題名:巡り巡って

五郎の入り口に戻る

日付:2003/1/28


布袋大仏:愛知県(2003/1/18)

名鉄の新名古屋駅から急行にのることしばらく、布袋という駅で降りる。以前勤めていた職場の仲間が毎年あつまって花見をやる場所はこの駅から東へ歩いて15分ほどの川辺。しかし今日の目的は桜ではないのだ。線路にそってひたすら北に歩き続ける。

なんどか利用した駅なのだが、こちらのほうを歩くのは初めて。古い街並みが残っている。ある酒屋などは映画にでてきそうなくらい古くて立派だ。そのうち立派な瓦屋根が見えてくる。お堂があるのだろう。でもあれではない。露天にお座りになっているはずなのだ。そう思い団地を通り過ぎたところでそれは行く手に唐突に現れる。

今日の目的地布袋大仏である。変な顔だがそれがかえってリアルさというか人間らしさを感じさせる。おっさんが渋い顔をしているかのように。額のあたりがひび割れているが気にしないことにしよう。

大仏の前に看板があり説明が書かれている。ここを作った前田氏は43才の時に夢のお告げをうけ私財を投げ打ち自分で作ってしまったとのこと。43といえば私とそう変わらぬ年ではないか。珍スポットを巡っている間はいいが、そのうち私も「天啓」を受けてしまうかもしれぬ。しかし土地がないと大仏を作りようもないなあ。

そんなことを考えながら裏に廻ってみる。大仏と同色に塗られた建物と背中が一体化しており、建物には「大佛治療院」なる看板がかけられている。あれ?他のサイトではここは「教会」となっていたぞ。後で勇気をふるって扉をあけてみたところ、「マッサージ・あんま」という文字が書かれた病院の受付らしきエリアがあり、その先に広い部屋が見えた。あら、本当に治療院だと思い中にはいったりはしなかったが。

ふと気がつくとこの入り口それに大仏の裾あたりには豆電球がつけられていることに気がつく。

最初はこのあたりの桜が咲いたころにつける物かと思っていたがどうにも位置が合わない。これは単にこの治療院および大仏を装飾するたものものではなかろうか。夜に来るとぴかぴかと鮮やかなのだろう。

あたりをぐるっとまわってみる。周りは普通の住宅街である。普通の民家の屋根からいきなり大仏の後頭部が見える。

別の角度からは他のサイトでみたような「大仏 住宅街に出現」のような光景をみることができる。

歩きながらあれこれ考える。隣の住人がいきなり自分の家の敷地に大仏を作り出したら周りの人間はたいてい驚くに違いない。しかし良いこともある。どんな相手にでも

「うち?大仏の隣」

といえばすぐ解ってもらえるだろう。昔小学校の頃家庭訪問というものがあった。訪問にきた先生を次の生徒の家まで送っていくことになっており、

「さてあの男はどこに住んでいるのか」

と悩んだこともあった。そんなときも大仏さえ居れば心強い。そんなことを考えていたのはどこか郷愁を誘う街並みに影響されてのことだったかもしれない。

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注釈