映画評

五郎の 入り口に戻る
日付:2008/4/1
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1080 円-Part8 (Part7へ)

ウォンテッド-Wanted(2008/10/5)

予告編を観れば

「またまた出ました。平凡な僕にある日突然謎の組織から誘いが。そして車が走り弾丸が飛び交い美女がでてきてドンパチドンパチ」

だと思う。実際途中まではそういう話だし、私は「期待は950円だったが、まあ950円だな」と思いながら見続ける。

主人公は嫌な上司にいびられまくる情けないサラリーマン。友達と彼女には踏み台にされ、金もない。うう、身につまされる。観ていて胃が痛くなる。

そこへ現れた謎の美女アンジョリーナなんとか。だいぶ老けてちょっとシャープになったが、美人は美人だ。彼らは1000年前に結成され た「織物のお告げに従い、何も疑わずに暗殺を実行する集団」。そこでのしごきに音を上げかけた主人公は、自分の父が優秀な暗殺者であった事を知り、父と同じ道を歩もうとする。

こ こまでに重力の法則を無視してくれたり、弾丸がやたらと空中で衝突したり、能天気映画ということ十分承知している。それにしても何か変だ。織 物のお告げに疑問もたなくていいの?あなたのやりたい事って父と同じ道? などと考えているうち話は予想からずれていく。ずれてずれてどう落ち着くのかわからなくなる。そして「なんか変」と思ったのが 間違いでない事を知る。

でもまあ結局950円だよな、と思っていると驚きの展開が。アンジョリーナなんとかは単なる脇役というかストーリー上の踏み台だったのだ。意外にも話は最後に

「情けない主人公の姿を見て胃をキリキリさせていた」

観客である私のところに 戻ってくる。人によっては単なるハリウッド流ど派手映画ですませるのだろうが、今の私には最後の台詞はずどんと来た。だからこの値段にするわけだ。get the control of your life. しなければならない事をしている限り殴られ続けるだけ。したい事をするのがControl of your lifeか。自分が何者かを定義するのは所詮自分だ。ふってきたようなうまい話が自分を変えてくれるなんてことはあり得ない。やっぱり自分で努力しなくちゃ、とか映画の帰り道にあれこれ考えることになる

であれば、映画の前半延々と続いた主人公の情けない姿にもちゃんと意味があったのだとわかる。「NEXT 」もそうだったが、最近「ただのど派手映画」ですませないひとひねりある映画が出てきたのはうれしいことだ。他の人はどんな感想を持ったのか、とRotten tomatoesを観れば、そこででみつけた

"How can a movie about assassins be so... inspiring?"

暗殺団の映画なのに何故こんなに、、考えさせるんだろう?

という言葉に大いに共感する。あるいは

"What we've got here is the ultraviolent version of Harry Potter."

これは超バイオレンスバージョンのハリー・ポッターだ。

とか。

インディ・ジョーン ズ/クリスタル・スカルの王国- INDIANA JONES AND THE KINGDOM OF THE CRYSTAL SKULL(2008/6/26)

インディージョーンズである。あの音楽である。お約束である。間違っても映画の冒頭悪役がはなった弾丸でインディが絶命するなんてこと はない。様式美である。

と いうわけでご機嫌な気分でみていればよい。今度の敵はソビエト連邦。インディが年を取っている間に、ナチは壊滅し冷戦が始まり、米国は赤狩りに揺れてい た。マッカーシーは「米国の重要機関には共産主義者が山ほどいる」と偽りの脅威をでっちあげ無実の人を陥れたわけだが、この映画では実際にソ連軍部隊がた くさん米国内に侵入している。これは米国の恥ずべき過去に対するブラックジョークと思えばいいのだろうか。

映画は「ロズウェル事件」で米国が手に入れたものをソ連が奪いにくるところから始まる。はて、予告編では、ジャングルに何かを探しに いっているようだったがこれはどうしたことか、と思っているとちゃんと話はつながっていく。

三作目がつくられてから何年が経ったのだろう。その間につくられた「亜流」は山ほどあるが、本家はやはりできが違う。お約束とわかって いてもにやりとさせられる場面がてんこもり、時計など気にせず画面に釘付けである。

た だ、観ている側の期待が高まりすぎたせいか、あるいは久々の新作で息切れしたのか、「最後のどっかん」での落ちが今ひとつだったように思う。例 によって悪い奴らは最後を遂げるのだが、そのやられ方が「別にやられなくてもいいじゃん」というものなのだ。あるいは今回の「謎」の性格上ああならざるを 得なかっ たのかもしれないが。

インディの相棒はリーゼントに命をかける若者。剣をつきつけられても髪を整えるのが偉いぞ。どっかで見た顔を思えば、「トランスフォーマー 」 の人だった。映画自体のできが全然違うので、「をを。ちゃんとした役者だったのだな」などと感心する。ハリソンフォードはがんばっちゃいるが、やはり動き が今ひとつのような。。それゆえの若い相棒ということか。ヒロインは汚い格好をしているときはまあ昔の面影があるのだが、身ぎれいにすると、時の流れの厳 し さを思い知ることになる。ウクライナなまりの英語をしゃべりまくるソ連のお姉ちゃんは、まあロシアからつれてきたのかな、と観た後調べて驚いた。ケイト・ ブランシェットではないか。「ロード・オブ・ ザ・リン グ」の白い女神様と同一人物とはとても思えない。ううむ。偉大な役者とはすごいものだ。


チャーリー・ ウィルソンズ・ウォー- CHARLIE WILSON'S WAR(2008/6/19)

とある宣伝文句には「お気楽な主人公が世界を変えてしまう奇跡のドラマ」とあるが、そんな薄っぺらい話ではない。というか薄っぺらでな いのは映画ではなく、現実世界なのだ。

酒と女に目がない下院議員。パキスタン大統領との会見後アフガン難民キャンプを訪れ「アフガンに侵攻したソ連をなんとしても撃退する」 と決意する。帰国すると、有能なCIA職員の協力もえて、軍事予算を増額、アフガンに「ソ連製」兵器を大量に供給しだす。

映 画の冒頭でまず驚かされる。もし「奇跡のドラマ」だったら必ず最後に使われるであろうシーンがいきなりでてくるのだ。Chalie Did itという大きな垂れ幕とともに彼が表彰されている。しかしその場面におけるトムハンクスの複雑な表情の意味を観客が知るのは最後になってからである。

と いうか、2008年の今日みれば「アフガンにしこたま武器を届ける」というのは悪い冗談としか思えない。しかし映画の中の主人公たち、および米国の政治家 たちに迷いはない。悪の帝国ソ連を撃退する。そのためにアフガンの勇敢な戦士たちを助けるのだ。湾岸戦争の時も実感したが、アメリカは本当に戦争が好き だ。それに邁進しているとき、彼らは輝いている。彼らの「努力」が実を結び、アフガンから撤退するソ連軍をみて歓声を上げる。しかし現実世界は「正義が勝 ち、悪が負けた。Happy End」のように単純にはできていない。誰かが述べた通り、多くのひどい出来事はもともと善意から始まったのだ。戦争支援に巨額の予算をつぎこんだアメリ カは、学校をたてるための100万ドルの支出すら認めようとしない。


トム・ハンクスは冒頭の「複雑な笑顔」がすばらしい。ジュリ ア・ロバーツもちょっと狂信的な女性をうまく演じる。しかしなんといってもフィリップ・シーモア・ホフマン。というかクレジットをみるまでホフマンだとは 気がつかなかった。頭が切れるデブというのはまさにはまり役。

登場人物たちは何も直接的なことを語らず、観客に感じ、考えさせる。今日のアメリカが直面している問題。その原因をハリウッドスターが まじめに問う映画として、レッドフォード、ストリープ、クルーズの「大 いなる陰謀」よりもはるかに上出来である。

ミ スト-The Mist(2008/5/28)

後味の悪さと、それがいつまでも頭に残る度合いはピカ一である。特に主人公と同じく小さな子供を持つ身でこの映画を見るのはつらい。 しかしそれだけ見事に頭をゆさぶられたのだから、これ以下の値段をつけるわけにはいかない。

嵐が去った翌朝、なぜか湖の方から霧が迫ってくる。なんだろう?と思うが、とりあえずあれもこれも買わなきゃ、ということで近所のスーパーにいった父と 子。そこに頭から血を流した男が駆け込んできて叫ぶ「霧の中に何かいる!」と。

考えてみればスーパーマーケットはこうした場合に閉じこもる場所として適切だ。必要な小道具はそろっているし、トイレもある。さて外にいる得たいの知れな い物の正体は?しかしこの映画で一番恐ろしいのは閉じ込められた人々だ。

な んやかやと「恐ろしいこと」がおこるにつれ、神の裁きを頑なに説き続ける女性に賛同者が増えていく過程がいやな現実感をもって語られる。米国に存在するが あまり映画にでてこない特徴-超学歴社会であることや、私から見れば原理主義としか思えない宗教感が厳然と存在していること(日曜日の朝にやっている説教 の番組を見ればその様子がわかると思う)、嫌われ者の弁護士。それらが極限状態の中で噴出する様は見ていてつらくなる。途中何度も時計に目をやった。それ は退屈だからではなく、

「いつになったらこの地獄のような状況が終わるのか」

と思ったからである。それは登場人物たち(神の名において思考停止した人たちを除く)にも共通するものなのだ。

そ して映画が終わった後振り返れば、観客である私も、最後には希望をすてさってしまっていたことに気がつく。普通「ハリウッド映画」であれば、霧を発生させ た原因を爆破すれば、それですべてが平和な日常に戻る、なんて筋を予想するはずなのに。最後の瞬間に騎兵隊が現れると思うはずなのに。

名 のある俳優が出演しているわけでもなく、多くの場面はスーパーマーケットに固定されているからそんなに予算がかけられたわけでもないのだろう。しかしその 観客を引き込む力は圧倒的である。2度見たいとは決して思わないし、いまだに見なければよかったと思うが、映画としての力は認めなくてはならない。

ちなみに、お年を召した女性だが、多分私が好きなCheersでCliffの母親を演じていた女優さんだと思う。Cheersの最終回からだいぶ時間が たっているが、お元気そうな姿を拝見できてなにより。

ジェイン・オース ティンの読書会-The Jane Austen Book Club(2008/5/18)

この映画に関して言えば、宣伝コピーの「おしゃべり、ワイン、時々恋。これが女の読書会」が過不足なく内容を語っていると思う。

いきなり旦那に別居を宣言された女、その娘、友達二人、そのうちの一人がみつけてきた男性、フランスに行ったことがない高校のフランス 語教師。彼女達と彼 が、毎月一冊ずつオースチンの本を読み、わいわい語り合う。

それに合わせて「時々恋」が描かれる。別居を宣言された女の心に は、いつまでも旦那が残っている。その娘はレズビアンですぐ恋人ができる。and so on.

などとわいわい進む話は、完璧に女性向けと思うが不愉快なわけではない。ちなみに女性向け妄想全開映画では「女性にとって都合のいい 男」が必須だが、この映画では男性 もそれなりにちゃんと描かれている。つまり女性、男性どちらの妄想の産物でもないわけだ。

いや、ちょっとそれを逸脱しそうな場面もある。仏語教師は、ディカプリオ似の生徒とちょこちょこと。誰かの言葉だが、こうした女 教師が、かっこいい男子生徒をほにゃらら、とい うのは現実にはよく起こっていることなのではなかろうか。少なくとも反対の場合よりも、社会的リスクが少ないことは確かである。

し かしながら、不倫まっしぐらでどろどろしたのがいいのよ、といった雰囲気はCalifornia、Sacramentを舞台にしたこの映画には似合わな い。最後は楽しく話がまとまる。私に関して言えば、今まで何度か聞いたことのあった題名(複数)が、一人の人物によって書かれたものだったということを 知った事が 収穫か。とはいえ、一冊も読んでないし、なぜか一本の映画も見ていない。もし作品に関する知識があれば、読書会でかわされる会話がもっと楽しく聞けたので はないかと思う。というか、現実世界で、本をネタにしてあれだけ知的で活発な会話ができる集まりってあんまりないのではないか、と妙なことが気になる。

などとところどころ話の進め方に強引なところもあるが、「映画だから」で笑って許せる。かくして予想よりはご機嫌な気分になって映画館 をでることになる。

NEXT -ネクスト--Next(2008/5/1)

予告をどこかで観る。2分先まで予知できる男が核を持ったテロリストと戦う。ニコラスケイジ主演。ああ、別に特殊な能力など 無くても、見終わった時の自分の顔が見える。「予想通りだった」とため息をつきながら、560円にするか-1800円にするか考えているのだ。

さて、映画では私が事前に「予知」したことが残らず起こる。ニコラス・ケイジはFBI から「800万人の命を救うため協力しろ」と言われても素直にYesとは言わない。そりゃそうだ。そんなことしたらマイノリティ・レポートまっしぐらだも んね。とはいって も男はほれた女性には弱い。悪い奴らが彼女を巻き込んだものだから、ケイジは立ち上がり、そしてドンパチが始まるのであった。いや、2分後が見渡せる男は ほとんど無敵だ。

というわけなのだが、実はこの映画の「筋」は私の予想通りではない。物語は完結しないのだ。しかも後半ケイジの能 力がやたらすごくなり「話がいい加減になったか」と思いきや一応それなりに辻褄は合わせてある(2分制限には例外事項がある、と映画の最初から宣言さ れている)

同じような「映画の設定をうまくつかったひねり」はエンドロールにもあった。少し感心してそれを眺め続ける。もちろん終わってもなにも でない。でもまあいいか。予想は裏切られ、「予知した未来」よりも、少し私はご機嫌になっているのだから。

というわけで少し甘めに値段をつけてみたくもなるわけだ。ちなみにもう一つ感心したのは「女性にもてる方法」をケイジが実演してくれる こと。変な顔 で、頭が禿げかかっていても問題ない。少し過剰なほどに紳士的に、お行儀よく振る舞う事。相手を心からほめる事。ロマンチックな教養を身につけること。い や「ニコラス・ケイジ老けたなあ」と思っていたのが最後はそれなりに主役の顔にみえてくるのは少し驚きだった。ジュリアン・ムーアは、、老けたなあ。チョ イ役でコロンボことピーターフォークもでてくるが、これは余分な役としかいいようがない。ヒロインはなかなかいい感じ、と思えば「ステルス」の人だったか。

アメリカン・ギャ ングスター-American Gangster(2008/2/10)

予告編が実に良くできていたと思う。家族が並ぶテーブルでデンゼル・ワシントンが「我々は競合よりもよい製品を安く提供する。ビジネス に必要なのは Honesty, Family」と言う。彼の姿はまさにその言葉通りだ。

1960-70年代のアメリカ。ベトナム戦争は泥沼化し、南アジアで麻薬中毒になった帰還兵は膨大な「麻薬の需要」を生み出していた。 そこにデンゼル・ワ シントンが新しいビジネスモデルを打ち立てる。自ら麻薬の産地に乗り込み契約をまとめる。思いもつかないような「流通ルート」を確立し、「よりよい品質の 商品をより安く提供」する。これこそ起業家の鏡。アメリカンドリームではないか。

観ている側が思わず彼の姿に共感を覚えたとき、、彼が扱う「商品」によって殺された人たちの姿が短く、しかし鮮烈に挿入される。日曜日 に妻と母親と教会に 行き、ギャングと全く交際しない男であっても、麻薬を売る事で財を成している犯罪人であることにかわりはないのだ。

彼を追うのが「捜査の途中で1億円手にしながらそれを真正直に届けたことで、嫌われ者になった」ラッセル・クロウ。それくらい当時の警 察はマフィアと区別 のつかない腐敗した組織だったのだ。しかしこれがアメリカという国のすごいところと思うのだが、麻薬対策のために新たな組織 を作る。そこでは「本気で麻薬 犯 罪を撲滅することを」を目的とし、賄賂に目もくれなかったクロウはそこで腕を振るう事になるのだった。

この映画で惜しいところは2点。ワシントンに比べるとクロウ演じる警官の存在感がどうにも薄い。自分が離婚調停中なんだが女好きは止め られない。高校時代 の同級生は結構ギャング、とか一応描かれてはいるのだが、彼の複雑な性格が今ひとつ伝わってこない。

も う一点。前の点にも関係すると思うが、映画の終盤。「二大スターの激突」が今ひとつ盛り上がらないのだ。ワシントンが作りあげた帝国はベトナム戦争の集結 とともに崩壊し始める。しかしそれが一瞬で崩壊し、その後ワシントンが選ぶ道にはそれまでの重厚さ感じられない。結果として「ああ、もう ちょっと最後が締まっていたら」とため息をつきたくもなる。とはいってもラストシーンはいいと思うけどね。

などと惜しい点もあるが、2時間40分弱の長い映画なのに、それを全く感じさせないのはお見事。リドリー・スコットが監督というのはエ ンドロールで知った が。


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注釈

アメリカという国のすごいところ :この組織 が活動した結果当時のNew York市警の 1/3が有罪になったとかなんとか。こういう組織を本当に作ってしまうところがアメリカという国の強さと思う。これが日本だったら「誠に遺憾。綱紀粛正を 徹底する」と言いつつ頭をさげておしまいにしてしまうだろうに。戻る