題名:巡り巡って

五郎の入り口に戻る

日付:2004/8/6


北の京芦別-北海道大観音-十二支編:北海道芦別市(2004/7/17-18)

夕張からさらに北上を続ける。ラベンダーで有名な富良野も近くに有るらしいがあるが、それには目もくれない。芦別という市に入るとカーナビの指示に従い走り続ける。橋を渡れ、というからそちらにいったらその橋は閉鎖されており、おまけにパトカーまでいた。しょうがないから引き返す。

別の道ということで今度は立派な橋を渡る。そして橋の向こうには今日の目的地が見えていた。

北の京芦別である。既にこの写真からそのただならぬ雰囲気が伺える。珍寺大道場によると、ここは元々健康ランドからスタートしたらしいのだが、大観音を建設、さらには宿泊施設として三十三間堂、五重塔を増築してよく分からない場所になったらしい。そう考えれば、入り口に立ったとき感じるこの強烈なインパクトにも説明がつこうというものである。

中央に輝く星、そしてその回りに広がる何風ともとれる建物、そして左に視線を移せば五重塔と三十三間堂が広がっている。わーいわーいと狂喜していた私だが、中に入るとこれまた楽しい世界が広がっているのだった。

正面には一階へ通じる階段があり、2種類のお風呂が文字で説明されている。そして壁にはよくわからない肖像画が並んでいるのだった。ある一角にはピアノやらクラシックカーまでも並んでおり、「ここはどこ。私は誰」の雰囲気を醸し出している。

などと感動している私を従業員の人が先導して部屋まで連れて行ってくれる。晩ご飯はここ、朝ご飯はここ、と説明を聞きながらも部屋に入って驚愕した。もしかしたら私が知らないだけで世の中では一般的な事なのかもしれない。しかし私は初めてお目にかかったのだ。

ヘリは紛う方無き畳だが、その表面は絨毯。ちなみに画像の真ん中やや右よりに見えるのはニジュウヤホシテントウの死骸である。

さて、と着替えて見物にでかけることにする。そのとき私はあることに気がついていた。ここの館内は何故か空気がよどんでいる。平たく言えば何か妙な匂いがする。部屋には空気清浄のため、と称して炭かなにか置いてあるのだが、とてもそんなものではおいつかない。というわけで不思議なことだが外の方がさわやか、という状況だ。しかしそのときはまだそれが何を意味するのかわかっていなかった。

ちなみに私が泊まる部屋は五重塔の方である。ホテルエンパイヤが復活するとは思えない今、五重塔に泊まるなんてことができるのは全国でここだけかもしれん。そう思うが中に入ってしまえばどうということはない。などと考えながらカメラを持ち、まず五重塔最上階に登ってみる。

エレベーターを降りるといきなりこんなのが出迎えてくれる。ぐるっと回ってみると階段を上ったところに日本全国五重塔の写真と共に像がごろごろ並んでいる。これなどどこか広隆寺の像を思わせる格好だが色が綺麗だとなんだかありがたみに欠ける。

ここにはかつて喫茶室-Japanese Tea roomがあったらしいのだが、閉鎖されている。少し薄暗くなってきているのだが、照明もついていない。

そこから降りると今度は三十三間堂に向かう。はいってすぐのところにいきなり甲冑がごろごろ並んでいる。どうも十二支それぞれ生まれの武将のものを模しているらしいのだが。

真田幸村のものを見つけるとその前でしばしたたずむ。彼は中年の守護聖人であると私は勝手に決めつけているのだ。そこから左右に続いていく廊下は絢爛豪華である。左右の壁には何かの像が飾ってある。

次に外に出てみる。十二支なんとかいうのが日本庭園に存在している。

順路とおぼしきほうから鳥居をくぐり続ける。ここらへんになるとこの場所が十二支にただならぬ思い入れを持っていることがわかってくる。鳥居には干支がかかれているのだ。

その先には周りを十二の何かにかこまれた建物がある。回りにあるのはたとえば卯年だったらこんな像だ。

人参が赤くなっているところが素敵である。中央建物の一階にはなんだかよくわからないものが展示されいるが二階には聖徳太子がいる。そのまわりにまた十二個の拝観場所があり、そこに立つと聖徳太子がそちらを向いて鐘を鳴らしてくれるのだそうな。実はこの日は行きそびれてしまい、翌日の早朝行ったのだが、時間が早かったせいかあるいは他の理由か、とにかく聖徳太子は動いてくれなかったが。

さて館内に戻るとまずはお風呂である。日本庭園と称するそのお風呂の中にはきっちりと大観音(小型版)が立っている。しかし全体にどことなくぬったりとしており(造語なのだがあの場所の雰囲気を表すにはこの言葉しか思い当たらない)どうにも「お風呂にはいって綺麗さっぱり」という気分にはなれない。

一旦部屋に帰ると今度は夕食だ。ここであることを思い出す。建物に入ると何か妙な匂いがすることはままある。そういう場所で食べたものがおいしかった試しが無いのである。その個人的な法則に従えば今日の夕飯はどうなるのであろう。多大の不安とともに指定された大広間に向かう。大坪様とかかれた場所に座ると紙に覆われたあれこれがある。いわゆる一般的な旅館の食事で少しの刺身とあれこれ皿の数があり、火をつける小さな鍋がある。まず刺身に箸を付ける。なんだかぬたーっとしている。いや、これは私の先入観によるものかもしれない。現に隣に座ったお年寄りの集団は「ごちそうごちそう」と喜んでいるのだ。

次に他の皿に箸を付ける。こちらも冷めている、というのではなく、暑くも冷たくもない。そしてやはりぬたーっとしている。これはどうしたことか。確かにこの部屋には異様な匂いが充満しているのだが、それと何の関係があるのだ。こうなるとぬたーっとするはずのない鍋でさえ箸をつけるのがいやになってくる。

というわけで数口食べただけで退散する。帰り道「食べる場所はどこだ?」と探している人たちをたくさん見つけた。増築を繰り返したせいか、ここの構造は決して簡単ではない。おまけにここに泊まっている間「自分は若者ではないか」と錯覚したほど泊まり客には腰が曲がった人が多い。繁盛していない、という記述もネットで見かけたが、なかなかどうして大盛況である。

その後はお祭り広場で歌謡ショーを観た。名も知らぬ女性が演歌やらあれこれ歌ってくれる。曲の間に何かしゃべるのだが

「あたし直美って名前だからあまりあだなつけられなくて。でも「かえる」って言われてたことがあるんです。そしたらおみやげがかえるの耳かきばかりになって」

とかそんなことをずっと言っている。果たして客席の1/4を埋めたお客さん達は喜んでいるのだろうか。左の方にはラーメンやらおでんの屋台の店がある。このショーをみてあの屋台で食事をしてくれる人はいるのだろうか。

30分ほどでそのお姉さんはひっこみ演歌のお姉さんがでてきた。私は席を立ち部屋に戻る。しばらくテレビを観た後電気を消す。絨毯表の畳の上、異様な匂いに囲まれて。ここには網戸がないから窓を開けることができない。北海道の夜は涼しいはずなのだが。さて、明日は大観音だ。

おまけ:日本庭園にあった鯉の餌自動販売機

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注釈