題名:Little Guessing Game

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日付:2001/5/20

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Rise

NASDAQの推移

2000 年1 月3 日

人生はビューティフル。 新たな千年紀に入った私たちにとって、1990 年代の強気基調が今後最低10 年間続くことは間違いないように思われる。

(中略)

自由な交易に基づく経済的な安全保障こそが、戦車やミサイルよりも低いコストで、より大きな安全保障をもたらすのだ。Y2K 問題が深刻なものになるかどうかは間もなく分かる。もしも、その問題が深刻化しないとしたら、恐れるものは何も無い。貪欲さを除いては。

 

2000 年2 月7 日

貪欲さを除いては何も恐れるものはない。:繁栄が長引くことの問題点は、多くの者が自分は“宇宙の王者”だと思い込むようになることである。裕福になったのは、強気相場のせいではなく、自分が賢いからだとする。リスク評価は最小限に押しやられる。そしてリスクを最大限取るようになる。つまり、成功は過剰を生むのである

 

2000 年2 月14 日

オールド・エコノミー銘柄対ニュー・エコノミー銘柄 今の相場はバブルだろうか?ニュー・エコノミーの強気論者は“ノー”と断言する。従来型の株価評価にこだわる弱気論者は、“イエス”と断言する。今のところ、この論争は強気論者に軍配が上がっている。

(中略)

ニュー・エコノミー論は、昔のチューリップ狂とは違う。まず、投機家の対象は一つの材料に限定されていない。

(中略)

ナスダックの上昇相場がやはりバブルだったのか、あるいはニュー・エコノミーが正当に評価されたためなのかは、時が経てば分かる。後者の評価の裏付けとなっているのは、昨年第4 四半期の素晴らしい業績であり、S&P 500 構成銘柄の営業利益は前年比で2割以上上昇している。更に、業績が予想を下回った銘柄の比率が、過去数年来最低の水準になったことも注目すべき だ

 

2000 年2 月28 日

私見では、この理論的なシナリオが、現在、かつて無い程ぴたっと当てはまる。多くのエコノミストは、これをニュー・エコノミーとしてとらえている。私は、ニュー・エコノミーは既に、かなり高い発展段階、いわばニュー・ウェルス・エコノミー( 新富国経済;New Wealth Economy)の域に達していると思う。ニュー・エコノミーは、実際、ミクロ経済学の教科書で完全競争と呼ばれる非常に古いパラダイムに立脚している。ニュー・ウェルス・エコノミーの仕組みを理解するには、新しいパラダイムが必要だろう。

今日の社会で、新たな富みを生む要因は幾つかある。第1 に、そして最大の要因は、もちろん、株式市場である。S&P 500 の時価総額は、1993 年の3.0 兆ドルから現在、史上最大の11.5 兆ドルに達している

(中略)

つまり、強気の株式相場によって、企業業績が上昇し、キャッシュフローが増えている。従って、設備投資にもっと資金を回せるし、それが生産性の向上につながる。これは、ニュー・ウェルス・エコノミーがもたらす素晴らしい結果だ。

グリーンスパン氏は、これを分かっていないようだ。同氏がニュー・エコノミーについて理解するには時間がかかった。私は、同氏が間もなくすれば、ニュー・ウェルス・エコノミーのもっと素晴らしい効果について理解するようになるであろうと楽観視している

 

2000 年4 月3 日

テクノロジー銘柄の業績は崩壊せず ; 消費者向け電子商取引関連銘柄とバイオ銘柄の最近の急落は、ナスダック銘柄のバブルから確かに空気が抜けていることを示している。現在は、サイバー・テクノロジー銘柄も連れ安になっている。テクノロジーに注目する投資家は、テクノロジー銘柄の崩壊を懸念している。

(中略)

私は、テクノロジー関連の消費や収益の見通しについてはもっと楽観的にみている。つまり、現在、ハイテク革命の第2 段階が始まっていると思う。第1 段階は、過去10 年間続いたが、パソコンが文字通りそのスピードを早めた時代である。1990 年代末期になってようやくパソコンとインターネットがビジネス・コストを削減し、生産性を向上させる力を持つ非常に効率的なテクノロジーに変身した。今後10 年間は、私は、パソコン、インターネット、ブロードバンド(広帯域)、ワイヤレス(無線)そしてインターネット機器が、全て一体となって、ニューエコノミーと称されるE-conomy の出現を加速させると予想している。

(中略)

つまるところ、テクノロジーはもはや景気循環型の産業ではない。この産業の基調にある需要の伸びは、現在、非常に堅調であり、どのような循環的な圧力も押え込んでいる

宇宙戦艦E-conomy はワープII へ発進第2 幕の始まり。

上述のように、現在、ハイテク革命の第2 段階にさしかかったと思う。ニューエコノミーでは、もっと「更に新しいもの(New New Thing )」が生まれるだろう。

景気循環や、インフレ率を加速させない失業率などオールドエコノミーのパラダイムにとらわれているエコノミストは、強い経済成長と低インフレが同時進行していることに、当惑し続けるだろう。彼らは、生産性を過少評価し続けるだろう。もし、彼らがスタートレックのカーク艦長に代わるよう命ぜられたら、宇宙戦艦エンタープライズ号をワープI では飛行できるかもしれないが、ワープII に発進したらどうしらたいいのか全く見当がつかない。

 

2000 年6 月19 日

世の中にはやはり二種類の人間しかいないと思う:

1) デジタル技術革命は世の中をニューエコノミーに変えていると考える前向きな人たち。

2) ニューエコノミ ー などというのは、ほとんど過大宣伝であり、技術革命はほとんどが株式相場のバブルと変わらないと考える後ろ向きの人たち。

最初のグループはそれを理解し、2 番目のグループはそれを理解しない。最初のグループは、ニューエコノミーは構造的に、オールドエコノミーの景気循環の影響を受けないと考えるデジタル人間で構成されており 、 第2 のグループは、変動は私たちの脳と集団行動にインプットされていると考えるほとんどがアナログ型性格の人間である。

アナログ型の人たちは、好況の後には必ず不況がやって来ると考えている。好調な経済成長、完全雇用そして繁栄はインフレ的であり、従って持続可能ではないと思い込んでいる 。 彼らにとって、近年の生産性の向上はさして重要ではない。彼らは、生産性の向上といっても、それはコンピュータ業界だけの話しだと片付けてしまう。そして、コンピュータ業界の生産性が向上したといっても、単に組み立て部門での話しである。アナログ信奉者によると、コンピュータが経済全体の生産性に大きな影響を与えるなどという現象は起こっていない。過去20 年間一貫してインフレ率が低下しているのは、主に一時的な“良性”の供給ショック、つまり1960 年代と1970 年代のベトナム戦争、アンチョビ不足、そしてOPEC が画策した石油ショックなどによるインフレショックの裏返しの現象でしかない。それ以降、私たちは単に幸運だったに過ぎない。

グリーンスパン対グリーンスパン:私は熱烈なデジタル派である。アラン・グリーンスパンFRB 議長も、時々ではあるが、デジタル派である。

(中略)

その後、つい先日の6 月13 日火曜日には、彼はニューエコノミ-に関してかつて無い程強気の発言をした。これは素晴らしい講演だった。その講演の前日、私は週報でこの問題について触れていたので、私は涙ぐむほど感激した。グリーンスパン氏は、ニューエコノミーの幾つかの重要な考え方をもろ手を上げて賛成している:

1)私も同じだが、彼は、1990 年代後半の生産性の向上は本物であり、持続可能であることを確信している:「全体的な生産性の向上の根底にあるものは、現在では、最も懐疑的な一部の人たちを除いて一般的に認めらている。」

2) 彼は、生産性の向上はハイテク・セクターだけに集中しているという考え方を退けた。彼は、もっと広範に影響が浸透していると考えている:「最も重要なことは、近年、経済全体で企業が非常に多くの情報技術の設備投資をしており、その結果、関連投資の拡大を通して生産性が向上した。

(中略)

4) 私と同様、彼は、ハイテク革命が初期段階にあり、生産性は今後さらに向上するだろうと考えている:

 

2000 年7 月24 日 

インターネットは革命的な新しい技術である。同時に、アウトソーシングを促進し、生産性の向上をもたらしていることは、私たちの時代には最大級の貢献といえる。具体的には、企業は最も利益率の高い事業に集中し、電子商取引市場を使ってそれ以外、例えば人材から法務まで外注する傾向が強まっている。もちろん、多くの企業はIT 関連業務をE コマース業者に外注している。IT はネット社会でますます重要な地位を占めているが、ほとんどの企業にとって社内で抱えるには負担が大きすぎる。

(中略)

私は楽観派、つまりディジタル革命論に組みしている。私は、アナログ思考論者(景気循環論者)は間違っていると思う。もちろん、肝心なことはFRB がどう考えているかである。私は、アラン・グリーンスパンFRB 議長は、生産性の改善が持続可能であり、米国経済がインフレなき成長を続けるという見方に傾いていると思う。6 月13 日の講演で、同氏はニューエコノミーについてかつて無いほど強気の発言をし、生産性の向上に貢献するニューエコノミーの考え方を支持すると述べた。これは、FRB が6 月28 日の金融政策会合で、金利据え置きの決定をしたことを裏付けるものである。利上げは今年末まで据え置きになる可能性がある。

生産性革命で投資家はどうしたらその恩恵を手にすることできるだろうか?市場の回答は明白である:ハイテク株の買いである。今年3 月から5 月にかけてドットコムなどのハイテク銘柄が急落したものの、S&P 500 におけるテクノロジー関連の割合は時価総額比で3 分の1 程ある。このセクターは6 月に目覚しい回復ぶりを示した。私は今後5 年から10年後には、テクノロジーの時価総額がS&P 500 の半分になると思う。

 

2000 年9 月25 日

私見では、ハードあるいはソフトのどちらかに一般化するのは難しい。現実に一部のセクターではすでに着陸済みである。また他のセクターは依然として高度飛行中である。

どちらか一方を選択するとしたら、オールドエコノミーはソフトランディング中であると見る。一方、ニューエコノミーは、高度飛行を続けると見る。業績については明らかにソフトランディングが進行中である。

(中略)

4) ハイテクは着陸なし:多くの投資家は、テクノロジー・セクターの保有比率を引き下げている。その理由は、ローテク・セクターにおける伸び率の鈍化は結局、ハイテク・セクターの売上および利益の低迷という形で反映されるというものである。私はこの見方には反対である。私は、ハイテク部門は急成長を続けると考える。ハイテク部門の8 月の生産高は、前年同期比53 %増となった。これは1994 年半ば以降の平均30%の伸び率よりも大き い ( 資料8)。

 

2000 年10 月2 日

ハイテクは非循環的 ?

しかし懸念することはない。非軍事資本財の実質出荷額を見るとよい。コンピューター、通信機器、半導体などのハイテクを中心に出荷が急増している。ハイテクに対して弱気論を唱える者は、オールドエコノミーの成長鈍化によって設備投資全体が低迷し、特にハイテク投資が打撃を受けると予想している。私はこの意見には反対だ。ローテク生産者の設備機器への投資額と稼働率との間には依然として若干の相関がある。しかし、ハイテク投資は、少なくとも過去5 年間はこの循環を無視する形で伸びてい る ( 資料4 と 5)。

化学、金属、住宅、自動車などローテク産業は成長鈍化を背景に、実際、生産性を高め、コストを削減するためIT 関連予算を増やしている。業績不振の中で、ますます競争が激しくなり、つまり価格低下圧力が高まっており、それを挽回するための唯一の方法がIT投資である。私は、ハイテク関連の設備投資は、業績不振の時は後送りされるようなローテク機器の投資とは性格が異なると見ている。私見では、ハイテク投資は後送りできない。

ハイテクに投資せよ、さもなくば死が待っている!

 

2000 年11 月6 日

設備投資:ハイテクは違う。経済活動全体のペースが鈍化しても、私はハイテク関連の設備投資が抑制されることはないと考える。もちろん従来、経済成長が鈍化すると設備能力の増強は不要になり、新規設備投資は常に延期あるいは中止されていた。しかし景気が減速する時こそ、競争力をさらに強化し、コストを削減し生産性を向上させるためのハイテク関連の設備投資が必要である

 

2001年12月4日

この分野にハイテク株暴落の影響はない:ゲートウェイの予想は確かにハイテク株には悪材料になったが、私は、ハイテク株の比率の大きいナスダックが最近、急落したほど、ハイテク産業の見通しは悪くはないと思う

(中略)

この結果から、IT 関連の設備投資は早いペースで拡大し続けており、今後12 ヶ月間は若干鈍化するものの、依然として二桁台のスピードで増加する公算が大きいことが理解できる

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注釈