題名:Java Diary-63章

五郎の入り口に戻る

日付:2005/7/13

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Goromi-TV Part1

話は去年の秋まで遡る。WISSに投稿した後「もし採択されたらこれをやろう」と思っていたネタがあったことは前述した。そのうち「プレゼンテーションをGoromiでやる」という構想は没になったっきり二度と浮上しなかったが、もう一つの方は根強く残っていた。すなわち「ローカルに保存されたデータにこのインタフェースを適用する」というやつである。もっと具体的に言えばHDに大量に録画したTV映像をだらだら眺めてやろう、という構想だ。

12月のWISSで見送り、ではインタラクションに採択されたら、と思っていたら落ちてしまった。では採択されたら本当にやっていたかというと話はそれほど簡単ではない。少しく具体的に考えると

「これはそう簡単にはいかない」

という事に思い当たったのである。

これをやろうと思うとまず大量のTV番組データを録画せねばならぬ。加えて一つ一つの映像データに番組表のデータを付加し、かつ今はGoogleの神様に頼っている検索機構を自分で作らなくてはならない。これはどうも一筋縄ではいかないようだ。

というかこれだけの事をやろうとすると、人手が要る。通勤電車の中でプログラムは作れてもデータ集めは無理である。とはいってもどう考えても業務と関係ない内容だから会社の金を使わせて下さい、といっても無理だろうし。さて、どうしたものか。

等と考えているうち、何がきっかけだったが思い出せないのだが「未踏ソフトウェアというのがあったなあ」と思いついたのである。

この制度は数年前から始まった物で、なんでも個人が新しいアイディアに基づいたシステムを作ろうとする企てにお上がお金を出してくれるのだそうな。実は過去に2度ほどアプライしたことがあるのだが、見事に没を食らった。最初に考えた物はGoromiの原型のようなものだったが、今にして思えば無理な計画であった。

さて、私にとってこのシステムがすばらしいのは、お客様及びそこからきた出向者のロジックとまともに関わらずともすむという点である。何度か書いているがお客様にお話を差し上げるときには二つのキーワードを必ず含めなくてはならない。「使いやすい」とか「面白い」とか「役に立つ」とかそんな戯言を言ったところで相手は居眠りを始めるだけである。生活の糧を得るためであるから本業ではそうしたことだけに心を配るが時には

「うららー。これやー」

というものを作りたくもなる。この文章で書いているプログラムはほぼその類なのだが、一人でキーボードを叩くだけではできないTV視聴構想も、ここからお金を貰えればできるやもしれん。

そう思ってしょこしょこ申請書を書き出す。しかしいつものことだが「こんなの書いたってどうせ落ちるに決まってる」という脅迫観念はしつこくつきまとう。倍率はだいたい数倍〜10倍程度。過去2回に比べれば「これを拡張します」ということでイメージはしやすいと思うがそれでも通るかと問われれば首をひねる。

とはいっても本業がつまらない時には現実逃避したくなることもある。そんなときには申請書。そうしてちょこちょこ書いていたらできあがってしまった。となると出すしかないだろう。それでも「不合格を告げる薄い封筒」をもらうのは楽しくないことだが、まあ打席に立たない事にはヒットもでないんだし。

締め切りはたしか3月末だと思った。その数日前には送ってしまう。3月末にはもう一つINTERACTという会議に論文を出した。これはGoromiを使うと、現実の店と同じようにインターネット上のサイトを「目的もなく眺めることができます」という趣旨のものだった。

さて、この年は表の仕事以外に「これをやりたい」というのを裏プロジェクトとしてあれこれ考えていた。Goromiの拡張がその1,ただしこれは3月末に出した物が二つとも没になればそれまで。その2が前述したSmartCalendar-X。実はその3,その4があるのだが、これについては別途述べる、、、のかもしれない。その3は割と表の仕事に近いのでここでは述べないかも知れないし、その4は今のままで行くと構想だけに終わりそうだが。

話を元に戻す。年度初めにはあれこれがあり、私は自分が3月末に何を出したかほとんど忘れていた。というか未踏ソフトというのは過去2回の経験によれば「5月の終わりに薄っぺらい封筒が届いてはいおしまい」となるからだ。論文の方も今ひとつという感が否めないし、もうGoromiはこのまま消えていくのだろう。とはいっても結構人間馬鹿なもので、頭の片隅で「何かの間違いで通らないか」と思っている。その頭の片隅が「何かあるとすればそろそろ行ってくるはず」と小さな声を上げはじめた。未踏ソフトではProject managerという人が採択から進捗管理までを受け持つ。私は二人のPMに対して申請書を出していたのだが、第一希望のPMは「4/26,27,28のうち面接の都合に良い日を書いて下さい」と募集要項に書いていたのである。ということは見込みが有ればその1−2週間前には何か言ってくるだろうし、何も言ってこなければ「ご縁がありませんでした」ということなのだ。

はてはて、と思っていた4/18日。私は一通のメールが届いている事を知る。題名を読んだだけで面接の通知と知れる。来ないかと思ってはいたものの実際に来ると血液が逆流するような気がする。指定されたのは26日の午前10時。さて、行くとなれば説明資料を作らなくては。とはいっても何を説明した物やら。WISSでつかった発表資料を基にあれこれ作り出す。とはいっても今度の相手はどこを聞きたいのだろう、中身についてもあれこれ考えているところを見せなくちゃ、ということであらかた作り直しになる。デモは実際にプログラムを動かすのではなく、ムービーで行うことにした。この方が気が楽だ。

さて、26日の火曜日、私はいつもとは違いスーツ姿で出勤である。一度会社に顔を出しメールをばさばさ片づけて目黒に向かう。地図を観ると駅から歩いて行けば良いらしい。ここで「ちょっと手前で曲がってみるか」などと思ったのは愚かだった。目の前に大きなビル-今日の目的地だ-が見えているのだが、どうやってもそこに近づけない。平行に歩いているだけでそのうち目的地は遠ざかりはじめた。これはいかん、と思い引き返す。その道には服飾専門学校があるらしく、登校してくる生徒さん達がたくさん歩いている。学校が学校だけあって、みんな個性的な格好をしている、とも言えるし個性的ではないとも言える。例えば羽織袴とか鎧甲とか、それぐらい着なくちゃ目立たないよな。おれがここの生徒だったら何を着ようか。

などという妄想に関わり合っている場合ではない。道を戻ると一番堅実そうな道を通る。隣に○○園というものがあるらしく、偉大な屋根が見える。凸型に緩やかにふくらんだ瓦屋根が珍しい。その隣に巨大なビルに入る。

とはいっても時間は大量に余っている。一階のロビーでコーヒーなど飲みながら時間をつぶす。数日前某所に

「最近自分が面接をされる立場からする立場に変わった。いざ自分が面接する立場になってみると、いかに馬鹿げた質問をして妙なロジックで採否を決めているか解り驚く」

ということを書いた。そうだよね。面接される側ってのは相手の言葉に意味があるんじゃないかと思ってるけど、そうでないこともあるんだよ。ほほほ、これは若い者にはわからんかな。

などと偉そうな事を書いていたのだが、いざ自分が面接される側になるとそんな悟りもどこへやら。えーんえーん状態である。何聞かれるんだろうなあ。まあ、面接に来いっていうんだから全く望みがないってわけでもないのだろうけど。ええい、何度やっても面接ってのはいやだなあ。

そろそろ時間だ、というわけで指定された場所に向かう。受付に「未踏ソフト面接の方は●●を呼び出して下さい」と書かれた紙が貼ってある。そこに電話をかけしばらく待っていると待合所のような場所に通された。そこでまたじっと待つ。机の上に書籍の宣伝などあるからそれを眺める。他にすることもない。

まもなくしてO氏-この日が初対面だからそう知ったのは数秒後の事だが-がやってきて面接の部屋に案内してくれた。パソコンをとりだしプロジェクタにつないでいると

「緊張しないで気楽に」

と声を掛けられる。がちがちの緊張が表にでているようである。(私は大変解りやすい男として有名だ)それでは、ということで説明をはじめる。すると途中で「それはどういう意味ですか」と突っ込みがはいる。私はそれの対偶にある事象から説明をはじめるとそれを遮り再び「それはどういう意味ですか」と質問がはいる。

今回懸念していたのは、対象とするデータ量の少なさである。どういうことか。Goromiを使って気がついた面白いことの中に

「大抵の言葉の組み合わせで検索結果が返ってくる」

ことが挙げられる。インターネット上に存在する膨大な量のページには本当に妙な物があり、大抵の言葉の組み合わせはどこかに存在しているのだ。そしてその結果思いもしない結果につきあたる。

しかしこれが成り立つのは「対象とするデータが膨大である」からである。対象データが少なくなると途端にやたらと

「検索結果無し」

という文字を観ることになる。そしてそれはとても面白くない。さて問題です。これをどうやって回避したらいいでしょう。

当初

「TV番組でも大量に集めればなんとかなるだろう。例えばCMでも全部個別のデータにして説明文章を付加すれば結構面白いのでは」

と思っていた。そのため今回の申請書では大量のデータを記録する機材とネットからは自動的に手にはいらない番組データ(例えばCMの説明など)を付加するための人件費だけを申請していた。(プログラムは私は通勤電車の中で作るのだから0円である)

PMはそこを指摘してきたのである。やはりそれは大きな問題だし、人件費をかけてデータを整備しても、それでは一般に使えるようにはならない。そこに対して解決策はあるか、と問われたのである。ううむ、そうきたか、と私が固まっているとO氏が助け船を出してくれた。そこから少し空気は和らぎ、話は結局

「今あるTV番組のサイトを対象にGoromiを動かし、どの程度”結果無し”がでるかを確認し報告する」

ということでまとまった。次の週にはPMが採択者を報告しなければならない、ということであまり時間はない。私は「では急いで検討します」と答えてその場はお開きとなった。

どっと疲れて来た道を反対方向に進む。ううむ、やはり面接というのは苦手だ。特にN○○とつくと昔からあまりろくな事になったためしがない。これで追加データを出したあげく「誠に残念ながら」などということになったらいやだな、とは言うだけならともかく、さぼってはいけない。やるといったからにはちゃんと追加データを出そう。

というわけで翌日TVの番組表を載せているサイトと映画の膨大なデータを載せているサイトIMDBを対象にGoromiを動かしてみる。両方ともそこそこ面白い結果がでてくるのだが、確かに前者に関しては

「検索結果無し」

が結構存在する。これはやはりやり方を考えねばならぬ、などとぶつぶつ考えながらその日のうちに追加説明書を送った。4/30に「実験の結果はだいたい予想範囲内でした」という返事が来る。ここで私が一番恐れていたのは

「追加説明書がちゃんととどいていない」

ことだったからこの返事をみてホッとする。まあ後は野となれ山となれ、といったところで世の中はゴールデンウィークと呼ばれる時期になり、私は心身共にだらけた生活を送る。しかしこちらがだらけていようがいまいが情勢は動いていたのである。

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注釈