題名:私のMacintosh

五郎の入り口に戻る

目次に戻る


37章:iPod Shuffle

前の章は「WWDC2003」ということは2004年度中は私のMacintosh生活に何も起こらなかったということなのだろう。

怪しげなソフトをPowerBookで作るということには随分と執念深くやっていたが、ハードのほうはあまり変化がない。iMacG5も発売され、会社で買おうかと一瞬考えたが、個人で買うほどではない。最初は

「ふーん」

と 思っていたiPodは今や飛ぶ鳥を落とす勢い。小さなminiも出たが、私は会社で「UI評価用」に購入したiPod20GBで十分幸せである。なんと いってもiTuneに登録したものを何も考えず全部放り込めるのがうれしい。この「丸ごと持ち歩き」ってのはいい考えだよなあ。

というわけで何も変化がないまま2004年が終わり、年が改まるとMac World Expo SFがやってくる。例によって開催前からいろいろな噂が飛び交う。その中に

「シリコンメモリベースのiPodが発表される」

と いうものがあった。それを聞き私は首をかしげる。なるほど、確かにそういう考えもあるだろうが、前述したようにiPodが一番いいのは「丸ごと」の点にあ るのではなかろうか。現に私の知り合いでminiを買ったが曲を選んで入れるのが面倒で売り飛ばしてしまった人がいる。となるとそれよりも容量が小さいメ モリベースのiPodというのはいかがなものか、と。

そのうち例によって本物ともなんともつかぬ「新機種」のムービーが流れたりする。そのうちの一つはiHomeと名前が記された白く小さい四角形のMacだ。ただしこれもいつまでもネット上に流れていることからその信用性は限りなく低い。

などと期待とそれがはずれた場合の失望に準備しながらその日はやってくる。朝起きてあちこちのニュースサイトを漁ると怒濤のように新製品が発表されたことがわかる。

ソ フトのほうではいろいろなソフトつめあわせ、ilifeが05にアップデートされた。ということは来年もまた新型がでるのだろうか。構成に大きな変化はな いが、それぞれ少しずつ使いやすくなっているようだ。従来Keynoteとして単独で発売されていたソフトはワープロと合わせたパッケージになった。この ワープロはその良さが今ひとつ解らない。

ハードではムービーにあったような小さなMac-Mac miniが発表された。最初その姿を見たとき

「なんだこれは?特徴の無い。。」

と 思ったが驚くべきはその小ささと価格にあった。単独の写真ではその大きさが解らないが前面にあるスロットがCD用のものだとわかると話は変わってくる。な んて小さいんだ。あのムービーにあった偽物よりもさらに小さい。(ただし全体の感じは似ていたことから、あのiHomeにもいくばくかの真実はあったのだ ろう)

もう一つは噂通りのシリコンオーディオプレーヤーである。しかし何よりも驚いたのはその小ささ、価格、それに何よりもシンプ ルさである。全体が小さくするとまともなディスプレイ、操作系が搭載できない事を逆手に取り、その名の通りShuffleを基本とした大胆な製品を設計し たのだ。

これにはいつもの事ながら驚いた。少し考えればこれは、Appleが推し進めてきたDigital Hub構想の非常に解りやすい形であることが解る。つまりこれはパソコンにインストールされたiTuneがあってはじめて成り立つ製品なのだ。読み込みだ 管理だ、リストの作成だは、すべてパソコン上のiTunesに任せ、本当に最小限だけの操作系を搭載したプレーヤを実現した。

考えがない人間が作ると「この機能ははずせないよね。あ、これもあったほうがいい」とあれこれ使いもしない機能を付け加え、結果としてわけのわからないものができあがる。足すのは(組織の中では)簡単だが削るのは難しい。

などと感心していたうちは良かったのだがそのうち

「うーむ。今回発表されたものが全て欲しい」

という衝動に駆られはじめたのである。

ま ずiLife05とiWorkを買う。次にはちょっと値段が張るがMac Miniを買う。Apple社の定義によって会社の机の上にあるWindows機とディスプレイ、キーボードを共用する。会社で使っているキーボードはプ レーステーション2用のものだから何かと不都合があるがまあ気にしない。

さて、残ったのはiPod Shuffleである。之までに買った物は会社で購入する正当な理由があったが、こればかりはなんともならない。独身のころであれば2個でも3個でも買っただろうが今は金欠でありながら支出が桁違いに増大している今日この頃だ。

さ て、どうしたものかと思っているうち月日は過ぎていく。発売当初は極端な品薄だったのが3月になりそこらへんの店頭で在庫を見かけるようになった。量販店 で2度ばかり「あの」と声をかける店員さえいれば購入、というところまで行ったのだが、こういう時に限って店員は見つからない。これは私に Shuffuleを買わせまいとする何かの陰謀、なんてことはなく3度目には店員が目の前に立っていた。これください、と頼む。ここで容量の大きい1GB ではなく512MBにするのが、やはり既婚者の悲しさというところか。

さて、買うとさっそくiTuneから音楽を移す。最初は

「お気に入りの曲はかならず入って欲しいし」

という理由でShuffle専用のPlaylistなど作ってそれを入れてみた。すると確かにお気にいりの曲はかかるのだが、なんだか面白くない。次には本来の使い方-全体から無作為に転送、というのをやってみた。

す るとこれがご機嫌なのである。Shuffule機能のすばらしさというのはiTuneを使っていた頃から気がついてはいたが、その良さを再発見した気がす る。そもそも自分が買ったCDだからあまり嫌いな曲ははいっていない。つまりお気に入りのラジオ局をずっと聞いているようなものだ。また結構好きなミュー ジシャンでもその人の曲ばかり続けて聞きたくないこともあるのだが、ランダムに組み合わせることでそうした問題もなくなる。ジャンルを飛び越えバッハの後 にエアロスミスが来るのも両方を愛している私にとってはなかなか乙なものである。

そのうち更に良い点があることに気がついた。 Shuffleは全体がプラスティックでできており、非常に軽い。自分が持っているのを忘れるほどだ。というわけでシャツの胸ポケットに入れてみる。する と本当に持っているのを忘れてしまった。ちょっと暇ができたな、という時に胸を見るとShuffleが入っている。そこで音楽を聴くとご機嫌。またこれま では鞄とかあるいは上着のポケットに本体をいれ、耳までコードをのばしていたのが、これだと文字通り体に密着-Wearableという気分になる。つまり 上着を脱いでも鞄を於いても音楽はそのまま存在しているのだ。

これは予想外の発見だった。小さく軽く、という進歩の方向はあるいは線形かもしれないが、使う側からするとどこかに「持っている事を忘れる」点があるようだ。

唯 一の難点はイアフォンのコードである。こればかりはなんともならない。本体にぐるぐる巻いておくと、これが素敵にからまってくれたりする。しかしまあ大き なiPodよりはずっと簡単に使える、ということにしておこう。某社がネックストラップ兼イアフォンのコードというすばらしい製品を出していたが、あれが Shuffleでも使えるようにならないかなあ、と願うことしきりである。Shuffleのアクセサリとして出したら爆発的に売れそうな機がする。なんと かならぬか、と情報を漁れば、そうしたヘッドフォンをShuffle用に改造している人もいるようだ。もう少し簡単な解決策は、、とみれば「そもそも iPodのコードが長すぎるのがいけない。というわけで三つ編みにしましょう」と提案している人がいる。ご丁寧に三つ編みのやり方を解説したサイトへのリ ンクまで張ってある。それを読み、生まれて初めての三つ編みに挑戦。多少おかしいのかもしれないが、ケーブルの長さは短くなり、かつしっかりしたのでから まる確率は大幅に減った。というわけで私はご機嫌になる。iPodのCMではないが思わずこれをつけたまま踊り出したい衝動に駆られることもしばしばだ。 (とはいっても中年なのでそんなことはしない。若かったとしてもしない)

しかしそのときPowerBookの方には暗い影がしのび よって来ていた。鞄から落として筐体がゆがんでしまった、のには目をつぶるにしても、ハードディスクの残り容量が少なくなってきたのは問題である。 2005/3には残りが2GBを切り始めた。これはまずい。といったところで私にはどんな対処方法が残されているのだろうか。

前の章 | 次の章


注釈