題名:巡り巡って

五郎の入り口に戻る

日付:2002/9/1


国際秘宝館:三重県(2002/8/13)

近鉄伊勢市駅で列車を降りる。出口こっち、という矢印に従ってあるいていったら、JRの改札に出た。さて、と思った瞬間自分が実に馬鹿な事をやったことにきがつく。今日の朝6時、めざめて少し荷造りをする。パソコンをもっていこうかいくまいか。でもなんだか眠いからきっともっていっても一字もかかないような。置いていこうと判断したのであった。おお、パソコンをもたないとこんなに軽いぞ、と自分の着想に感激していたのが少し前のこと。しかし私はおろかだった。今日の目的地にどうやって行ったらいいか、これはすべてサイトのぺージとしてパソコンの中に記録されているではないか。ここから私はどうすればいいのだ。

とはいっても自分の無駄な記憶力もたまにはやくにたってくれる。確かここから松阪方面のバスにのって、世古とかいうところにいけばいいはずだ。もしその名前が間違っていたら恥ずかしいけど聞きまくればなんとかなるだろう。

そう思ってバス停に行くと、世古という名前がちゃんとある。なんと。メジャーな停留所なのだろうか。とにかく見つかったので一安心。ほどなくバスがくる。(小型バスであるところを観ると、あまり人がのる路線ではないのだろうか)。このバスは世古、国際秘宝館前行きですなどとアナウンスがながれる。なんということだ。これは普通のバスであって、子供ものるのであろう。そこに堂々と国際秘宝館などといっていいいのだろうか。まあ子供は秘宝館なんたってなんのことかわからないだろうけど。

そこからバスにのることしばらく。行く手にあやしげな建物が見えてきた。道の右手に入り口があるようだから、道路を横断しなくちゃな、と思っていたらきっちりと右折して、秘宝館の駐車場で我々をおろしてくれた。またもやこの秘宝館は地元でバスの路線にまで影響を与えうるのかと考えたりする。

さて、時計をみればまだ9時前である。秘宝館がこんな朝早くからやっているわけはない。しかし私には一つ勝算があった。サイトであれこれしらべた限り、ここはドライブインのようになっているとのこと。であれば、きっと早くからレストランだかなにだかやっているだろう。秘宝館の空く時間までそこでまてばよろしい。

そう思ってみると確かにそれらしき店はある。しかし営業時間を観てがっかりした。9時からではないか。しょうがないなあとおもって秘宝館を観る。サイトにあった写真通りだが、シャッターには開店9時と書いてある。をを。なんといううれしい驚き。こんな朝早く秘宝館にくるとは馬鹿そのものと思っていたし、実際そうだと思うのだが、とにかくあと20分ほど待てば中に入れるのだ。

そう思うとぼんやりと腰を落としてまつ。そのうち駐車場に車が何台かはいってきた。人がおりるとシャッターを開けたり、あれこれしている。これはこのドライブインエリアの朝の出勤風景ではないか。なんだか珍しい物を観た。それがどうした、とも思うがとりあえず幸せな気分になってみる。

そのうち秘宝館のシャッターも開けられた。まだあの人が中をいろいろするのだろうからいきなりはいってもいかんだろう。だいたい9時前だと思いながら暇なのでそろそろと階段を上がっていく。入り口には鯨の性器がかざってある。その昔仙台で水族館にいったときも飾ってあった。くじらのちんちんというのは子供心にも理解できたが対になるものはなにやらさっぱりわからなかった。ここではついになるほうはなんとか見えるが、ちんちんのほうは完全に水槽が茶色くなっており何も見えない。

さて2回にあがるとあやしげな雰囲気がいきなり全快である。秘宝館のマスコットキャラであるおじさんのTシャツなど売っているが、一体誰が買うのだろう。券売り場とおぼしき場所には誰もいないからぼんやりとたっている。そのうちおばさんがでてきて、「あっ。ごめんねー」といった。私はおばさんが件売り場に戻ってくるのを待っていたら、おばさんは向こうのほうから

「2100円ね」

と声をかける。一時も油断はならない。

さて、中にはいるとあれこれの設定でもって人形が飾られている。アマゾネスやらヴァイキングやら。ヴァイキングとうものは日本では「ビッケ」とかいうアニメで妙にかわいいイメージを持たれているが、ろくな存在ではなかったのだろう。その次にはモンゴルの蛮行が描かれている。(もちろん秘宝館だからそういう方面の蛮行だが)ここらへんを観ているとお色気なにやらよりもどうも気が滅入ってきていけない。

そのうち有名人の蝋人形を作りました、という説明がでてくる。一体つくるのに350万円かかるのだそうな。でもってお姉さんが二人ならんでいるのだが、ひとりはソフィア・ローレンと名前がついており、顔はともかくあの頑丈そうな体格はさもありなん、という感じ。もう一人はだれに似せたつもりやらさっぱりわからない。似せるための苦労もいいのだけど、せめて誰か教えてくださいな。それでなくてもマネキンだか蝋人形だかの展示になんのキャプションもついておらず理解に苦しむものは多いのだから。クレオパトラにいいよっている男には「好色なシーザー」と説明がついているが、当時50前後だったシーザーもマネキンになるとただの若い男である。

館内のあちこちには「あと500m」とか掲示がある。そんな角をまがるとここは動物エリアとのこと。動物同士の後尾があるのはわかるが、ただの獣が単体で飾ってあったり、かなり前にとらえられた狐ともオオカミともつかぬ動物の剥製にいたっては、この秘宝館のコンセプトから逸脱しているのではないかと思う。ここらへん、熱海の「不思議な街一丁目」になんとなく雰囲気がにている。動物エリアが終わろうとするところで「ここらへんで一度振り返ってみてください。また別の風景が見えるはずです」とかなんとか書いてある。素直に振り返ってみたが別に何も見えない。

そのうち展示はだんだん妙な方に進んでいく。SMやら残酷な拷問の展示がある部屋には「お金がかかってます。寄付をお願い」とか書いてあるが、もちろん一円も払わない。入り口で渡された

「空くじ無し」

の福引き券があるのだが、角をまがったところで、いきなり太い女性の声で「お兄さん。ふくびき」と言われた。券を渡すと500円だせという。丁寧にお断りしたがまたもや太い声で

「話のネタになるよ」

と言われると言いしれぬ圧迫感を感じる。女性の排卵、整理の周期をグラフで示してあるのはいいのだが、そのうち「飲酒運転の危険性」を訴える看板とかでてくる。次には性病がこわいんですよーという展示が有るのはまあ少し秘宝館の路線にもどったのかもしれないが、「先天性梅毒の新生児」という展示にはちょっと背筋が寒くなる。あまり観ているとあそこが縮みあがってしまいそうだ。卵子が受精してから出産まで、お腹の中でどのように赤ちゃんが成長するか、という展示になるとのりは果てしなく医学知識に近い。その割には字はやたらと汚く学園祭の展示以下である。

そのうち一人でこうした異様な空間を歩いていることになんとなくプレッシャを感じてくる。通路はところどころはげかかっており、天井がめくれかかっている場所もある。暗い通路などに行くとなんとなく上から何かがふってくるようなそんな気分になる。角を曲がると扉があり「個室。自由にお使いください」とか書いてある。個室と書いてあるわりには中を観るとソファーがおいてあり数人ははいれそうだ。なぜかスキンの自動販売機がある。すっかり恐怖心にとりつかれた私はそこを覗くだけで入ったりはしない。その向かいでは「ピンク映画上映中」とかかいてある。はいってみると上映されているのはピンク映画ではなく、アダルトビデオである。ちょっと疲れていたので腰をおろしそれをしばらく観る。たくさんの椅子が並んでいるがいるのはもちろん私だけ。(というか入ってから例の抽選おばさんにしか会っていないのだ)ふときがつくとビデオを上映しているTVはなにやら舞台のようなものにのっている。かつてはこの上で本当に人がなにやらしたりもしたのかな。

少し休むとまたあ歩き出す。出口近くにはエイズの展示があり、これまた気が滅入るような内容だ。そこから少し歩くと出口になってしまった。これで2100円ということであれば、まあ熱海の秘宝館よりはいいか。そう思って外に出る。馬の交尾ショーもあるようだが、みるきにならない。3Dエロ映画とかいう矢印があるからそちらに歩いていくが、扉が閉まっている。

周りはゲームセンターのようになっている。驚いたのは客が結構いることだ。まだ朝だというのに。外に出てもっと驚いた。さっきまでがらがらだった駐車場に何台か車が止まっているのだ。まったく、他に何かもっと有意義な事はないのかねえ、と人に言っている場合ではない。

時計を観ると9時50分。さて、まずは伊勢市に戻るのだ。まだ今日行きたいところは二つある。

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注釈