題名:書評

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日付:1998/3/8

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Military関係

B-17(Martin Caidin著 南郷洋一郎訳 フジ出版社刊)

米国陸軍が第2次大戦中に使用した4発爆撃機B-17の誕生から終焉(まだ空を飛んでいるのだが)を描いたドキュメンタリー。大学時代に買ったと思う。その後就職して隣の課の課長の家に遊びに行ったとき、机の上にこの本が置かれているのを観た。その課長が

「一つの章に一本の映画が撮れるくらいの内容が詰まっている」

と言ったことを覚えている。(その人は本当に飛行機が好きな人だったのだ)

押入の奥から久しぶりに見つけたので表紙をめくったら最後まで読んでしまった。前に読んだのはいくつの時だったのだろうか。人間性根は変わらない物だが、それでもいくつか昔とは違うことを考える。(と思う。実は同じ事を考えているのかもしれないが)

一つはB-17開発の経緯。この飛行機は当初から明確な用途と価値が想定されて開発されたものではない。開発初期にキャンセル寸前の羽目にも陥っている。そして最終的に使用された目的も規模も開発当初には想像もつかないようなものだった。

こうした事はあちこちで見かける気もする。やれマーケットリサーチだ、やれ市場と顧客意向の正確な把握だ、やれ明確なコンセプトだなどと言ったところで結局成功作となるか失敗作となるかにはもっと別の要素が聞いているように思うのだ。偶然以外に。では何か、という問いに対する答えは頭の中でぼんやりしている段階だから後回し。(後っていつだろう)

もう一つ。この本に書かれているのはB-17に携わった連合国の人々の物語である。ひどい損害を受けながらなんとか基地までたどり着くその姿は文字で描かれているが、それがどのような光景かというのを昔より少しリアルに(本当の光景を見たことなどないのだが)想像してしまう。これはSaving Private Ryanの影響だろう。

そしてB-17の「活躍」とは結局破壊と殺戮であり、爆弾が落ちて行った先にいる人々の事がどうしても頭をよぎる。そんなことは自明ではないかと言われればその通りなのだが、子供の頃はただ「活躍」として読んでいたように思う。考えれば子供の頃というのはひどく残虐な事を平気でやるものだが、それはやはり視野が狭い-相手が何者かまで考えが及ばない-からなのかな、と思ったり。小さな井戸の中でふんぞり返っている「大人」達が同じようなことをやるのを観てもこの推論はそう的はずれでないかもしれない。

などと考えているうちにこの本は終わりを迎える。昔読んだときより少し感銘を受けなかったのは本当のところだが。


未完成艦名鑑:(1998/2/26)

株式会社光栄、ISBN4-87719-532-7 20世紀初頭から第2大戦末まで、未完に終わった世界の代表的主力艦を解説した本。ひさしぶりに(またまた)第2次大戦中の艦船をあつかった本で読みがいのある本にでくわしたという感じだ。この方面の本はあまり読んだことがないので内容の妥当性については評価ができないが、かなり各方面の資料を参照し、客観的にかかれている印象を受ける(大間違いだったらごめんなさい)日本の戦艦大和の後継艦は「紀伊」「尾張」という巨大戦艦だったと昔少年向けの本に書いてあってそれを信じていたが、こちらの本を信用すればそれは間違いらしい。。。

確かに大和以上の巨大戦艦を建造するとなると、建造設備から作らなくてはならない、従って超大和級は総トン数において、大和とあまりかわらない、というこの本の論旨の方が筋が通っている気がする。しかしこの本の作者はどういった人たちなのだろうか。。

一般には「日本は大艦巨砲主義から抜け出せなかった」ことになっているが、米国もしこたま戦艦を保有し、かつ建造を続けたことはあまり知られていない(もっとも空母も山ほど建造したが)米国と日本がどの時点でどのように建艦計画を立てて、戦況の変化により変更したかを並べて示すとさぞかしおもしろかろう、と思っているが、あまりそういう検討をした本を見たことがない。これは将来会社を引退した時の老後の楽しみにとっておくか。

 
 

ドイツ空軍計画機:(1998/3/2)

株式会社光栄、ISBN4-87719-429-0 第2次大戦当時のドイツの計画機をあつかった「数多い」本の中の一冊。このテーマにはびっくりするほどたくさんの本が出版されている。一つにはドイツの計画機には先進性、奇抜性などをもったものがたくさんあるからだろう。

しかしながら内容のレベルは必ずしも高いとは言えない。ここで内容のレベルというのは、ちゃんとした資料にあたって本が書かれているか否かを指している。前述の「未完成艦名鑑」が期待以上に興味深い本だったので、同じシリーズであるから、ある程度おもしろいかもしれない、と思ったのが間違いだった。

第2次大戦後に開発された各国の機体と少しでも類似点があれば「データが参考にされたと思われる」「影響をうけている」「そのコンセプトの基盤となったのは明らかだ」などと「憶測」に基づく「感想」が並んでいる。(もっとも「全ての関連性に関する記述が憶測だ」とは言っていない。MeP.1101とベルX-5の関連性は有名である)実際に機体が開発される際に関連性があったのか、なかったのか、の資料にあたっての検討などなされた形跡がない。また(こういった類の本によくあることだが)どこかの本から流用したような文章の形跡が多く見られる。思うにこういう本を書く人の中には、原資料にあたるようなことをせず、ほかの「解説書」を読みあさっただけのマニアの類がまじっているのではないだろうか。


陸軍兵器発達史 木俣滋郎 光人社NF文庫
明治健軍から終戦までの日本陸軍における兵器の発達について書いた本。その年毎に正式化された陸戦兵器の概要が記述されている。
著者は昭和5年生まれで工学院大学付属高等学校教諭。(現在は退職)つまりプロの物書きというわけではない。そのせいかどうか知らないが、記述はどうしても浅くなりがち。少しの事実と感想が述べられているだけで論理的かつ深い分析は見当たらない。戦争中少年時代をすごされた方であり、そうした意味で興味深い実体験は散見されるのだが。
どうも日本人が書くこの手の本というのは、アマチュアのマニアが書いてみました、というものが多い気がする。そうとわかっていつつもふらっと買ってしまう私のような人間にも問題があると思うのだが。 

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注釈