなかしゃれたデザインのテーマがみつかる。他にもいくつかのテーマを売っているようだが、最新作たるこのテーマが一番良い。シンプルだが、同じ物を自分で作ろうとしたら10年かかってもできっこない。迷わず購入する。そしてほぼできあがりかかっていたプレゼンテーションの内容をしょこしょこ移し出す。いろいろ凝ったレイアウトのスライドもあり、使いたくなってくるのだが、素人はあまりへんなことはしない方がよかろう、というか自分で観ても格好良くない。

一通りできあがったところでグループ内の人にお披露目をする。一通り喋り終わった後にこわごわ聞いてくれた人(二人だが)の顔色をうかがう。

「大坪さん。これだめっすよ」

と言われないだろうか。幸いにして好反応のようだ。いくつかもらったコメントを反映すると共に、自分でしゃべって「つながっていない」と思った場所を直す。ちょこちょこ直す。電車を降りて家に向かう道で声を出して練習してみる。薄暗い道でなにやらぶつぶついいながら歩いている中年男は不気味だから人の気配を感じるとやめる。

今回のプレゼンでは文字を減らすこと、それに説明の進行に合わせて関連した画像、文字を表示することに心がけた。静的な画面に文字をたくさん書いておくと、読めないか読む気をなくさせるか、あるいはこちらがしゃべるより先に読んでしまってこちらの話を聞かないといったことになる。どこかのサイトにSteve Jobsが行うプレゼンと同じ効果をつかったKeynoteのファイルが置いてある。それを観ながらいくつかのテクニックを学ぶ。とはいっても素人の付け焼き刃だから、WISSにたくさんくるデザイン関係の人達からみれば失笑物だろうけど、できることはしておきたい。

などとやっているうちに二日前になった。バックアップシステムの準備にとりかかる。今回はPowerBookを2台持って行く。いつもつかっている12inchでは時々動作が耐え難く遅くなることがあるからより高速な15インチをレンタルしたのだ。プレゼンもバックアップとしてQuick Timeに変換しておく。デモも画面をキャプチャして以下同文。マーフィーの法則が語る所によれば、一番肝心な部分でトラブルが起こるに決まっているのだ。いざとなったらムービーに切り替えよう。さらにデーター一式をCD-ROMに記録し、これでPower Bookを2台紛失しても大丈夫。とはいっても全てを一つの鞄にいれているのだからそれをなくせばアウトなのだが、そういう本質的な事には気がつかない。前日家に帰りご飯を食べると子供と遊ぶ。去年WISSの前日には

「なさけないお父しゃんでごめんなぁ」

と言っていたが今年はそこまでは思わない。しかし不安は常にわき起こってくる。一応査読を通過しているのだからと自分に言い聞かせるが、査読を通過するというのと厳しい質問を浴びなくても済むというのは独立した事象なのだ。去年ある学会ではBest Paperとされた論文に強烈な質問(というか批判)が飛んでいた。

本質的な誤りは正しようがないが、それでも準備と練習は直前まで行わなければならない。しかし今日はもう寝よう。

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注釈