題名:巡り巡って

五郎の入り口に戻る

日付:2002/10/17


延命山大秘殿-再挑戦:愛知県(2002/10/19)

-前回のあらすじ-

夏の暑い太陽に照らされながら男はひたすら歩き続ける。延命山大秘殿に行くために。しかし入り口にたった瞬間、その日が定休日で有る事を知り男は絶句するのだった。

「ええい、必ずあそこに行ってやるのだ」という理不尽な願望にとりつかれること幾日か。最初のTryから2ヶ月あまりたった10月19日、私は再び大秘殿の前に立ったのである。そして今回は問題なく営業している。

入場料は1000円。券を売ってくれたおじさんは言う。

「そこの階段を下りて右に行って下さい。回ってここに(今いる入り口を指す)でてきます」

言われた通り階段を下りるとぐおおおんという音とともにシャッターがあがる。どうやら私が今日初めての客なのだろうか。中に入ると天井が低い洞窟がくねくねと続く。宣伝によれば300mということなのだが結構どこまでも続く。その中に何が有るかと言えば、基本はこれである。

壁になにやら仏様関係の絵がかかれており、像がぽつぽつと置かれている。絵に描かれた人だか仏様だかの名前が書かれているがそれだけではさっぱりわからない。曲がるとまた絵があり、進むと絵がある。そのうち元来た方から「がらがら」と音がする。シャッターが閉まろうとしているのだ。

あれよあれよというまにシャッターは閉じてしまった。まるで安っぽい映画のノリである。これで進むしかなくなったなどとつぶやくが元々戻る気などないのである。

さて、洞窟は延々とくねくね進む。絵もたくさんあり、仏像もあるのだが、時々妙なものが説明もなしにでてくる。

ところどころの壁にこう書かれている。

「洞窟の闇は浮き世を示す。○○(不明)十界めぐりて出口のあかり輝かしき未来が見えてくる あかるくあかるく」

その意図はなんとなくわからないでもないが、腕に槍がささった頭上注意おじさんからいったい何を読みとれと言うのだ。まあこのおじさんは浮き世に徘徊する魑魅魍魎のたぐいと思えばいいのかもしれないが、ではこれはどう考えればいいのだ。

これと対になるものも確かにあるのだが、ではいわゆる秘宝館的なノリに走るかと言えばそうではない。結局なんなのかよくわからない。わからないままにもう2−3点並べてみよう。

皆目が微妙に怖い

後方は裸財天ということでまあいいのだが、手前のおばさんは一体なんだ。実はこのおばさんの人形は後でも何体か見てしまったのだがその正体についてはさっぱりわからない。

意図があるのかないのか。有るとすればそれは何かなどと頭をひねっているうちに広い部屋に出る。壁にはなにやらあやしげな男女の絵が描かれているが卑猥と言うわけでも残酷というわけでもない。洞窟にはいった瞬間から聞こえていた音楽(演歌だ)はなにやらラジオに出演したときのインタビューらしきものに変わっている。そこを曲がると洞窟巡りはおしまいで明るいところに出る。

角を曲がるとなにやら巨大な仏壇のようなものがあり、その前が畳で、その上に寝っ転がり天井に書かれた絵を見て「自分はこの中でどこに行くのだろう」と考えろ、と書かれている。いい年をした男がこんなところで寝ころんでいると本当に悟りを開いてしまいそうだしなによりばからしいので先に進む。やたらとでかい「日本一の料理の神様」の絵が飾ってある。「人間国宝と言われている」誰とやらの謹写とのこと。調べてみると旧一万円札の聖徳太子を描いた人とのこと。仕事の幅が広いなあ。

そこを過ぎると通路の両脇になにやら「先祖伝来のがらくた」がごろごろ置いてある。戦艦陸奥の写真があったり、天皇一家の絵があるのはまだわからないでもないのだが、人形が飾ってあるところにくるとここは単なるがらくた置き場では無いかという疑念が頭をよぎる。

いや、それは問うまい。下手に聞いて手前の赤ちゃん人形について熱く語られてしまったらどうしていいかわからない。そんなことを考えているうちに外に出る。ふと脇の机を見ると

「歴史資料館」という紙にかかれた文字が。なんと、ここはそう呼ばれるべき場所であったか。その先にはいくつか椅子とテーブルが置かれており受付のおじさんがお茶とお菓子を出してくれた。それを食べたり飲んだりしながら私の頭には一つの言葉が回り続ける。これで1000円?これで1000円?ふと気がつくと目の前にまた何か存在している。少しでも元をとるべく入ってみる。

正面に飾られているのは日本唯一のラマ教の仏様だそうな。その両脇にはなにやら立っているのだが、首から

「願かけ秘仏 女人の願い叶えます おなご寺」

という看板をぶら下げているのが気になる。振り返れば壁に怪しげな壁新聞のようなものが張ってある。それは小学生が造る壁新聞(最近もそうしたことをやっているのだろうか)より稚拙でなんともコメントがしがたいものだ。

そうですねえ。どうしたら成層圏「が」こすことができるんでしょうかねえ。とか言っている間に頭が痛くなってくる。

といったところで見物はおしまい。おみやげコーナーにある

「無病パンツ 祈祷済 1000円」

という看板に少し心が動くがもちろん買ったりはしない。外にある妙に写実的な(つまり情けない)乃木将軍の像など見ながら考える。ここは確かにいろいろな物を飾ってはいるが、どうにも感動に欠ける。そもそもまじめにやっているのか受けをねらっているのかもわからない。恐怖かお色気か、いずれの方向にせよ今ひとつ徹底した狂気が欠けている気がする。ああ、珍スポット、B級スポットであってさえもやはり道を究めるということは困難なことであるなあ。

おまけ:案内看板にある謎の「アーライヤ」像。今はそれらしきものは無い。(と思う)

前の章 | 次の章   | 一覧に戻る


注釈