題名:私のMacintosh

五郎の入り口に戻る

目次に戻る


42 章:iPhoneショック
1月というのはお正月であるが、Mac userにとっては年に一度の大イベント-Mac World Expo at San Fransiscoが開催される月でもある。

去年のMac WorldはIntel Mac Book Proの発表はあったものの今ひとつ驚きに欠けた。Jobsにも今ひとつ生彩がないように思えたものだ。さて、今年は何が発表されるのだろう。
私 が勤めている会社は1月9日から始まる。正月ボケの頭であれこれ情報をチェックする。Appleの携帯電話につい てはかなり前からいろいろなうわさが流れており、いい加減不感症になってしまった感がある。ただし今回はIntel CPUへの移行をWWDC前に報道したサイトと同じサイトが携帯電話が発表されることを報じていた。となると本当かもしれない。

そうはいっても、いつものごとくまずはAppleストアの売り上げについてのべ、iWork07,iLife07あたりから本題には いって、 Leopardの新機能を紹介。最後にOne More thingとか言うのだろうな。基調講演は午前2時からだが、例によって私はそんなに早く起きることはできない。目覚ましを4:45にしかけて寝てしま う。そもそも私は携帯電話を持ち歩かないMinorityなのだ。会社から持たされているから保有はしているが、普段から使っていないので

「肝心なときにつながらない」

と評判である。自分が予期していないときに通話を受け取ったことなど1−2回しかないのではないか。したがってAppleが何を発表 するかについては普段ほど関心はなかった。毎日必ず使っているMacがどうなるかについてのほうがはるかに重要である。ではおやすみなさい。

翌朝4時ごろ目がさめる。まだ寝ていたい気もするが何が発表されるか見たい気もする。眠気と好奇心がしばし戦った後好奇心が勝利を収 める。ごそごそとおき だしブラウザを立ち上げる。日本のアップルサイトを見てみるが何も変化がないようだ。ということは恒例の「即日発売」ではないのだな。では米国Apple のサイトはどうだろう。

アクセスしてみるとトップページに新しいアップルからの提案-iPhone-が掲載されている。その姿はいくつかの想像図にあった既 存の携帯電話の改良版でも iPodで導入されたクリック&ホイールを利用したものでもない。全面がディスプレイだ。半ばぼんやりしながらそのアニメーションに見入る。なんだこれ は。

会社に行くと関連情報をあれこれ探す。探せば探すほど驚きが深まる。その日の午前6:55分。私はこう書いた。

--(引用ここから)--
日本で携帯電話の企画とかやっている連中はみんなおなかを壊せばいいと思う。

というかこれを書いている段階ではまだApple.comにあるいくつかのムービーを観ただけなのだが。

なんだこれ。

日本でカーナビの企画をやっている連中はみんなゴミ箱に行けばいいと思う。

○○はやりつくされば分野だから、とか得意げに行っている連中は階段を20段くらい落ちてみるといいと思う。

人のやることにわけのわからない難癖つけて仕事した気になっている連中はみんな冬の伊勢湾に沈めばいいと思う。

今日は本来↓の話を書くはずだったのだが、○○について語るのは時間の無駄である、ということを思い知らされた。
--(引用ここまで)--

機能の一つ一つはそれまであったものかもしれない。しかしそれをどうしてこのように統合してひとつの製品として提供できる。日本の携帯で確かにブラウズは できる。しかしそれは携帯電話専用のサイトがほとんどだ。なぜSafariを乗せてくる。
携帯電話の形はほぼ「折りたたみ型」で固まったと思っていた。文字入力のためにはしっかりと押せて、かつフィードバックがあるボタンが必要だと思ってい た。それをあっさり捨ててきた。
私は「製品企画」とかやっている人間のことに思いをはせる。ここをこうしよう。ユーザーのフィードバックをみたところここに不満があるようだ。改善しよ う。とかなんとかやっているうちに、このような破壊的な製品が発表されてしまった。
あるいは私はこうしたものを作りたかったのかもしれない。しかしそれを提案すれば「どこに技術があるんだ」「そんなのすぐ真似できるだろ」と卵にもならな い段階でつぶされてきた。その結果がこれだ。
そんな思いをただぶつけたのがこの文章。それから3時間後、私はこう書いた。

--(引用ここから)--
ドレッドノートが出現した時ってこんな気分だったのかな。。

----Wikipediaより
これらの結果ドレッドノートは以前の艦に比較して圧倒的に強力な戦艦となり、その後建造された類似艦を弩級艦と呼んだ。数年後には弩級艦を凌駕する超弩級 艦の誕生を引き起こし世界各国の大建艦競争時代、ひいてはその先の、ワシントン海軍軍縮条約から始まる海軍休日時代(Naval Holiday)の遠因にもなったのは、史実の知るところである。それに付随し、本艦進水以前に就役・建造中だった全ての戦艦が一気に旧式化してしまっ た。
----
--(引用ここまで)--

各国、新型戦艦(と彼らが思っているもの)を一生懸命建造していた。しかしそれはドレッドノートの出現により一気に旧式化した。おそらく今開発が進められ ている携帯電話の多くも同じ運命をたどるだろう。

そのうちSteve Jobsのキーノートがネットで見られるようになる。どちらにしても仕事が手につかないのでさっそく見入る。それを見ているうち何度か驚嘆する。本当に Appleのサイトにあったようなスピードで文字を入力しているのだ。デモビデオでは入力できても実際は無理だろう、と思っていたのに。そしてこのスク ロールのスムーズなことはどうだ。というかスクロールバーをあっさり捨ててきた。SETI@Supportを作っていとき、「もっといいものができる」と 思いあれこれ試したが結局今普及しているスクロールバーのコピーしかできなかった。私にできることはそれくらいなのだが、それをあっさり捨てたのだ。

いてもたってもいられなくなった私は同じグループの人間を集め、iPhoneのプレゼンを見せる。彼らがどこまで英語を理解できるかわからないが、しかし ユーザインタフェースに少しでも興味を持っているものであれば、これを見ておくべきだ。途中から別のグループの人間が「うるさいんですけど」と文句をいい にきた。そのままその男は見続ける。私としては数日間風呂に入っていないと思しき男に隣に立たれなくないのだが、そういうわけにもいかない。彼は最後に
「おもしろかったけど、買うかどうかはわかりませんね」
といった。今働いている会社にはこういう「賢いコメント」をする人間であふれている。私はそれほど賢くないのでこれを使うためにひそかに米国移住をしよう かと考えていた。

さて、それからiPhoneはまさに賛否両論を巻き起こした。それについてあれこれ考えたり書いたりしたのだが、私にとってそうした 考えを形にするチャン スがめぐってきた。私が勤めている会社には「持ち回りの教育」なるものがある。半年に一回くらい自分の好きなテーマで調べたことを発表するのだ。22日が ちょうど私の番。最初はPower Pointで作り始めたが、そのうちKeyNoteに切り替える。Power Pointに慣れていないためか必要なアニメーションが見つからないのだ。
いったん作り始めるといつもの習慣であれこれやり始める。その意図をもっともよく表している写真を探しアニメーションを付加し、、とかやっていくとふと疑 問に駆られる。こんなに凝ってどうする。そもそも教育の出席者なんて一桁だし、一回しかやらないだろう。そのためにこれだけ労力をかけるのはいかがなもの か、と。
確かにそうだ。というわけでこんなものを 作った。こうやってサイトの一コンテンツとして何の意味があるかわからないが、とにかく一回使っただけではなくな るわけだ。最初は「ナレーションを吹き込んでYoutubeにアップしてやろうか」と思ったがさすがに面倒なのでやめた。(このHMTL化も結構面倒な気 もするが)というわけで私はソフトバンクの孫社長に祈りをささげる。頼む。これを日本で発売してくれ。そうすれば大坪家そろってソフトバンクに切り替える ぞ、と。しかしそんなことを考えている間にもPower Bookの非力さは目に余るものとなり、そして私は後継機の購入について真剣に考えることとなる。しかし例によってそれは簡単には進まないのだった。

前の章 | 次の章


注釈