題名:私のMacintosh

再びアップグレード

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日付:1999/8/7


16章:再びアップグレード

さて、明示的には書いていなかったが、今年の2月にキーボードを入れ替えて以来というもの、「PB2400の改造・アップグレードの類はこれでおしまい」と思っていたのである。未だにこの機械を愛用している私だが、なんといってもiMacをさわったときのグラフィックスの性能差には驚いた。いくらアクセラレータの類をいれたところでビデオの性能は向上(ほとんど)しない。それに昨今Macintoshの外部インタフェースはUSBとFire Wireに統一されつつあるが、そのどちらもPB2400では使えない。これから周辺機器を買うのであれば、長く使えることを目標に新しいインタフェースのものにしようと考えているのに肝心の本体のほうが対応してくれないのではしょうがない。

かといってどうしたってWindowsを使う気にはなれない。従って私は当時漠然と「まあそのうち新しいPowerBookがでるだろう」と思っていたのである。いわゆるP1ことコンシューマーポータブルである。

このコンシューマーポータブルに関しては実にいろいろな噂が飛び交っていた。やれ大きいだの、やれ小さいだの、やれ液晶はDSTNだの、やれ発電用のハンドルがついているだの、なんだのである。この機械は2月に発表されるのでは、という噂があったが、何もでなかった。5月のWorld Wide Developpers Conferenceで発表されるのでは、という噂もあったがそこでもでなかった。(PowerBook G3の新型は発表されたが)となると期待は自然と7月のMac World Expo in NYに集まるわけである。

このExpoが近づくにつれて、噂はだんだんと詳細になってきた。曰くASICに欠陥があることがわかり製品自体をスクラップにしようとしている、とか、いや、それはわざと流された間違った噂だ、とか。そのうちだんだんとこのコンシューマーポータブルの概要は明確になってきた。ポイントは二つ。貝の形をしていて、厚さは最大3inchあること。またカードスロットはないことである。

私はこれを聞いた瞬間「なんじゃこれは」と思った。3 inchといえば7.5cmである。そんなに分厚いノートが世の中のどこに存在するのだろう。おまけにカードスロットがないということは私が愛用しているTVカードをつっこんでTV代わりにすることもできない、ということではないか。私はだんだんこのコンシューマーポータブルが(市場で成功するかどうかは別として)私の期待と異なったものであることに気がついていた。

では、希望は全くないのか?そうではない。ある会議でJobsは興味深い発言をしていたのである。それまで「マーケットはノートとデスクトップ。プロとコンシューマ。この組み合わせの4通りだ」と発言していた彼であるが「Exectiveの市場があることも認識している」と言い出したのだ。となれば第3のノートが発売されてもおかしくない。Exective向けと言うことであればそんなに巨大なシロモノではないだろう。

 

さてMac World in NYの基調講演はQuick Time Ver4のストリーミング機能を使ってインターネットで中継されるという。私は是非それを見たいと思ったが、問題が一つあった。放送されるのが日本時間の午後10時からなのである。いつも9時半には「お休みなさい」の五郎ちゃんとしてはいくら興味深い発表がなされるかもしれない、といいながら、そんな時間まで起きているわけにはいかない。どうせ翌日になればMacintosh関係の情報サイトはこの発表一色になるんだから、と思ってその日はあっさり寝ることにした。

さて翌朝である。寝ぼけ眼で私はインターネットに接続してある情報サイトを覗いてみた。するとちゃんとでている。Jobsが全体が白、ふちのほうに色がついたPortableを持ってにっこりしている。

ふーん、と思って会社に行った。このころ会社では情報収集が主な仕事だったから、インターネットはおおっぴらに見放題である。さっそくあっちこっちのサイトをみるとでてくるわでてくるわ情報の嵐である。しかし昨今インターネットにこういう関係の情報が発表される早さには驚く物がある。雑誌編集者というのはずいぶんといろいろ考えねばなるまい。いくら「緊急速報」とか書いたところで情報はとっくに流通してしまっているのだ。

さてそれを見て、「なるほどこれはでかいわい」と思い始めた。おまけに確かにPCカードスロットは存在していない。そして決定的だったのはPowerBook G3と並べてとった写真である。なんと「とっても大きい」と評判だったG3と比べてほとんど同じ大きさなのである。私はとっても失望した。(ちなみに厚さはさすがに3inchはなかったが)

しかし考えてみればここで失望する、というのはフェアではない。この前も後もAppleの関係者は「サブノートというのは日本でちょっとだけうれている特殊なセグメントだ。Appleはサブノートをつくらない」と明言しているのである。であれば、発表されたものが巨大であったとしても彼らを責めるのは筋違い、というものである。おまけにどうも話を聞いていると、シェアだけを考えるのであれば小さなノートよりもA4サイズの大きなノートのほうがはるかに多く売れているらしい。

確かに「持ち運び”も”できるiMac」と考えればこの機械は結構うれるかもしれない。そしてそう考えたときAirPortなる無線LANの製品が同時に発表されたのにはちゃんと意味がある。確かに電源コードもインターネット接続用の電話線も気にしないで家のなかをあちこちうろちょろ持って歩きたい、という願望は非常によくわかる。(実際実家ではそうやって使っているからだ)であれば私でも金がありあまっていれば買うかもしれない。

ちなみにこの新機種のキャッチフレーズは"It's iMac to go"であった。私が考えるに、この"to go"はファーストフードなどでよく聞かれる"for here or to go"のことだと思う。日本語で言えば「こちらでお召し上がりですか、それともテイクアウトですか」という奴である。この"for here or to go"というのは、日本人が初めてアメリカに行くとかならずひっかかる言葉である。そして並み居る雑誌関係の方々もこのキャッチフレーズの訳には大変苦労していたのがほほえましかった。

 

さて、そんな話は別として私は早急な決断に迫られていた。このExpo直前に、私が使っているG3アクセラレータのメーカであるNewerから、「G3@400MHznのPB2400用のアクセラレータ」が発表されていたからである。この製品は完全注文生産で、おまけに大変賢明なことにExpoで新製品が発表された後に注文が受け付けられることになっていた。

なぜ私がこの製品の事を知ったかといえば、いくつかあるPB2400を扱っている情報系のサイトで、「G3@400Mhz試用レポート」なるものがアップされだしたからである。幾人かの有名なユーザーのところにはすでに先行版として配布されているらしい。それを見ると確かにベンチマークの成績は向上している。しかし問題が二つほどあった。ビデオの性能が足をひっぱり、結局使っている限りにおいてあまり速度の向上は(従来のG3アクセラレータに比べての話だが)認められないこと。またやたらと熱いことである。

私もExpoの前には「Expoでの発表を見て考えましょう」と思っていた。場合によってはPB2400ともっと長くつきあうことになるかもしれない。となればさすがにこの後アクセラレータはでないだろうから、ここでこれに乗り換えて置くのは悪いことではないかもしれない。

さて、iBookを目にした瞬間、私はPB 2400を最低でもあと1年は使うことになったのを悟った。それからしばらくし400MHzアクセラレータの詳細が発表された。価格は15万円弱である。当初の発表では10万円を切るのは難しいかもしれない、ということだったが、だいたいこの価格になったようだ。考えてみれば10ヶ月前に16万円だして取り付けたG3@240MHzアクセラレータは今や6万円を切る価格で販売されている。時の流れは無情なものだがこの際そんなことにはかまっていられない。さらにつれつれ読んでいくと、予約受付は8月25日となっている。そして入金は8月中だ。さてどうしたものか。

15万円、という値段を念頭に置きながら、いくつかあった情報系のサイトで400Mhzアクセラレータの試用体験記を読み返してみた。するとやはり前述した二つの問題がクローズアップされてくる。同時にInterwareから発売された320MHzのアクセラレータが昨今10万円以下で購入できること。また発熱が非常に少ないこともわかった。

それとこのころもう一つPB2400で改善を必要とする点に気がついていたのである。Mac OSはバージョンをあげるごとに大量のメモリを食ってくれるようになってきている。そして最初は「なんて広大な空間だんべ」と思えた80MBのメモリ空間であるが、最近あれやこれや立ち上げていると「メモリがたりまへーん」メッセージを目にすることが多くなってきたのである。理由の一番は最近なにかとSETI@Supportの開発をやっているからだ。SETI@Support自体なんと8MBもメモリを食ってくれるのだが、その開発環境であるVisual Cafeも軽快にメモリを消費してくれる。そしてJavaのドキュメントはHTMLになっているから、Internet Explorerを立ち上げる必要もある。となるとあと開けるアプリケーションの数はそう多くない。

本来PB2400は総計80MBが最大容量のはずなのだが、日本人のPB2400にかける思いは熱い。3rd Partyから96MBのメモリが発売されていたのである。これを搭載すれば合計112MB,今に加えること32MBである。ここまで増設すればちっとやそっとのことでは「メモリがたりませーん」メッセージを見ることはなかろう(少なくとも当面の間は)

メモリの値段は29,800円である。となると「400MHzアクセラレータをとるか、あるいは320MHzアクセラレータ+メモリをとるか」の判断になる。そしてもう一つの要素は時間だ。400MHzアクセラレータは11月まで手に入る見込みはないのである。何故このことにこだわるか?

これにもちゃんと理由がある。5月以来というもの、私はSETI@homeの計算及び解析状況表示プログラムの開発にとりつかれていた。そしてこのseti@homeというのは実に快調にCPUを働かせてくれるのである。実際昨今はCPUのベンチマーク代わりとなっている感もある。400MHzアクセラレータを試用した人のある感想によれば「Seti@homeの計算がとても速くなり1ユニット10時間を切った。他の速度はあまり向上した気がしないから、ほとんどこのためだけに導入したようなもの」とのこと。さて私のPB2400+G3@240MHzでは約24-25時間要するこの計算であるが、最近下手にインタークーラー(強制冷却のファンだ)をつけ忘れて計算させると、PB2400はすみやかにお亡くなりになってしまうのである。

たぶん発熱のあまり内部が高温になり、回路保護のために電源が切れると思うのだが、確証はない。とにかく電源が落ちるとその後の数時間は全くの無駄である。それでなくてもこの暑い夏にG3化してから懐炉となっているPB2400はさらに数度の気温上昇をもたらしてくれる気がする。となると第一に早く、そして第2にあまり発熱しない解決策が求められることになる。

どうもあちこちのサイトを読む限り、400MHzと320MHzの違いを体感できるのはSETI@homeの計算だけのようだ。それだけの目的のために5万円余分に払うわけにはいかない。となれば結論は明白である。

これまで何かとお世話になっているAmuletのHPを見ると320MHzアクセラレータは品切れ、ということになっている。ましかし行って見りゃなんとかなるさ。他の店にも売っているだろうし、取り付けだけを頼んでもいいんだから、と思って8月5日の木曜日、私はふらふらとPB2400そのほかをかついで秋葉原に向かった。

 

Amuletというのは秋葉原の駅から比較的離れたところにある。それまでの道筋に何軒かMacintosh関係の製品を扱っているショップがある。それらを覗いてみると、ちゃんと10万円を切る値段で320Mhzアクセラレータが売っているようだ。これを見て私はほっと一安心である。帰省した名古屋でもこのアクセラレータを探してみたが、お値段は15万円もしたのである。これではなんのために400Mhzを見送ろうとしているのかわからない。さすがに秋葉原、名古屋の大須とはお値段が違うようである。

さてAmuleの前にたどりつくと店の前に張り紙がしてあり、「320MHzアクセラレータ在庫あります」と書いてある。ラッキー、ここに在庫があるんだったら、別に他の店で買わなくても言いわけだ。私は店にはいるとアクセラレータの箱が山積み(ちょっと大げさか)になっている。私はそれをつかんで、「これお願いします」と言った。取り付けの依頼をあれこれしているうちに相手が「G3だけでよろしいですか」と聞いた。まるでファーストフードの店で「ポテトかドリンクはいかがでしょうか」と聞かれるようなものだが、実際私はポテトならぬメモリをつけようと思っていたのである。メモリの値段と容量を聞いて、20秒ほど考えた後に「ではメモリもお願いします」と言った。

取り付けまでの2時間私は秋葉原をぶらぶらしながら時間をつぶしていた。その間私はMr. DonutなどにはいってSETI@Supportに追加するグラフィックスの構想などに浸っていた。周りからみれば平日の昼間なのにぶらぶらしていて、おまけに宙に視線をただよわせあやしげな笑みを浮かべている中年男というのは結構異様な姿であったに違いない。

 

さて2時間ほどたって戻ってみるとちゃんとできている。あれこれ試験してみると特に早くなった気はしないが、ちゃんと快調に動いてくれる。メモリもばっちり増設されている。ご機嫌になった私はお金を払うと意気揚々と店をでた。

それから電車のなかでしばらく使ってみた。それまで電車のなかであろうがどこであろうがしばらく使っていると懐炉か火の玉のように熱くなったPB2400だが、「あら、まだ時間がたっていないせいだろうか」と思うくらい熱くならない。これならば膝にのせて使っていても低温やけどをする可能性は低かろう。そう思って使っているとこころなしかあれこれの動きがきびきびしてきた気もする。私はまたご機嫌になった。

Norton先生のベンチマークを見ると確かに向上している。しかしいつもこの「評価値の表示」を見るたびに時の流れと速度の向上に唖然とせざるをえない。私が初めて買ったIIcxのスコアは7.98(この数字が何を意味するかはほおっておいて)「脳味噌がぶっとぶほど速い」と思ったQuadra700は30.5(そりゃ4倍近くスコアがあがったんだから速いと思って当然だ)それに対して今の状態でのスコアは522である。18倍のスピードだ。逆に言えば今使っているアプリケーションをQuadra700で動かせば、1/18のスピードで動く、ということなのだろうか。

それよりも明白にこのアクセラレータの威力を実感させてくれたのはSETI@homeの計算であった。この時まだ公開していなかったVer0.3では、「解析終了までに必要なCPU時間」を表示するようにしていたのである。それを見るとだいたい14時間で解析が終わりそうだ。実に以前の6割弱の時間である。加えて発熱が減っているから黙ってお亡くなりになる可能性も減ることだろう。(こればかりはやってみないとわからないが)

さて、このように私のPB2400はあらたなアクセラレータ+メモリ増設によってまたもや寿命が延びることとなった。少なくとも来年の今頃までは使い続け、、ひょっとしたら今まで私が使ったMacintoshのなかで一番長く使う機種になるかもしれない。(仮にこのPB2400が事故にあったとしても私は中古のPB2400を買うと思う)その先については神のみぞ知るところであるが。

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注釈

iBookを目にした瞬間:何でもExpoの直前までPB2400を売りにくる人が増え、中古の値段がさがった。しかしiBook発表直後から今度は買いにくる人が増え、値段が上昇しているんだそうな。私と同じ事を考えた人はそう少なくないのだろ。本文に戻る