映画評

五郎の 入り口に戻る
日付:2008/4/1
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ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い - THE HANGOVER (2010/7/4)

この映画のテーマは、最後の方にセリフででてくる。曰く

"息抜きが必要なんだよ”

結婚前に男だけで騒ごう、と仲良し3人+嫁の弟がラスベガスに行く。皆で乾杯した次のシーンはホテルのスイートルーム。いろんなものが散らばり、トイ レにはトラがいる。歯科医の歯は一本抜けているし、赤ちゃんの鳴き声がする。そして肝心の花婿(候補)の姿が見えない。ちょっと待て、昨日何をやったん だ?

そこから”探求の旅”が始める。手がかりをたぐってたぐってようやく前進したかと思えば、中国人のマフィアが襲ってくる。こいつらと何があったのか。

馬鹿なことを真面目にやらせると米国人の右にでるものはいない、と常日頃思っているが、この映画はそうした私の信条と見事に合致する。コメディと分 類される映画であり、上映中も笑い声が響くのだが、そういう馬鹿映画ほど真面目に作らなくてはならない。脚本はよく考えられており、最後まで結末は見えな い。

しかし最後の”まとめ”は実に綺麗にはまる。そこであらためて気がつく。登場人物はみな”ちゃんとした人たち”で、この映画はその人たちが、” ちょっと息抜きにハメを外した”騒ぎだったのだ。個人的には二枚目の小学校教師が、眠ってしまった子供をだっこしながら友達と会話するシーンが気に入っ た。

登場人物はみな好演しているが、ストリッパー役のヘザー・グラハムがキュートかつSexy。しかし彼女のヌードにキャーキャー言うようなお子様はすっこんでろ、の大人が観るべき映画である。日本では”出演者が無名だからヒットが見込めない”とかいうとんでもない理由で公開が流れそうになった、とのことだが、日本に映画を持ってくる人間は一度死んだほうがいいのではないか。米国でものすごく悪評のエアベンダーの宣伝なんかやってる場合じゃないだる。


インビクタス/負けざる者たち - INVICTUS (2010/2/6)

予告編を見る。ラグビーワールドカップまで一年というのに、南アフリカは国際試合で惨敗する。しかし話からして一年後には彼らが優勝するに決まっているのだ。

と いうわけで映画のお約束としてこんな話になるのだろう。まず人種対立があるが、それを乗り越える。鬼コーチが来てチームを鍛え直す。ワールドカップでは” 予想外”の快進撃を続ける。さあ、明日は決勝だ、というところで思わぬ問題が持ち上がる。案の定決勝は苦しい戦いとなる。しかし後半になり、チームの心が ひとつの奇跡を呼ぶ。そしてあのダメチームは奇跡の優勝を成し遂げるのであった。。

この映画にはそうした要素がひとつもない。秘訣もなければ必殺技もない。代わりに存在しているのは、ネルソン・マンデラである。おそらくこの映画の製作者は、その姿を真面目に、丁寧に描けば私が妄想したような映画のお約束事は不要だと考えたのだろう。

27 年自分を投獄した白人”ども”ではあるが、彼らは祖国を運営していくのに必要不可欠。マンデラは南アフリカの大統領として、私怨を超えたところ で天下と対峙している。そしてアパルトヘイトの象徴と思われていたラグビーチームの名前、カラーをそのままに、新しい南アフリカの象徴としてワールドカッ プ制覇を期待する。

モーガン・フリーマンの演技がすばらしい。みているうち

”これに引換え我が国の政治屋は”

と何度も思うことになる。

"I am the master of my fate:
I am the captain of my soul."

などと字面で見れば”ケッ”と思うが、27年投獄されそれでもくじけなかった人間の口からでればデイモンならずとも何かを考えるわけだ。(ちなみにこの詩はオクラホマシティ連邦ビル爆破事件で死刑になった犯人も遺書の中で引用したらしいが。)

かくして映画は実在の人物とシーンを映しながら静かに終わる。(映画らしいことは)何も起こらなかったのに何かを観客の心に残しながら。さすがはイーストウッドというべきか。

とほめながら、スタジアム上空を飛ぶ飛行機のシーンは、演出、映像ともに稚拙だった。あれはいったいなんだったのだろう。(元となる事実はあるらしいが)


カールじいさんの空飛ぶ家-UP (2009/12/19)

私はアニメーションの作画だのなんだのには関心をよせない人間だが、この映画の映像表現には素直に驚いた。やたらと空をとぶのだ が、下を見下ろしたとき、思わず◯◯が縮んだ。人間の顔も、デフォルメされているにもかかわらずとてもリアルだ。人間の顔をキャプチャすることに命をかけ ている某監督はこの映画を100回みて出直 すとよい。

すべての登場人物がとても生き生きとしている。特に印象深かったのは犬だ。しかられてしょんぼりと立ち去る後ろ姿。喜んで飛びついてく るところ。こう文字で書いてもなんのことかわからないだろうが

あと子供だけでなく大人も最後まで笑い声をあげていたのにも驚いた。子どもが笑うツボというのは確かに存在し、私などが寝かかっている 映画でも、そ のツボが登場すれば子供は笑う。しかしこの映画では大人も思わず吹き出すようなシーンがいくつかあった。というように構成要素には大いに驚かされたのだ が。

冒 険家にあこがれる少年が、廃屋で少女と出会う。そこから二人が結婚し、、、今や老人となった少年がひとりで家に座っているところまでが一切セリフなしで映 し出される。このシーケンスは見事(大人がちゃんと意味を読み取ると、結構つらいのだけど)立ち退きを命ぜられた老人は家ごと”伝説の滝”を目指 す。

2/3くらいまでは”これはどうなってしまうのか”とずっとわくわくさせる素晴らしいストーリーだった。しかし”悪役”がはっき りしてしまってからはは普通のハリウッド映画のようでがっかりした。いや、つまらないというわけではなないのだよ。それまでがあんまりわくわくだったもの だか ら”普通の悪役退治”に失望しただけで。

というわけで満点から少し割り引いてこの値段にするわけだが。

ここで話は少しそれる

今年のアカデミー賞でこの映画とぶつかるであろうポ ニョと の比較は興味深い。かたや3Dでかたやクラシックな手描きの絵で映像表現を極めようとしている。かたやハリウッド流の正統なストーリーを磨き極めようと し、かたやロジックだの思惑だのふっとばして監督個人の妄想全開ストーリーを作る。方向性の異なる二つのアプローチがそれぞれ花開かせるのを見 ることができるのは幸せなことだ。

南極料理人 (2009/10/9)

最近邦画に絶望している私がなぜこの映画をみたかと言えば、時間にあうのがこれだけだったからだ。しかしこの映画、いろんな場所でいつ までも上映しているな。

ペンギン、アザラシはもとより細菌すら生息できない南極のドームふじ基地。一年以上にわたって8人の隊員がそこに駐在する。ひょんなこ とからそこで調理を担当する事になった男が主人公。

後から振り返れば冒頭のシーンだけが飛び道具だったように思う(あるいは実際にあったことかもしれないが)しかしそれが脱力した結果に 終わるところからしてわかる通り、この映画にはとりたて筋が無い。強いてでっちあげるとすれば

”任務半ばにして緊急事態が隊員を襲う。南極料理人はこの危機を乗り切れるのか!”

ということになるが、その緊急事態とは

”夜中にラーメン食べる人が多いから、ラーメンがなくなりました”

というものだ。

か ように映画らしいイベントはないのだが、映画が終わる頃には、登場人物と同じように顔をしかめ、笑っている自分に気がつく。派手さは少しも無いが8人(+ 他の役者さん達)のむさくるしい男達は見事な演技をしていたのだろう。日本に役者はいないのか、など と言っていた自分の不明を恥じる。後でサイトを見れば、ほとんどが演劇出身の役者さんのようだ。日本映画に必ずでてくる(とこの映画をみるまでは思ってい た)誰かが泣き叫び、つまらない台詞をしゃべるシーンはこの映画に入りようが無い。いや、素晴らしい。

観ていて痛かったのは”遠距離恋愛”をしている男が電話でつれない応答をされるところ。記憶の奥底から”ああ、この受け答えは”という 声が聞こえる。そして頭の別の隅からは

”いいなあ”

という声が聞こえる。メールもなく、細かくあれこれ言われることもなく。ただ日々の暮らしと、仕事に直面する毎日。Mid Winter祭りには”こんなもの持っていっていたのか”と思うようなスーツ姿で神妙にディナーを食べる。映画の中でも環境になじめる男と、そうでない男 がでてくる。私は断然前者だ。独身のころだったら2年でも3年でもここ にいたいと思うがな。

そ んな日々もいつしか終わり、日常の風景が戻ってくる。コンビニで立ち読みをする生活が少しの違和感と、圧倒的な慣れをもってやって来、それとともに映画も 終わる。何がおもしろかったのかうまく書き表せないが、時間と金を費やしてみた価値は十分にあった、という満足感とともに。

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注釈