題名:巡り巡って

五郎の入り口に戻る

日付:2004/6/13


公時神社 : 神奈川県足柄下郡(2004/5/29)

戸塚から東海道線にのり国府津でおりる。御殿場線に乗り換えるとしばらく揺られる。御殿場に近づくにつれいろいろと怪しげな物がでてくる。たとえば金太郎桜があり、隣の足柄駅には「あしがらやまの金太郎生誕地 小川町」と大きく書かれた看板がでてくる。そもそも金太郎というのが実在したかどうかも怪しいというのに。

というわけで御殿場につく。私が20代の頃仕事でよくこの駅にきた。そのころから比べると駅前は見違えるように綺麗になっている。しかし忌まわしい思い出は消えていない。仕事で使うということは多くの場合怒られにいくためにこの駅を通ったのだ。しかし今日はそんな思いにとらわれている場合ではない。

バス、と書かれたほうに向かい、時刻表を観るとがびん、となる。今は12時過ぎなのだが15時過ぎまでバスがないことになっているではないか。おかしい。インターネットで調べたときは結構本数がありそうだったのに。。どうしよう。映画でも観て時間をつぶそうかと思うが上映しているのは既に観てしまい二度と見る気がしない映画。困ったなあ。貴重な一日を無駄にしてしまったではないか。

しばし呆然とするがそのうち一つの可能性が頭をよぎる。ひょっとしたら反対側の入り口に別のバス停があるのではなかろうか。わらにもすがる思いで反対側に向かう。するとあるではないか。それどころか今正にバスが到着したところである。やれうれしや。690円払うと乗り込む。乗客は私より少し年上の女性ばかりだ。一体なんの団体なのだろう。

走り始めたバスの外を見てしばし仰天する。箱根に向かう方向らしいのだが、とにかく怪しげな名前の博物館やら美術館やらそんなものばかりである。フェラーリ美術館、3D恐竜なんたら。あやしげな物が大好きな私としては、かたっぱしから回りたい衝動に駆られるがそんなことをしていたらいつまでたってもここから出られなくなる可能性がある。黙って乗っているとそのうち目的のバス停についた。なにやらあやしげな土産物屋があり、こんなものがある。

とりあえず写真はとったものの、今日の目的地はどこだ。勘を頼りになにやら建物の有る方に向かう。するとほどなく鳥居が見えてきた。ここだろう。

近づいていけば立派な神社がある。

説明の看板によれば

「御祭神は坂田公時。平安後期の武将源頼光の四天王の一人と言われた。幼名を金太郎といい、怪力の持ち主で熊と相撲をとったと童謡にある。(中略)金太郎伝説に関わる事物として宿石、菜畑、蹴落石、手鞠石、鯉が渕、姥子などがある。」

とのこと。その左脇にはこんなものがある。

平成6年奉納、石製のまさかりである。まだ10年しかたっていないから表面もつるつるだ。物が物だけに奉納されたのは5月5日。思ったより小さいがそれでも振り回すのは無理だろう。さて、まだ目的は先にあるはず、と思い登山道にはいる。某サイトにあった情報によれば、こここから20分ほど行ったところに奥の院があり、そこにもっと古いまさかりがあるらしいのだ。

時計を観、時間を覚えて歩き出す。しかしそのうちここがとても厳しい山道であることに気がつく。「登る」というより「よじ登る」という表現のほうがぴったりくる感じだ。いつもは

「体重をあと10kg落とさなくては」

と思うのだが、今日は20kg位お歳、筋肉を3倍くらいにする必要を感じる。そのうちこんなものが見えてきた。

「金時蹴落石」である。そりゃたしかにこれを蹴飛ばす人間は力持ちだろうけど、さっきのまさかり振り回すくらいではこれは動かんと思うぞ。写真を撮ると先を急ぐ、とはいっても既によれよれである。上からは小さな子供とか女性とかも降りてくるが皆この道を頂上まで登ったのだろうか。

しばらく行くと今度は「金太郎宿石」とかいうこれまた巨大な岩がでてきた。後で調べれば金太郎が山姥と住んでいたところらしい。とりあえず写真を撮るが巨大な割れた石という以外書くことはない。

それよりもこの石を回避するために道がさらに険しくなっているのがつらい。両手両足を使いながらなんとかのぼる。なんだかのどが渇いてきたな。まあ目的地につくまで我慢だ、などと考えているがいつまで登っても奥の院は見えてこない。じぐざぐになった道を曲がるたびに何か見えぬかと思うのだが何もない。時計を観れば30分以上は経過している。ひょうっとすると通り過ぎてしまったのか。足が重くなるにつれその思いが強くなる。道はと言えばずっとこんな調子だ。

そのとき私の意志をくじくがごとく、空が曇ってきた。こんな山道とはつゆ知らず何も持たないのも同然の私が雨に降られたらお陀仏である。と自分に言い聞かせる理由を思いつき、あっさり諦め帰ることにした。下りは登りよりは楽だが鼻歌交じりとは言えない。何度も滑ってころびそうになった。足はよれよれしているがとにかく転ばずに戻ってこれたのは幸運だったか。

帰りのバスに乗るとまたもや怪しげな博物館美術館のオンパレードである。しかし今やとりあえず足を休めることしか頭にない。ああ、文明の利器って素敵。こうやって座っているだけで前に進むんだもんなあ。

帰ってから奥の院の場所を調べれば、なんと金時宿り石の手前、私が参考にしていたサイトに書いてあった「左」ではなく、登っていく方から観れば「右」側にあったそうな。ええい、悔しいと思うがもう一度は行かんだろうなあ。でも標識ってあったかしら。

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注釈