題名:巡り巡って

五郎の入り口に戻る

日付:2005/3/23


鷹取山の磨崖仏その2:神奈川県(2005/3/5)

前回までのあらすじ:鷹取山に二つの磨崖仏があると聞いた男はさっそくでかけ山中を探し回る。最初の仏像は簡単に見つかったが二つ目は見つからない。歩き回ること数時間、疲れ果てて断念する。いや、必ずあるはずだ、と再度チャレンジするがやはり見つからないのであった。

どこにあったのかなぁ、と頭の端に摩崖仏の事がひっかかってはいるが、3度目のチャレンジをする気力もおきない。そんなある日有る方からメールをもらった。その方も随分と苦労して探し当てたという。丁寧な行きかたの説明と地図まで送っていただけだ。ううむ。そんなところにあったか。

というわけで3月の晴れた土曜日、私は京浜急行に乗る。追浜という駅で降りると裏手の病院の方に向かう、、という道もさすがに3度目だから慣れた、などと思っていると道がよくわからなくなる。何時来てもどれが最適経路だかわからない。とにかく鷹取山の入り口についた。

前二回はここから階段を上っていった。すると次に来るのがかなりな登りと下りの連続である。最初は「珍スポット巡りに坂はつきもの」とか考えているのだが、そのうち下り坂が恨めしくなってくる。せっかく得た高度を失ってしまったと。

というわけでここで右に曲がる。もし私の勘が正しければ、こちらのほうにはもう少し登りやすい道があり、今日の目的地もその近くにあるはずなのだ。

年を取るとこうやって楽をすることばかり考えるなあなどと歩いていくがなかなか入り口が見つからない。これは「楽をしようとして結局損をした」というパターンであろうか。しかし今から戻ってまたあの上り下りはいやだなあ。などと歩くことしばらく。幸いにして入り口が見えてきた。ここからは舗装された緩やかな登りが続いている。ああ、楽だ。

てくてく登っていくと右手に「何か」があるのに気がつく。よく見れば人が通った跡があり、道ができているようだ。

もしや、と思いそちらに進んでみる。するとしばらくして見えてきた。

これが珍寺大道場で言うところの「インディーズ摩崖仏」である。よく観れば、この仏像のバックは港横浜の風景ではなかろうか。

その正面には少しくぼんだ場所があり、何体かの像が彫られている。

辺りはただ静かで人気がない。しかしここに仏像を彫ったりブロックを並べたのはは確かに人だ。そのうち奇妙な感覚に襲われる。安っぽい恐怖映画で「あら、何かしら」と無邪気な犠牲者が近づいていくと崖が崩れたり怪物がでてきたり、とにかく不幸が降ってくる事がある。私は今その場面にいるのではないか。どこからか感じられる、ここを作った人間の「想い」がこの奇妙な感覚を呼び起こしているのか。ふと脇を観ればこんなものが。

仏像を彫ることを禁止する看板が二枚も抜き取られている。誰かは知らないが横須賀市の警告を「余計なこと」と考えている人間がいるのだ。それは誰で何故なのだろう。

戻れば数mで元の広い道なのだが、細い道が左手につながっているのに気がつく。ええい、乗りかかった船だ。こちらに行ってみようと歩き出す。するとすぐに何体かの像に出会う。

ううむ。まだあったか。そこから道は険しくなり、道の脇にあるロープをたどらないと歩くのが困難になる。雪が降った後でもあり道がぬかるんでいる。こんなところで転び頭でも打てば数日後に

「数日前から行方不明となっていた神奈川県在住の会社員、大坪五郎さんが、鷹取山で死体となって発見されました。見つかったのはあまり登山客がいかない道であり、何故そんな所へ行ったのか理解できない、と関係者は述べています」

というニュースが流れることであろう。などと考えているうち行く手に人工的な手すりが見えてきた。

やれうれしや、あそこまで行けば普通の道に戻れるに違いない。と先を急ごうとすると左手になにやらあることに気がつく。

ううむ。こんなところにも。しかしこの壁にどうやって彫り、誰が観るというのか。

そこからまたてくてくと歩き、ようやく人がいるところについた。例によってたくさんの人が岸壁を上る訓練をしている。少し先に狭い公園のような場所があり、トイレと自動販売機がある。一息いれていると地図がある。

思うにあの磨崖仏は上の図の赤丸あたりの場所になるのではなかろうか。でもって私が通った道がピンク色のようにつながっていると。などと考えていると後ろから声をかけられた。何でもこの地図は古いので今月末に取り替えると言う。以前は道があったが今はなくなった場所にまだ道があるかのように見えるとのこと。看板も替えますからまた来て下さい、と言われる。私は礼を言ってその場所を後にする。今日観た磨崖仏について何か聞こうかと思ったが何故かためらわれた。

「関係者ですか?ではこちらに来て下さい」

と言われ説教を食らうことなどあるわけないのだが。

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注釈