映画評

五郎の 入り口に戻る
日付:2014/7/1

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560 円-Part14(Part13へ | Part15へ)

インクレディブル・ファミリー:Incredibles 2 (2018/08/10)

今日の一言:日没後

完全に死んだと思ったPixarはリメンバー・ミーという傑作を世に送り出した。ひょっとして私は早まったのか?米国でのこの作品の評価は高いようだし。

というわけで期待とともに見始める。最初のディズニー城が映画にあったようにアレンジされているのはよい。あと前作に比べれば確かにCGの技術は格段に進化した。

他には..何があったか。正直見終わってから大して時間がたっていないのにほとんど忘れている。スーパーヒーロー禁止法案も気にせず暴れていたファミリーはやっぱり行動を禁止されるが、そこに救いの手が現れる。うん。これは絶対悪いやつだよねと思っているとやっぱりその通り。しかしその悪役の論理は悪くない。

「皆スーパーヒーローにたよって何もしない。スーパーヒーローは皆をダメにする」

「皆画面にあやつられている」(確かに現実の町をあるけば、手のひらの中の画面を見ている人ばかりだ)

この真っ当な「悪の論理」に「なるほど、そう来たか」という返しをするのがかつてのピクサーであり、マーベルシリーズ。しかし今のピクサーにそれは期待できない。結局悪いやつをやっつけ「全ては丸く収まりました」。おい、悪役の指摘は無視かよ。そうだ。ピクサーは死んだんだった。

そうした大枠もさることながら、全般的にテンポが悪く、時間の割に内容が薄い。無駄な要素をそぎ落としストーリーを磨く時間がなかったんじゃなかろうか。ブラッド・バード。お前こんなのでいいのか?それとも名前だしただけか?


バーフバリ 王の凱旋<完全版>:BAHUBALI 2: THE CONCLUSION (2018/06/10)

今日の一言:いつものインド映画

インド映画である。きっとインド美男がインド美女と派手にあれこれやるのだ。そう思ってほったらかしていたが、いつまでも上映している。これは見て置くべき、という声も聞こえてくる。というわけで、のこのこ観にいった。

どうも2部作らしく、映画の冒頭1作目のダイジェストが流れる。主役はコドモーフバリなのだが、先代のパパーフバリの話から始まるようだ。

そう思って見始めるのだが、これがものすごく長くいつまでもパパの話をやっている。途中で

「あれ?ひょっとしてこれパパの映画だったか?」

と不安になるほど。だってポスターに掲載されているのって、パパとパパの嫁さんなんだもの。

先に書いて置くが、小国の女王様が「おやすみなさいソング」を歌うところはよかった。インド美女が山のようにでてきてきらびやかに踊る。ここらへんはさすがに慣れているという気がする。

他の部分は、、ノリがわからなかった。シリアスな話ではなく、コメディではなく、王の偉大さに痺れる話ではなく、CGに驚嘆するわけでもない。あれかな。身をやつしていたパパーフバリがいきなり水戸黄門ばりに活躍するところに喝采を送ればいいのだろうか。

最後に川をどんぶらこと流れていく「黄金の像」のCGをみると、「ああ、予算と気力がつきたのだな」としか思えない。最後にコドモーフブリと悪の親玉がX-MENばりの超能力を駆使した殴り合いをやるのだが、なーんというかこの映画CG使わない方が面白いんじゃなかろうか。CGで売るにはチャチだし。

立場上裏切らなくてはならない老兵も「あー、そうすか」としか思えず、感情のままにわめきちらし「私の言葉は法律なのよ!」の国母はただの困ったおばさん。多分私は理屈でこの映画を見すぎているのだと思う。他の人がこの映画に見た面白さを感じる感性が欠落しているのだな。

強いて言えば肖像画だけででてきた「目力がたりない」女の人がでてくればなあ、と思う。というわけで、私はこの種の「派手なインド映画」にまた距離を置いてしまうのだろう。


サバービコン:SUBURBICON (2018/05/13)

今日の一言:最大の謎解きはエンドロールに

予告をみたとき、上部だけ平和な日常を装ったSF的なお話かと思った。ステップフォード・ワイフみたいに。

映画の冒頭、50年代のアメリカ人の憧れだった「郊外の美しい住宅地」の宣伝が流れる。白人ばかりのその街に黒人が引っ越してきて大騒ぎ。隣に住んでいるのが、マット・デイモンとジュリアンムーア(2役)の豪華夫婦+子供。ある晩その家に強盗が侵入する。よく知らないけど、強盗にはいられた家ってあんな風に対応するものなのか?

麻酔薬を過剰にかがされたデイモンの妻は亡くなってしまう。そのあともう一人のジュリアン・ムーアは髪をブロンドに染め、その家に住み着き。

というわけで、SFではないことに気がつく。これはバーン・アフター・リーディングと同系統の

「何をやっても状況が悪化するブラック・コメディ」

なのだな。しかし大して面白くない。真面目に見るにも滑稽に見るにも何か中途半端なのだ。

最もわからないのが「隣の黒人家族」。町の人たちは家を取り囲み、いやがらせを続ける。それをみていると「みんな暇だなあ」と思うが、当時の彼らにとっては自分たちの平和を脅かす一大事だったのだろう。それはそれとして、この黒人家族の戦いと、デイモン一家の騒動が全くリンクしない。最後にデイモン一家がぐちゃぐちゃになるのを、黒人家族の大騒ぎでごまかしたかのような設定があるが、うまく繋がっているとは言えない。

マット・デイモンは万里の長城で弓矢を振り回したり、本当に仕事を選ばないなあと思って観続ける。イヤな保険調査員がでてくる。妙に印象的だなと調べ驚いた。彼は、エクス・マキナのキレキレダンスCEOだ。今作でもそのいやらしさは素晴らしい。

となるととにかく出演者が豪華ということになる。なのにこの映画のつまらなさはどうしたことか。その謎はエンドロールで解けることになる。

監督がジョージ・クルーニーだった。

うん。どうもジョージクルニーってとってもいい人らしいんだよね。でもってこういうちょっと毒がある設定は彼には無理ではなかろうか。でもいい人だから、いい役者がそろったのだろう。(一人で納得)


15時17分、パリ行き :THE 15:17 TO PARIS(2018/03/21)

今日の一言:認知症 or 悟り

イーストウッドである。実際の事件を元にしている。ならば傑作に違いないと思い米国での評価を見ると驚くほど低い。これはどういうことか。しかしやはり観なければなるまい。

フランスの鉄道の中でテロを企てた男がいた。しかし「たまたま」乗りあわせ、近くに座っていた米国軍人にボコボコにされたというニュースは聞いていた。こうして改めて映画で見ると

「話にしても出来過ぎだよなあ」

と思う。フランスの電車でテロリストが銃を取り出したその近くに、米軍で救急医療と格闘技をマスターした軍人が座っているなんて脚本を見たら「もうちょっと考えな」というところ。しかしこれは事実だ。

というのは映画を見終わり、しばらくしてから考えたこと。

見ている最中は退屈でたまらなかった。本物の登場人物が演じている。素人にしてはよくやっていると思うが所詮そのレベル。学芸会よりはマシだが平凡。宮崎某も庵野に声優やらせていたが、年取るとこういうことがしたくなるのかな。しかしそれは些細な問題。

この映画の主軸は「青年3人のヨーロッパ旅行」なのだ。他人が撮ってきた「楽しい旅行の動画」を延々見せられる退屈さを思い出してほしい。100分を切った映画なのに体感時間は2時間を優に超える。

しかし

あとから考えてみると、主人公たちの子供の頃も必要だったし、ちゃんと伏線にもなっている。サバゲーで銃を撃ち合う子供達にちょっと眉をしかめたところで、大量殺戮を未然に防いだのは確かに彼らなのだ。こんなところで理屈ばかりこね回している私ではなく。ヨーロッパ旅行でも「不思議な偶然で乗り合わせた」ことは伺えるし、本当にそうなのだろう。つまり話としてはちゃんとできている。

仮に「役者」を使いヨーロッパ旅行をもう少し切り詰め、60分くらいにしたら名作たり得たのだろうか。実際の「戦闘場面」を真面目に、ちゃんと描くのはイーストウッドらしいと思うけど。


キングスマン:ゴールデン・サークル :KINGSMAN: THE GOLDEN CIRCLE(2018/01/13)

今日の一言:2作目

無茶苦茶で意外な傑作だった1作目。なのに2作目はやっぱりこうなっちゃうんだ。

映画の冒頭、下水道を通って帰宅した主人公が王女様にキスをねだるシーンがある。そこでもう退屈していた。懐かしい日本のエロ映画をみているかのようなテンポの悪さ。意味のわからなさ。

などと様々な点をあげつらい、この映画のダメさを分析してもあまり意味があるとは思えない。だからもう一つだけにする。合衆国大統領がトランプもどきのいやな奴。しかし漫画性という点で本物のトランプの足元にも及ばない。あんな立派なお手本があるのに、なぜそれを超えた漫画的人物を作れない。なーんてことを考えながら映画が終わる頃にはあくびを連発していた。

1作目のような無茶苦茶な傑作は、たぶん作った本人にも何がいいかわかっちゃいないんだろうなぁ。キックアス2もひどい出来だったし。あるいは1作目があたると、2作目には横から口出す奴が増えるのか。

というわけで印象に残ったことを挙げていこう。マークストロングが熱唱するカントリーロード(この死ぬ理由もどうしようもないがそれは問わない)それにエルトン・ジョンの怪演。そうとう歳をとったが相変わらずの変態ぶりでまことに結構。ジュリアンムーアは「私は世界で一番成功している女性CEOよ!」と叫び、これまたイカレっぷりがすばらしい。こう考えると個々の役者はいい仕事をしているんだけどなあ。


オリエント急行殺人事件:MURDER ON THE ORIENT EXPRESS(2017/12/09)

今日の一言:ヒゲ

冒頭ポアロが卵の茹で方、高さに異常にこだわるシーンが出てくる。そこでもう退屈していた。おまけにこの「異常なまでのこだわり」がその後全く効いてこないというのがダメ映画らしい。

誰もが結末を知っている物語を映画化するのはチャレンジングである。しかし去年TVでみた「そして誰もいなくなった」は見事な出来だった。だから困難だが不可能というわけではない。ではそもそもこの映画は何を目指したのか。ポアロを演じるケネス・ブラナーがいいかっこしたいだけではないのだろうか。

私でも知っている人たちが勢ぞろい。ジョニデが殺されあれこれ調べていくうち、単に乗り合わせただけと思われた乗客がみな一つの事件で繋がっていることを知る。なのだがとにかくガチャガチャとセリフが連なるばかりであくびが出そうになり、汽車が疾走するシーンのCGの安っぽさにうんざりする。

結末の場面では登場人物を最後の晩餐のように横一列に並べる。それはいいとして、なぜ「絶対犯人ではない」ふたりが銃を構えているのか。それだけで全体が安っぽくなる。考えてみればこの二人殺して窓から放り投げれば簡単に済んだ話ではなかろうか。いや、そうできないことはわかるのだけど、そうしてくれたほうがまだマシな映画になったのではないだろうか。

かくして印象に残ったのは、ポアロのいやらしいヒゲだけ。チャーリー・モルデカイを思い出しさらにげっとなる。続編作るらしいが、まあDVDでいいな。


ジャスティスリーグ:Justice League (2017/11/27)

今日の一言:コスプレ学芸会

ワンダーウーマンを除いてとにかく出来が悪いDC comicsの世界。今作もRotten Tomatoesで評価が悪いと知っていたから心の準備は万全である。

理由は知らないが昔三つの箱に別れて封じ込められた悪い奴が復活しようとしている。その手下が最初に襲撃するのがワンダーウーマンのお母ちゃんの世界。ああ、綺麗なお姉さん達があっというまに殺されてしまう。なんだかもったいない。でもってバットマンは仲間を探している。サイボーグとかいうお兄ちゃんは「この醜い姿がどうのこうの」といっているが、どう見てもむちゃくちゃかっこいいじゃないか。彼は時々自分でも理解ができない動きをするようなのだが、そこらへんもよくわからない。でもっていつの間にか箱の力を使ってスーパーマンを復活させることになる。わーい復活したと思っているとスーパーマンが暴れ出しその間に大事な箱をあっさり奪われてしまう。あのねえ。脚本というものはとても大事なものでね。

でもって最後は大げんかになるわけだが、この頃になると「うん。どうでもいいよね」と釈尊のような悟りを開いているので気にもならない。散々宣伝されていた恐ろしい悪役は結局「箱を引き離しました」で登場しない。唯一面白いと思ったのが「悪のザコどもは恐怖に反応する」という設定で敵の中ボスがやられるところか。

単独作品ではあれほど輝いていたワンダーウーマンもほとんど機能せず映画は平和なエンディングを迎える。というかこれを書いているのは見てから数日後なのだが内容がほとんど頭が消えている。このシリーズ、まだたくさん作るつもりらしいがどこかで考え直すべきではなかろうか。


ダンケルク :DUNKIRK(2017/8/31)

今日の一言:空を飛んでいるのはスピットファイア?いえ妖精さんです。

だからエンジンが止まった後もずっと飛び続け、Ju-87を撃墜したりできるのです。うふふふ。

息子が空軍に入るとなぜ親父まで敵機の攻撃方法に詳しくなるのか。そのレベルの細かいことを言い出したらきりがないから不問にするけど、最後のスピットファイアはまるでファンタジー。燃料切れの後も高度も失わずずーっと飛び続けおまけに重要な場面で敵機を撃墜したりしている。これは幻想の世界かな、と思っていると車輪を一生懸命手動で出すリアルな手続きを描くとかわけがわからない。

唯一「人間」を感じられたのは、負傷兵をみつけ担架にのせ、ズルしてようやくのりこんだ船の中で「ジャムつきパン」にかぶりつくところ。そこだけはよかった。

予算の関係とは思うけど、ヨット10隻来ただけで「故国が見える」とか言われてもねえ。あの船に満載しても200人も乗せられなさそう。なのにいつのまにか30万人脱出したことになってるし。最後に兵隊が有名なチャーチルのNever surrenderの演説を新聞記事から読み上げるのだが、彼らの表情から何を読み取ればいいのか。「またかよ!」か?少なくとも「今度はこっちの番だ!」ではなかったと思うが。

スピットファイア3機と、Me109(ただしエンジンは違う)1機を調達しJu-87とHe111はCGでなんとかしたか。(He111は模型らしい)その努力は理解するがドイツ機はスピットファイアの射線上をのんびり飛んでいる。まるで標的用の無人機のよう。この映画ではドイツ兵の顔が一切でてこない。前述の「ズル」以外にリアルな人間の姿を感じられない。

静寂につつまれた浜辺にJu-87のサイレン音が不気味に響く、とか予告編ではいい場面だったのだが、映画本編では分厚い映画音楽を被せてしまい台無しに。なぜこんなことをするのか。結果として

緊迫感:0
絶望感:0
悲壮感:0
切迫感:0

なんで兵隊さん達浜辺でたむろしてるんだろう、としか思えない。とにかく変な映画。最大の謎はなぜこれが欧米の評論家に評価されるのか、という点。


ハクソー・リッジ :HACKSAW RIDGE(2017/6/25)

今日の一言:神を讃えよ

パッションを作ったメル・ギブソン監督作品。全編から漂う気持ち悪さは彼の「厚い信仰心」によるものか。

エージェント・スミスは第一次世界大戦で従軍し、PTSDに苦しんでいる元米国兵。その子供兄弟は、殴り合いをするときレンガで相手を殴るような凶暴者。それがいきなり神への信仰に目覚め、銃は持たないし、週に1日は必ず休むけど衛生兵になることを志願する。

ここででてくる恋愛の都合のいいこと。まあ映画だからいいか。彼は念願かなって沖縄に行く。

この映画での日本兵は、「神を讃えるための小道具」でありゾンビのような存在でしかない。字幕では訳されてなかったが、彼らから見ると日本兵は"They are animal"なんだそうな。白昼堂々集団で走ってくるとかただの自殺行為だし、日本軍のバンザイ突撃はいつも夜に行われたんだがanimalだから気にしないんだろう。あとバカヤロー以外のセリフ思いつかなかったの?しかしメルギブソンの「僕のかんがえたさいきょうのおきなわせん」であっても、いろんな機関銃をずらりと揃えた米軍に、単発式の小銃で立ち向かうのは無理だよなあと思う。菜食主義だから肉の缶詰は食わない、とか贅沢言っていられるのも米軍ならでは。

宗教キチガイだろうが、猫だろうが仲間を守ってくれる存在であれば、何よりもありがたいのが戦場での心理というやつだろう。その事実は尊重するとして、映画自体はなんとも軽い。私が考えるダメ映画の特徴、意味のないスローモーションが頻出。にもかかわらず映画の冒頭

"True Story"

と表示される。Based on true storyでもなければ、Inspired by true storyでもない。最後に「本人たち」がでてくるのだが、映画での奥さんの美しさは5,800%増しである。この映画の称する"True"とはこれくらいに捉えておこう。

唯一光をはなっているのが、ガーフィールドの「気持ち悪い宗教キチガイの演技」画面にでてにやつくだけで、なんともいえないいやな雰囲気をまきちらす。この気持ち悪さは、彼の英雄的な行為をある程度現実的に見せてくれる。とはいえ映画の見所が「気持ち悪さ」だけ、というのもいかがなものか。


グレートウォール :長城/THE GREAT WALL(2017/4/16)

今日の一言:マットデイモン。自民解放軍入り

中国資本でハリウッド俳優を雇いましょうシリーズ。万里の長城は実は獣みたいなやつから中国を守るための壁でしたって、中国の北方に住んでいた民族は皆殺しかい。

最初の獣たちと城壁防衛軍の戦いは(ツッコミどころは満載にせよ)なかなか楽しい。主演女優は中華版剛力ことジン・ティエン。キングコングに比べればちゃんと出演させてもらってるし、やっぱりこういう格好のほうが似合うね。

子供の頃「中国が恋愛映画を作った」という記事を読んだ。出会った男女がお互い「四つの近代化」に燃えていることを知り、仲良くなるとかそんな筋。当時は「あの中国が」と話題だったのだろう。なんせ人民服着て毛沢東手帳振り回してたころだからね。

不幸にして中国映画の中身はその頃から進歩していないようだ。だからあくびしながら適当に見れば良い。しかし「そもそも何が起こっているのかわからない」のはなんとかしてもらえないだろうか。隊長がやられるところとか、どう罠をかけられたのかさっぱりわからない。しかも葬儀で「匈奴がどうの」とか歌っているし。それじゃ何か。匈奴ってあの獣たちか。

前半はイーモウらしい原色とかが綺麗だが、後半は予算と気力がつきたらしい。今思えば皇帝陛下がとんでもなく情けないところとか「だから共産党に任せなさい」とでも言いたかったか。かくして映画は平和なエンディングを迎える。後で調べれば中華スターがたくさんでてたらしいが、せめてそれぞれに見せ場を作ってあげるとよかったのではないかな。


キングコング:髑髏島の巨神 :KONG: SKULL ISLAND(2017/4/02)

今日の一言:平和な怪獣映画

ハリウッド版怪獣映画だから、平和なものである。シン・ゴジラのように緊張して見る必要はない。

ベトナム戦争の頃、南太平洋にそれまで知られていなかった島が見つかる。とにかく調査に行け。というわけで主導するのがジョン・グッドマン。この映画ではちょっと狂気が控えめ。完全に狂った役でもよかったと思うのだが。

それを護衛して行くベトナムあがりの軍人がサミュエル・L・ジャクソン。こちらは完璧に頭がいかれていてすばらしい。キングコングと正面から睨み合って負けない、なんてのはジャクソンにしかできまい。不幸にしてこの映画の見所はそこだけだった。

映画の冒頭中華ロゴがでる。その結果として映画の途中から唐突に中華女性が登場する。全く役にそぐわないかわい子ちゃん。しかしあれだね。バブル華やかなりし頃の日本でもここまではできなかった。松田聖子のBut I wanna go to shoppingなんて可愛いもの。彼女は最後黒人と仲良くなってるけど、黒人嫌いと言われる中国人的にあれでいいのか。今から考えればそれくらいしか頭に残るものがない。

ああ、そういえば巨大なゴリラもでて、トカゲのできそこないみたいなのと喧嘩してました。どうやらこのシリーズでなつかしの「ゴジラ・モスラ・ラドンにキングギドラ」をやるつもりらしいけど、まあ気が向いたら見ます。もと怪獣大好き少年だしね。しかしジャクソン死んじゃったからなあ。

事情により吹き替えで見たのだが、主役の女を佐々木希にやらせるのは無謀。まあどうでもいい役だから誰でもいいんだけど、とすっかり投げやりになっているのであった。


ジャック・リーチャー NEVER GO BACK:JACK REACHER: NEVER GO BACK(2017/1/25)

今日の一言:娘いらない

前作は意外によかったジャック・リーチャーの2作目。しかしなんですね。やっぱり続編は難しい。一作目は意外に(トムに失礼か)真面目な謎解きの過程にはらはらしたものだが。

1作目と同じく「正統派美人ではないが、妙に記憶に残る美人」は健在。というかトムのお相手って最近こういう人ばかりの気がする。古典的美人の嫁に逃げられた反動か。でもってそれだけでは今ひとつと思ったのか、今作には娘候補がつけ加わる。これが文字通りの蛇足となっている。

あーあ、絶対この弱点狙われるよなと思っていると、娘が期待通りバカなことをやる。最後には娘を人質にとった悪役がトムと相対する。いや、みんな彼女は死なないこと知ってるんだから、もっと捻るとか、そのアイディアがわかなければ短くするとかさ。やっぱり素直に娘全部切って短くしたほうがいい映画になったんじゃなかろうか。

米国の評判が今ひとつなことを知り、見に行かなかったのは今から思えば正解だった。さすがにもう作らないよね。


超高速参勤交代(2017/1/28)

今日の一言:時代劇の呪縛

参勤交代が終わり、国に帰ってやれやれと思ったら「5日後に江戸城来ないとお家おとりつぶし」と連絡が来る。藩の財政は火の車。さてどうしましょう、というドタバタ劇。

無茶な要求が来る背景とかそれなりによく考えられてはいるのだけど、どうしても時代劇の呪縛から逃れられていない。昼間っから装束に身を固めた忍者が大集結して型どおりの殺陣とか大仰にやられても今の観客はついていけないよ。 最後はこれまた時代劇恒例の「葵の御紋」で一件落着。そりゃ誰も死ななかったからいいけどそうやって開き直られてもねえ。

NHK大河ドラマの真田丸とか見ると、もうそろそろ新しい時代劇の形が提案されていもいいと思うんだ。それを目指したような雰囲気だけは感じられるけど。あとそれほど意味があるとも思えないセリフの繰り返しはなんとかならんものか。


マグニフィセント・セブン:THE MAGNIFICENT SEVEN(2017/1/28)

今日の一言:政治的には正しいけれど

七人の侍に、荒野の七人。両方とも傑作だけれどこの時代に作ろうと思えば何かと面倒な意見がでてくる。というわけでリーダーを黒人にし、メキシカンにアジア系、ネイティブアメリカンまでちゃんと揃えて七人にしました。というか七人のうち一人くらい女性にしたかったのではないかな。実際銃を振り回す女の子はでてくるが、なぜかそこで思いとどまったらしい。

過去2作で重要な要素になっていた「なぜ勝ち目のない戦を引き受ける気になったのか」がこの映画では明快でどうしようもない。農民たちは非力で自分たちの村以外何も知らない。それでも必死に自分たちの生活を守ろうとする心意気などはこの映画からカケラも感じることはできない。かくして「ポリティカリイ・コレクトネス」だけは高得点であとはどうしようもない映画が出来上がった。

へー、ガトリング銃ってこんなに威力あったんだ(棒読み)、とか塹壕掘って待ち構えている相手に正面から攻撃するのは自殺行為だとあれほど南北戦争で知ったはずなのに、とかツッッコミをいれるのも虚しい。っていうかあれか。本当に南北戦争の生き残りが指揮するとしたら、村の周りに塹壕を張り巡らすべきだったのか。どうせまともな映画になってないんだから、開き直ってなんでもありにしたほうがよかったんじゃなかろうか。悪い奴らが村に一歩も足を踏み入れることなく全滅とかさ。



ジェイソン・ボーン:JASON BOURNE(2017/1/28)

今日の一言:いつまで続けるのかな?

というわけでジェイソン・ボーンである。もう何年やってるんだ、このシリーズ。マットデイモンもさすがに老けた。それに比べればトミーリージョーンズは前から老けてるから差がないか。

前に何度か観たときは「結構いいじゃん」と思ったものだが、これはダメダメ。若き政府職員が野望に燃えて無茶苦茶なことをするし、トミーリージョーンズがそれに輪をかけて訳のわからないことをする。話の筋はぐちゃぐちゃ。「実はそうだったのか」が明らかになる面白さは微塵も存在していない。予告編での「一発で強そうな相手をノックアウト」はよかったけど、本編に埋もれるとなんてことないし。

売れている限りどこまでも続編が作られるのだろうけど、もうそろそろ成仏してもいいんではなかろうか。


キング・オブ・エジプト-GODS OF EGYPT(2016/10/24)

今日の一言:男性主役のアホ面

原題のほうが「神様たくさん出演」がわかっていいと思う。一神教ならありえないはずの複数形神様だから。古代エジプトでは人間と神様が一緒に住んでいました。でもって神様同士、家族で喧嘩をはじめました。

映画の冒頭、国王の戴冠式のシーンで鳥を使った「空飛ぶ船」がでてくる。なるほどこの映画は「監督が面白いと思うものならなんでもあり」というわけだな。というわけで退屈な小学2年生の話を延々と聞かされる。「あのね、わるいやつは うちゅうで 太陽をどうにかしているお父さんまでたおそうとするんだよ」とキラキラした目で言われてもこちらは「ああ、そう。すごいね」としかいいようがない。てんこ盛りで意味がないCGといい、どこかの映画評で読んだ「ハムナプトラの正当な後継者」というのが一番的確な表現のように思う。

その中で唯一印象に残るのが主役のアホづら。他は順当に「まあこいつ出しとけばいいだろう」という顔なのだが、この男のどこが米国人の観客にアピールするのだろう。体格も特に印象的ではないし、かといって「えっ、こんなひ弱な若者が」という驚きを狙ったとも思えないし。ジャックと天空の巨人にでていたニコラス・ホルトもこんな感じではあったから特定のアメリカ人には受けるのかもしれない。


カンフーパンダ3-Kung Fu Panda 3(2016/5/13)

今日の一言:かつて米国の3Dアニメはこれくらいだった

最近ディズニーの3Dアニメを見ると打ちひしがれることが多い。しかしこれは平和だ。

カンフーパンダの1と2は見ていないがそれがあんまり影響するような映画とも思えない。とにかくパンダがカンフーをする。でもってものすごく強い奴が現れ中国中の(違うか)達人をやっつけてまわるのであった。時同じくして主人公パンダは生き別れた父と出会い...

いかにもDreamworksといったいつものお話。だから適当に見ておけばよい。どうでもいい危機があり、どうでもいい出会いがあり、どうでもいい大逆転がある。そうだよ、かつてはこんなもんだったんだ。

いったいここからディズニーだけが異常な進化を遂げたのはどういうわけだったのだろう、とかそんなことを考えながら心静かに鑑賞する。見終わった後3分後にはほぼ頭から内容が消えていく。まあ早送り使わずに見られたからいいとしよう。


スノーホワイト/氷の王国-THE HUNTSMAN WINTER'S WAR(2016/10/24)

今日の一言:俳優の無駄遣い

私にとって意外によかったスノーホワイト続編である。とはいっても今回出っ歯の白雪姫はでてこないよ。

悪い女王には実は妹がいました。しかし彼女はある悲劇的な事件をきっかけにエリサ@アナ雪のように氷の国に閉じこもり、子供を拉致しては戦士に育て上げていました。でもってその主役二人が、頭空っぽ筋肉男の役ならまかせてくれのクリス・ヘムズワースと、おっと知性があふれちゃったのジェシカ・チャスティン。実年齢からすればチャスティンは相当無理をしているのだが、それをいえば悪い女王のシャーリーズ・セロンだってかなりCG化しているのではなかろうか。

でもってこの登場人物たちがあれこれ喧嘩をするのだが、ここにとりたてて筋を再現する気もしないし、もう忘れている。愛がどうのこうのと言っていたがエミリー・ブラント/シャーリーズ・セロンという私の中では最近の美人女優ツートップを無駄遣いしたという印象しか持ち得ない。
実はクライマックスの喧嘩シーンだけ映画館で見たのだが、その時
「なんだこの退屈さは」
と思った。飛行機の中で通してみてもその印象は変わらなかった。

想像するにこういうのは元となった企画の段階でダメ映画になっているので、誰が出ても救いようはないんだろうな。


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注釈