題名:巡り巡って

五郎の入り口に戻る

日付:2003/5/18


深川えんま堂 : 東京都(2003/5/3)

渋谷から地下鉄にのり門前仲町というところで降りる。地上にでるとてくてく歩く。今日はとてもよい天気だ。暑くなく寒くなく外をふらふら歩くには大変格好の季節である。

そのうち瓦がのった建物が見えてきた。壁がずっと続いている。なーんだろうな。目的地はまだかいな、と思っているうち、その壁が突然とぎれ雰囲気ががらっと変わった屋根が見える。

入り口をくぐれば正面になにやらコンクリート製の建物があり、左手には本日の目的地、深川えんま堂がある。

さて、えんま様はどこだ、と思うと正面にプラスティックの扉があり、左右にひらくようになっている。そこにはこう書かれている。

文末の「”」はいったい何の記号なのだろうか。お賽銭を入れると「おえんま様」がお話をしてくれるという。ここではえんまに「様」だけではなく「お」がつくのか。それはいいとしても「おえんま様」は「どうぞ宜しくね”」と語るのであるか。妙に優しいというかどことなく女性っぽいというか。絶対本当にね”とまで念を押すところをみると「おえんま様」は心配性なのか、あるいは結構ねちっこい性格なのか。

などと妄想をふくらましていてもしょうがない。お話を聞いてみようではないか、ということでとびらを開ける。中には”おえんま様”がお座りになっている。

これが「日本最大の閻魔大王座像(全高3.5メートル)」である。その前には各種願い事を書いた口がある。「交通安全」「家内安全」などから「いじめ除け」「うそ封じ」「浮気封じ」などという口もある。その数18個。さて、どこから聞いてみようか、と考えながら財布を取り出す。握りしめているのは1円玉。おえんま様が述べる内容もあれこれあるというからな。控えめにしなくちゃ。

えい、っと放り込んでみるが何事もおきない。あら、故障でもしているのかな、と今度は10円玉を放り込む。「うそ封じ」の穴にだ。するとやおら

「パチパチ」

という音と共にフラッシュが点滅しだす。低く太い声でおえんま様が語り出す。聞いていて思う。なんだ、これは「うそ封じ」とは何の関係もない内容ではないか。「信心とは。。。」とかなんとか仏教関係でいかにも聞きそうなお話だ。「嘘つくと舌ぬいちゃうよーん」とか何とか言うと思っていたのに。

ではもう一度、と「浮気封じ」に10円玉を放り込む。すると「どーん」という荘厳な音が響き「物事は受け取り方次第。。。」とまたもや声が響く。「浮気封じ」だから

「己の顔を鏡で見、なぜ相方が浮気するか考えろ」

とでも言うかと思ったのに。どうもこの18個の口はすぐ下でつながっており、どこからお賽銭が放り込まれたかには関係がないのではなかろうか。(確信はないが)

今度はどんな演出が見られるかと思い10円玉を放り込む(どの口に放り込んだが忘れた。もうどうでもよい)謙虚であることが大事、とかとにかくそんなお言葉が進むにつれて壁にスポットライトが投影されゆっくり動く。もう一回、と10円玉を放り込めばまたフラッシュがパチパチと点滅する(一回目のと同じ)なにやら語っているがもはやろくに聞いていない。言葉が終わってもフラッシュが点滅したまま。まだお言葉があるかと思って待っていればそのうち点滅が止まる。うむ。フェイントであったか。

ここでふと気がつく。私は普段めったにお賽銭を出さない男なのに、ここではすでに41円も使っているではないか。あな恐ろしや。これがハイテクえんま様の威力なのか。これはそろそろ退散しなくては、と思いはっと気がつく。扉を閉めなくてはおえんま様に怒られるではないか。丁寧に扉を閉めるとそそくさと立ち去る。

おまけ:正面の建物にあった仏様。ちょっと左下向き。

前の章 | 次の章   | 一覧に戻る


注釈