題名:Clinton-part5

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日付:1998/12/15

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1999/3/14

さて3月も半ばとなった。最近は自分の命運の方を気にしているのでいきおい社会情勢などには疎くなる。

例によって某番組がダイオキシンに関して「誤解を招く報道」をしたそうだ。その後ずいぶんと時間を使って謝罪放送をしたらしいが、ほうれん草農家が被った経済的被害がとりもどせるわけでもない。所詮これも彼が得意な「自分の最良の物を主にささげよう」式のいいわけだろうか。

さて先日一月ぶりに実家に帰った。バンドの練習は月一回だから、何もなければだいたい月初めに実家に帰る。バンドの練習は日曜日。午後2時からだから午前中は暇だ。うちの母はさむがりだから、冬の間は居間にしいてあるホットカーペットの上がお気に入りの居場所だ。ホットカーペットの上で毛布をかけてなまけている母(母はときどき床にねっころがって天井を眺めながら”ああ。忙しい忙しい”と言っているから、このときも母にしてみれば忙しかったのかもしれないが)といろいろな話をした。

私も応募した宇宙飛行士は結局3名合格になったそうだ。元々の募集要項には「2名程度」と書いてあったから、たぶん女性で合格に値する人がでてくれば3名にするのだろう、と思っていたがその予想はあたったようだ。私は正直いって朝納豆定食を食べる中華料理屋のTVで、選ばれた女性宇宙飛行士が何かしゃべっている様子をみるまで選考が終わったことをしらなかったが、母はちゃんと記者会見をみたらしい。母によれば「3人ともみんな感じが悪い。あたしは向井さんみたいなさっぱりタイプがいい。今度選ばれた女は宇宙で琴が引きたい、とか言って、いやだ。」ということだ。彼らが府中に、もとい、宇宙にいくのは何年後になるだろう。

続いては最近話題をさらっている臓器移植の話になった。臓器提供者の家族が「非人道的なマスコミの報道ぶり」を文書で抗議したが、当然のことながらマスコミの方々はそれを大きくとりあげるつもりもないようだ。せいぜい「行きすぎた報道は困りものだ」と一言コメントをいれるだけだろう。匿名である提供者の家族を、コメントをとろうと追い回す連中の姿が目に浮かぶようではないか。彼らにとって世界一に重要なのはほかに先駆けてのスクープ。その前には他人の人権など埃のように軽い。人間であることを放棄した連中には何を言っても無駄だ。これが同業者ではなく、何か別の組織が文句を言われているのであれば喜んで「特集」をくんで「断固追求する」ところなのだろうが。

 さてこの話になったとき母は突然「五郎。そこの紙入れをみてちょうだい。」と言った。何かと思えばそこに父と母の臓器提供意志カードがあるから

「もうなんでもあげてちょうだい。ちょっとくらい生きててもかまわん」

だそうである。実は私もこの臓器提供意志カードを持っている。私も脳が死んでしまったら心臓だろうが肝臓だろうがなんでも自由に使ってほしいと心から願っている。(使い物になるかどうかは実に怪しいものだが)たぶん今回の報道をみて、そういう気になった人は多いだろう。しかし「ちょっとくらい生きていてもかまわん」と豪語する人はあまり多くないかもしれない。

そのうちTVではNHKの朝の連続ドラマの再放送を始めた。うちの母はいまやっているシリーズが大嫌いだそうである。何でも「高校での女がいきなり新聞記者として活躍し出すなんてのはあまりに馬鹿げてる」だそうである。私はこれがそういう理由で馬鹿げているのであれば、これの一つ前のシリーズも同じくらい馬鹿げていると思う。

前のシリーズでは高校出の女が大工になって、最後には自分の事務所を開くことになるのだが、まあその間何をやってもとりあえず話がうまくいくことになっている。世の中はいい人ばかり。ちょっと問題があっても必ず最後は丸く収まる。がんばって夢を追いかけていけば、それはいつかはかなう。大切なのはひたむきに夢だけを追うことだ。彼女の友達は大学の推薦が決まっていながら「声優になりたい」といっていきなり試験をすっぽかす。試験前に「声優になりたい」意志を先生に言うと先生は

「君だけの問題じゃないんだ。今後うちの高校から推薦をする生徒にとっても不利になるんだよ」

と言う。(全くもっともな理屈だ)おまけに大卒で声優になれないという理由はない。いろいろなことを学んだ方が声の演技にも深みがでるものだと思うのだがとにかく声優になりたい彼女にそんな声はとどかない。さて、その先生のコメントに対して主人公の大工志望の女性はこう言う。

「そんなの、先生が自分の都合だけ考えているだけじゃん」

世の中に実際こういうものの考え方をする人間は多い。私からみるとこういう人間はとても幸せそうだ。自分の夢の前には他人の迷惑など省みずとても幸せそう。この主人公の女優はこうした「自分の夢ばかり考え、目がうわずった」人間を見事に演じていた。

さて私は概略このような話を述べたが、母は同意しない。前のは好きで今のは嫌いだという。高卒→大工→建築事務所、と高卒→新聞記者のどこに境目があるか私には理解できないが母はかたくなにその結論を変えようとしない。そしてこういった。

「馬鹿な脚本を演じさせられてると思うと役者さんもやる気がでないだろうね」

私はこう答えた

「会社生活なんてのはそんなもんだよ。上司がどんなに馬鹿な事をやっても、部下はひたすら”いやーすばらしい着想。私全く感服いたしました”と言ってその通り”無駄だ”とわかっていながらも仕事をするしかないんだよ」

実際私は前の会社で上司が馬鹿なことを言うと、一言言わなければ気が済まない、誠に扱いにくい部下として有名であった。今は派遣で働いている身だから、相手は上司兼お客様だ。だから黙っている。お客さんに文句を言うなんてのは社会人としてするべきことではない。だいたい下にいる人間から文句をいわれてやり方をあらためる、なんてことができる人間は滅多にいないと思ってよい。

とはいえ母の言葉は正しい。実際「馬鹿な話だ」と思っていると仕事のやるきもでないし、効率もがた落ちだ。しかしそれくらいでは会社はびくともしない。靴磨きが多少気合いをいれようが、抜こうがそれがどうしたというのだ。派遣社員とはそんなものである。しかし派遣だろうが正社員だろうが給料分は働くのが私の主義である。正直いってこの業界の「給料分」が何を意味するのか私は未だにわからないが、まあとにかくまじめに働いてはいる。しかし「馬鹿なことを」と思いながら心にふたをして働くことほど心身に悪い影響を与えるものはない。

いかん。母にこんな話をするわけにはいかない。それでなくても廃人化して、嫁をもらう気配もない私は親孝行をしているとはいえないのだ。別れ際に「がんばって仕事しなさいよ」という母に、私は弟にならって「はっつはっつはっつ。仕事は完璧ですよ。まかせといてください」と言った。扉をくぐって外にでればまたあの会社生活が戻ってくる。

 

1999/4/3

3月の終わりから世間であるコンピュータウィルスのことが話題に上るようになった。MelissaというMicrosoft製品の機能と電子メールを利用して蔓延するタイプのものだ。ウィルスが(彼にとってだが)成功裏に感染すると最大50通も電子メールを出して感染しようとする。異常な繁殖力をもち、米国では実際に大企業のメールシステムがダウンしているという。

私はMacintoshユーザーだから基本的にウィルスとは無縁の生活を送っている。正確に言えば昔職場のMacintoshにウィルスが蔓延したことがあるのだが、基本的にここ数年は新しいウィルスの報告はほとんどない。私が思うにウィルスの発生速度(これは人為的なものだが)は市場のシェアに依存すると思う。誰が世界に3台しかないコンピュータ用にウィルスを書こうと思うだろうか?Macintoshのシェアは10%以下だから、いきおいウィルス製造者の目は大多数のシェアを誇るWindows+Microsoftの製品に向くわけだ。

さてかのように「対岸の火事」とのんびりしていた私の元にある知り合いからメールが届いた。それには概略以下の内容の引用文(元の文章を誰が書いたか私は知らない)がついていた。

「Melissaという強力なウィルスが蔓延している。米国では被害もでている。変種がつぎつぎと現れていることから、メールシステムでの対応は不可能。完全に防御するためには、Microsoftのワープロと電子メールプログラムをコンピュータから削除するか、ワクチンを導入しつづけるしかない」

さて、そう引用した後でメールの発信者は

「Microsoftの電子メールプログラムを使っている人がいたら、僕のアドレスを削除するか、メールソフトを変えてください」

と書いていた。そしてそのメールを15人の知り合いに送信していた。

 

彼はウィルスを大変おそれて「とにかく自分だけは感染したくない」、と言っているが自分がそのウィルスと同じ行動をしていることに気がついていないようだ。引用文にはいくつかのホームページが引用されていて、そこをちゃんと読めばこの「完全に防御するための方法」がデタラメであることがすぐにわかるのに。このたぐいのウィルスを防御するためには単にMicrosoftの製品である種の設定を「忘れずに」するだけでよいのである。(この「忘れずに」ができないのが世の中の常なのだが)それをこの引用文の作者は「プログラムを削除するしかない」などと危機感をあおりたてるような間違った情報を書いている。そしてこの文面を読んでパニックに陥った男はそのデマ情報をまき散らす行為にでたわけだ。

このメールを受け取った人はどういう行為にでるだろうか?言われたとおりメールプログラムを変えるだろうか?引用文にあるようにMicrosoftの製品を除去するだろうか?これは大切な情報だ、と思い彼と同じように自分の知り合いにメールを送信しまくるのだろうか?こうしたたぐいのウィルスが引き金となったデマの嵐はどの程度ネット上で吹き荒れているのだろう?

コンピュータウィルスが蔓延する様子は、自然界に存在するウィルスと奇妙なくらい似ている。最初に報告がある。すると各地で対策がなされる。するとその対策を無効にするような変種が出現するのだ。

そしてその対処の仕方も本家のウィルスに対するものと同じである。「正しい知識を持つことが重要」だ。しかしどうもコンピューターウィルスに関すると素人向けの説明というのは今ひとつちゃんとなされないようだ。「ウィルスですごいことになっている」とだけ書いて無責任に恐怖心をあおりたてるだけか、あるいは専門用語がずらずらと並ぶようなものが多い。最近のパソコンの普及の様子をみているとあの専門用語の羅列ではなく、「いれたらポン」式の対策を望んでいるユーザーはとても多いだろうに。

そういった面からみると、Niftyserveのアナウンスはなかなか見事だ。文中で使用され居ている用語に関して丁寧な解説が書いてあるとともに、最後にはこういう文がついている。

「コンピュータウィルスは人には感染しません。感染したコンピュータにさわってもウィルスには感染しません」

その道に詳しい人からみればお笑いのネタになるような文だが、間違っても笑うべきではない。これこそが大多数のコンピュータユーザー、もしくはその家族、友人にとって必要な情報なのだ。

しかし冒頭引用した私の知り合いのようにウィルス情報におびえたあげく、衝動的にそのウィルスの「変種」であるかのような行動を取り始める人間が居ることをみると「コンピューターウィルスは人間にも感染する」のかもしれない。

さて私の関心はこうしたウィルスを作成する人にも向いていく。彼らはなんと暇な人間であることか。しかしこれは私の隣に座っている人間が言ったせりふだが「暇な人間が作ったウィルスのおかげで忙しい人間の時間が奪われていく」のである。今回のウィルスは実質的に被害がでていることから、作成者が発見されれば有罪は免れまい。こうした感染力の強いウィルスは作成者本人の意図すら超越して世の中に広まっていってしまう。世界的ニュースとなったこのウィルスの作者が、ほくそえんでいるのか、青くなっているのかは私の知るところではない。なんとなく後者の気もするのだが。

 

ユーゴスラビアでは私のように事情をよく知らない人間にはちょっと理解しがたい戦争が起こっている。民族という枠をつくったところから、その間では何世代にもわたる憎しみが巻き起こるようになった。隣人は必ず喧嘩を始めるようになるのは人間の性かと思うが、あの小さなヨーロッパの地域の喧嘩はハタから見ている人間の理解を超えているようだ。機会をみつけて勉強してみようとは思うのだが。

どこかのサッカーチームのユーゴスラビア出身の選手はゴールの後にいきなりユニフォームを脱いでその下に着ていた「ユーゴスラビアへの攻撃をやめろ」というTシャツを見せた。それを隣で一緒になって指さしていた日本人選手がいたが、あの男が何も考えていないことだけは間違いない。どうも事はそんなに単純ではないようだ。歓迎すべきことではないが、武力でしか止められない蛮行というのは確かに存在する。しかしそれにいきなり爆弾を放り込むクリントンも相変わらずだが。彼らはベトナムの2の舞を大変おそれているのではないかと思う。

あの国々の人口はおおむね1000万人以下、広さは東北だの関東だの四国だのの広さだ。要するに日本の内部で、関東地方と東北地方、四国、関西にわかれて殺し合いをやっているようなものだ。日本の中にもある程度地域ごとの軋轢というのは存在する。しかし殺し合わなくていいというのはなんと幸運なことか。

 

1999/5/11

ユーゴスラビアでは相変わらず空爆が続いている。そこにきて、小説でもこんなことは起きないだろう、という中国大使館の誤爆がおこった。よりによって中国である。ロシア大使館の次に誤爆したくない場所であっただろう。

次の日中国の米国大使館の前には抗議のデモが起こった。中国当局は「これは愛国的な行動」と行動を是認した。中国にしてみれば、天安門以来、なんやかんやと人権について文句を言われている相手に対して今こそ言い返すチャンスということだろうか。彼らはこの事件を最大限に己に有利になるように、と利用するに違いない。

さてこの大使館に押し掛けたデモ隊だが、彼らの姿をみて、多少違和感を覚えたのはたぶん私だけではないと思う。あまりにも彼らは感情を表に出しすぎているように思える。いつか金日成が死んだときの北朝鮮の人々の姿をちょっと彷彿とさせる。また不思議なことに2−3日たったら、そのデモは嘘のように沈静化した。特に何の情勢が変わったわけでもないのだが、とりあえず一日行って騒いだら気が済んだ、と解釈すればいいのだろうか。どうも何か変な気がする。

さてふと彼らの姿をみて、「もし日本大使館が誤爆されていたら」と考えた。たぶん職業的な右翼団体と左翼団体は米国大使館前に詰めかけるだろう。しかし国民の大半は全く冷静に対応するだろうと思う。冷静すぎるくらいに。しかし米国大使館前につめかけた職業的な右翼と左翼の人たちが大きく報道されれば、それをみた日本以外の人たちは「日本で大規模な抗議行動が起こっている」と思うだろう。

Stanfordに居たとき、雑誌に右翼団体の連中の姿が大きく載っていた。当時フランスの首相はクレソンとかいう名前の女性であり、とかく問題のある発言の多い人だった。日本人のことは「黄色い蟻」と呼んでいたし、英国人は「あいつらみんなホモに違いない。あたしのことを見ない」だそうであった。右翼団体はそのクレソンの人形を作って公衆の面前で引き裂いていた、とかなんとかそんなニュースも流れていた。私は苦笑しながら「ここに写っている連中は、まあマフィアの派生型のようなもんだ」と言っていたが、確かにそうした写真だけを見ていると日本はこんな連中で充満しているか、と思えてしまう。

どうも想像だけがふくらんでしまうようだ。

さて親愛なるClintonはTornadoに襲われたOklahomaでこの誤爆に対して「遺憾の意」を表すとともに、空爆の継続を宣言した。湾岸危機以来米国の態度は一貫している。無条件の撤退以外はすべて拒絶する。一方中国とロシアは空爆停止を求めている。ロシアにしても湾岸戦争以来外交努力をコケにされ続けているだけに、なんとかここで一発お返しをしたいところだろう。

 

さて、別の話題に移ろう。先日TVでベイカー元米国国務長官がしゃべっていた。彼は北朝鮮に対する政策に対して「彼らを甘やかすべきではない。厳しく対処すべきだ」と述べていた。私はこの問題に対して確固たる意見を述べるだけの知識を持っていないが、ベイカーの言葉のほうが正しい気がする。マキアヴェッリも言っている

「次の二つの事は、絶対に軽視してはならない。

第一は、忍耐と寛容を持ってすれば、人間の敵意といえでも溶解できるなどと、思ってはならない。

第二は、報酬や援助を与えれば、敵対関係すらも好転させうると、思ってはいけない。」

北朝鮮は、米国、韓国、そして日本を理由はともあれ敵対視しているのだ。仮に彼らに対する援助が、北朝鮮国民への情報開示とセットであれば効果もあろう。しかし覚えている人がいるかどうか覚えていないが、最初に日本が援助をしようとしたときに、ある北朝鮮高官は「我が国は援助を必要としないが、日本が戦争で北朝鮮に与えた損害の賠償を償う意味で物資を送るなら、拒む理由はない」と言ったと伝えられたのだ。そして私はこの発言が取り消された時の経緯から、この発言は実際起こったものだと判断している。さてこのような国に対して彼らに援助を与える「太陽政策」が正しいのか、マキアヴェッリの言葉が正しいのか、時だけが正解を教えてくれるだろう。

ちなみに彼は湾岸戦争の時に各国の協力をとりつけるべく世界中を駆け回った人でもある。であるから、最近の「意のままにミサイルをぶっぱなす」Clinton政権のやり方について何か言うかと思っていたが「米国は単独でも、あるいは多国籍の連合国としてでも行動をおこせる」と述べただけだった。ちょっと拍子抜けの感があったが。

 

1999/6/23

さて私がよれよれになっている間に世の中ではそんなこととは関係なしに(あたりまえだが)色々な事が起こっている。それらについてあれこれ書いてみよう。もっとも一つの事に関して詳しく調べられるほど情報をちゃんと調べていないが。

 

親愛なるClintonの妻は今のところNew Yorkから上院議員に立候補するのだそうだ。聞くところによれば旦那が現職の間に立候補を表明する妻は初めてだそうで。彼女が一連のClitonのスキャンダルのなかで本当のところどのような感想をもっているのかはいろいろと取りざたされていた。もし最終的に自分が上院議員になりたい、という野心があったとすれば、あるいはそのことを計算してふるまっていたのかもしれない。仮に心中煮えくり返っていたとしてもそのことを表に出すのは自分のためにも損だと。First Ladyとはそのようなことが出来る人がなるものかもしれない。彼女と対照的なタイプだったのは前大統領Bushの妻だ。彼女は白髪で、どちらかといえば、古典的なよきアメリカの女、という感じでいかにもBushの妻、という感じだった。仕事でつきあった米人で、Bushそっくりの男がいた。「あんたBushに似てるね」と言うと「俺の奥さんは白髪じゃねえよ」と言っていたが。

CNNなど見てみると、この件に関する米国人の反応は予想したとおりで「別にいいんじゃない」といったところらしい。Free Countryであるから、別に公共の福祉に反しない限り好きなようにすれば、というところだ。もっとも一度もNew Yorkに住んだことのない彼女がいきなりNew Yorkに行って「あたしはNew York Yankeesのファンなのよ」と言ったことはずいぶんからかいのネタになっているようだが。まあ政治家になろうという人間はこれくらい面の皮が厚くなくてはいけないのだろう。自分には絶対できないな、と思う職業はいくつもあるが、政治家もその一つである。

Watergate事件の時に、検事団の一員となっていたころの彼女は、勉強or仕事一筋といったタイプのかざりっけのかけらもない女であった。その彼女に目を留めて結婚したClintonはやはり一筋縄ではいかない目をもった男であったというわけか。ただしそれが幸せかどうかは彼のストーリーで私の関知するところではない。

 

さてユーゴスラビアではようやく和平が実現した。ミロシェビッチ大統領は「我々の勝利だ」と言っているのはまあ大統領の職務を果たしている、といことなのだろう。世の中には素直に負けを認めてたちなおった国もあるのだが。私がむしろ気にしていたのは市民の反応のほうである。街頭インタビューというのはどのような選別もできるわけだから、あまりあてにはならないが、概して「我々の敗北だ」という意見が多いようだ。さて、これから平和維持活動だ、とばかりにNATOがはいっていったら、いきなりロシア軍までやってきて飛行場まわりを占拠したらしい。全くあの国のやることはこの50年間何の変化もない。よほど無警告でよその国に進入するのが好きなのだろう。ポーランドや満州、北方領土の運命をふと思い出したのは私だけだろうか。そうして彼らはとにかく自分の存在意義の誇示に懸命だ。そんな行為でどのような評判が得られるか考える余裕は今のあの国にはないのだろうか。

 

中国はあいかわらず大使館誤爆で怒った態度をかえようとしない。関係者の処罰と賠償を求めるのだそうだ。そして古い地図と情報の誤り、という米国の説明をかたくなに拒否し続けている。私はこの問題については何も言えない。「そんな馬鹿なことがあるか」という意見もあるだろうし「いや、結構間抜けかも」と思うこともある。真実がどちらかは神のみぞ知るところかもしれないが。

今回の空爆で一つだけあまり他のメディアで見かけない点を指摘しておく。今回中国大使館を爆撃したのはなんと米国本土から発進したB-2 Stealth Bomberだった。こうした紛争があるたびに、その場所は米国の新型兵器の実験場となっていくのだ。兵器の開発には長年に渡る慎重な試験が行われるが、実戦での性能は実戦で使ってみるしか評価できない。ユーゴスラビアは今回の紛争で、国内のインフラは破壊されるは、政治目的は達成できないわ、今後数十年に渡って「セルビア人は残虐な民族だ」という評判をかちとったわ、おまけに自分たちの国を兵器の実験場にされるわと負債をいくつも抱え込んだことになる。そうまでしてコソボに住んでいる人間達を殺したい理由が(彼らにすれば)あったのだろうが。

 

遠い国の話からお隣の国の話に移ろう。北朝鮮が去年テポドンを発射した発射台を拡充しているそうである。そこから例によって各新聞は「テポドン2号だ」「テポドン3号だ」とあれこれ騒いでいる。NHKの番組を見ていたら、「テポドンの技術を使えばより長距離のミサイルは簡単に開発できます」と言っていた。確かにそうかもしれない。ミサイルの設計、製造は出来ると思う。しかし彼らには試験をすることができない。やろうと思えばまたもや日本をまたいで太平洋めがけてぶっぱなすしかない。一度も試験をしたことがないミサイルでもロケットでもまともに動作するなどと思うのは技術者ではない。東北に火の玉が落ちる事態にならねばよいが、と思うのは私だけではあるまい。

などと考えていると今度は韓国と派手な海上での撃ち合いを演じてくれた。細かいところでは奇術師の引田天巧(?)に「北朝鮮にきてください」と懇願だか脅迫だかを繰り返しているらしい。これらの行動がちゃんとした線でつながっている、という意見もあるだろうし、まるでデタラメという意見もあるだろう。ふとあの国の異常な指導者はノストラダムスの予言を実現しようとしているのではないか、と思ったりもする。漫画のような話だが、実際彼らがやっていることは子供だましの漫画以外の何者でもないと考えることも可能なように思える。

 

一番身近な国内ではオウム真理教がまた息を吹き返し、各地でトラブルを起こしている。なんでも世紀末に起こる大災害から避難するためと称してあちこちに土地をかったりしているらしい。予言に関する話はなんでもそうだが、仮にそれがはずれたところで信者の「信仰」というものはいっさいゆらぐことがない。だから彼らはいつまでたってもあのままだろう。オウム真理教は破産状態にある、と一旦宣告され、損害賠償も全額は支払われなかったのに、彼らがまたもやパソコンショップを経営し、あちこちに土地を購入できるのは確かに法律的には正しいのかもしれないがどこか釈然としない。これが世の中の仕組みというやつか。法律は知った者勝ち。社会的な倫理観などなげすてたほうが世の中しぶとく生き延びられる、ってのは確かかもしれない。

オウム真理教のために被害にあった、あるいはあっている人たちの事を思えば、オウムの製品がまだ売り上げを上げている、というのが信じられない。(何がオウムか、っていうのはもうわかっているのだ)1万、2万を節約したいパソコンマニアにはそうした倫理は通用しないのだろうか。そうした行動が起これば、営業妨害、といえば確かにその通り。自分の好きな店で購入する権利がある、と言えば確かにその通り。しかしただ「自由」と「権利」だけを養護するだけでいいのか?法律は彼らを取り締まることができない。法律の建前は重要だ。しかしその法律の建前と現実の間を補う何かがあってもいいと思うのだが。

さてあまり明るくない話題ばかりが続いたので、最後にちょっとお笑いの話を。

最近私の身代わりに米国に飛んでいってしまった男から、米国のTV番組を録画して送ってもらったのをよく見ている。何かとは説明しずらいのだが、私は日本の「素人、幼稚、内輪受け」を基調にしている日本のTV番組とは波長が合わない。でもって言葉が半分くらいしか理解できないハンデ付きでもいきおい米国のTV番組に走るわけである。

さて、送ってもらっているのは、前から愛している"Cheers"、それに1997年に米国に幽閉されているときに好きになった"3rd Rock from the Sun","Friends","Fraiser"それに"Ally McBeal"である。

最後の"Ally McBeal"が最近お気に入りだ。Chicagoの弁護士事務所に勤める女性を主人公としたドラマだが、このドラマが始まったころにDetroitのラジオでこう言っていたのを思い出す。

男性の声:「あれはどんなカテゴリーの番組なんだろうね。シリアスな場面があったかと思うと、いきなり特殊効果をつかったギャグの場面がでてくる。」

女性の声:「男はこれだから。男ってのはなんでもかんでもカテゴリー分けしないと気が済まないのよ」

カテゴリー分けが容易だろうが困難だろうが、なんだかわからないがこのドラマはおもしろい。NHKでは「アリー・マイ・ラブ」とかいう題名で放映しているようだが、なかなかいい選択だなあ、と感心したりもするし、検索してみるとこの番組に関するサイトも結構あるようだ。

 

さて、このドラマは米国では大変人気がある。1999年のSuper Bowlにこの番組の主人公の女優が出てきていて、きっちりとコメント付きで紹介されていた。解説者曰く「Ally McBealがきてるぞ。Ally McBealはそろそろパスを投げたらいいんじゃないか、と思ってるよ」

さて、人気がある番組にはその番組の俳優さんたちの生の声をとどけるような番組が作られるのである。先日とどいたビデオの中に"Life and Trials of Ally McBeal"というのがあった。ホストの司会で、登場人物(の俳優さんたち)がトピック毎にコメントをしていく形式だ。

その中でホストが番組の背景を説明する。

「Ally が働きはじめた法律事務所には昔つきあっていたBoy Friendがいた。悪いことに彼はもう結婚していた。さらに悪いことに彼の奥さんも同じ法律事務所で働いていた。いやまあ我々の大統領も同じ問題をかかえていたんだけどね。」

かのように親愛なるClintonは格好のギャグのネタとなっている。そしておそらく来年以降は「我々の大統領」の代わりにFormer president Bill Clintonという名前でこの分野において親しまれることとなるのだろうか。

 

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注釈

自分の最良の物を主にささげよう:(トピック一覧)トピック一覧経由ほかの文章をみてもらうと私がなにをいっているかわかってもらえると思う。本文に戻る

 

人間であることを放棄した連中:(トピック一覧)この言葉は映画"Deep Impact"からのパクリである。トピック一覧経由その理由が参照できる。本文に戻る

 

デタラメ:実際この方法では最近すごい勢いで発生しているウィルスの変種に対応することはできない。実際にワープロでなくて表計算ソフトを利用するものが報告されているし、Microsoft社製以外のメールプログラムを利用するものも出現する可能性がある。本文に戻る

 

マキアヴェッリも言っている:ここのセリフはマキアヴェッリ語録(参考文献参照)人間篇第14.本文に戻る

素人、幼稚、内輪受け:(トピック一覧)彼らが日本人を相手に商売している以上、この路線でいいわけだが、それで他の国と張り合うのは無理だ。本文に戻る 

 

Ally McBeal:(参考文献一覧)とはいっても一度目はとばしながらそっとみて、ちゃんと見ることが出来るのは2度目以降であるが。本文に戻る