題名:巡り巡って

五郎の入り口に戻る

日付:2005/11/10


愛子大仏:宮城県(2005/10/10)

盛岡から新幹線にのり仙台まで。そこで電車を乗り換える。結構な人が乗り降りするなあと感心しているうちに終点についた。

電車を降りて辺りを見回す。駅前の案内図を見るがやはり今日の目的地は載っていない。さて問題です。今日の目的地はこの線路のどちら側にあるのでしょう。

両側の出口を結ぶ陸橋のような通路があり、あそこに登れば見えるかも知れない、と考える。前にこの駅を通過したときその姿が見えるのに驚いたような記憶があるのだ-後でこの「記憶」はかなりあやしいものだった事に気が付くのだが-とにかくその通路に登り乗ってきた電車の進行方向右側を見る。すると小さな小さなお姿が見えたような気がした。よし、こっちだ。

と意を決して歩き始める。てくてく、そのうち住宅街に出る。道が入り組んでおり、しかもやたらと行き止まりがある。行ったり来たりを繰り返しながらあのお姿をもう一度見ようとするが見えない。これはどうしたことか。そのうち前方に川があることに気が付く。これはいかん。橋を渡らなくては。

というわけで橋と思しき方向に歩き出す。しかしだんだん恐怖が滲んでくる。そもそも私が見たと思ったあのお姿は本当に正しかったのか。山の上に高い木があっただけではないのか。橋を渡り始めたところでその不安は頂点に達する。歩を止めパソコンを取り出し地図を確認する(最初からそうすればいいのに)どうやらこの方向であっているようだ。橋を渡ると上り坂になる。珍スポット見物に坂はつきもの、と自分に言い聞かせながら登る。ぜいはあと歩を進めることしばらく、ようやく高台というか平坦な場所に出た。

さて、そろそろ見えて欲しい物だがと思いながら歩き続ける。するとそのお姿が前方に見えてきた。

これが本日の目的地愛子大仏である。漢字で書くと皇室のあの方と同じだが「あやしだいぶつ」と読む。とにかくあそこに行くのだと進み続ける。するとある事実に気が付く。大仏は大分上の方にある。つまりまた坂を登らなくてはならないのだ。ううむ。ここまで登ってきて更に。つらいが弱音を吐いてどうする。珍スポットの道は試練の道。あの大仏の足下まではなんとしても行くのだ。

そう決意を固めたところで何かが見えてきた。

大仏の右手に何かレールがひかれている。大仏建設の資材運搬に使った物かと思ったのだが、なんだか動いているようだ。ひょっとするとあれに乗れるかもしれん。

希望を胸に先をいそぐ。すると黄色い箱から男性が降りてきた。私は黙礼しその黄色い箱に近づく。すると立て看板があり、そこに書かれたことを読めばどうやら自由に使っていいようだ。ああ、ありがとう仏様。

「ナムナム号 発車オ〜ライ」という文字とこの黄色はこちらの腰を砕こうとするがやはり足を動かさずに登れるというのは有り難い。腰を下ろし安全バーを下ろす。行き先ボタンを押すとのんびりと動き始めた。

中腹で止まるとお墓参りによさそうだが、そこではとまらず頂上までいく。というわけで大仏とご対面である。

頭の避雷針が素敵。小高い丘のてっぺんに座っている大仏だからそりゃ雷対策も必要だろう。

ぐるりと回ってみる。大仏の下には葬儀など行うと思しき小さなホールがあり、何故か(というか狙ってというべきか)皇太子ご一家の写真が貼ってある。道路側にある看板には

「愛子様の御誕生を祝し、身宮安泰を御祈念申し上げる守り本尊として建立いたしました。」

と書いてある。いろいろなサイトを読むと、愛子様ご誕生とこの大仏建立の時期についてはあれこれ考えることができるそうなのだが、まあ気にしない。同じ敷地内に小さな茶屋がある。先ほどのナムナム号の代金は浄財として箱にいれるより、ここで何か買った方が良いだろう、と勝手に考えソフトクリームを食べる(歩き疲れていたのだ)こんなものも売っている。

一服するとさらに数枚大仏様の写真を撮る。そもそも今回二つの大仏を巡ったのは「二つの大仏は同じ型を用いて作られた?」という文章をどこかのサイトでみたからである。じろじろ見ると確かに似ている気もする。写真を並べてみよう。

愛子大仏

盛岡大仏

撮った角度が異なるので正確な比較はできないが、お顔は愛子大仏の方が少しふっくらしている。しかし他の部分-例えば指の形など-はそっくりである。想像するに首から上だけ別に作ったのではなかろうか。

見るべきほどの物は見つ、ということでナムナム号に乗る。途中の「墓地」駅で降りるとお墓の間をたらたら歩いて下る。一番下にはこんな像がある。

いつかこの墓地が一杯になると、この像も浮いた存在ではなくなるのかもしれんが今は草原の中にぽつりと立っているだけだ。さて駅に行こう、と来た道をとぼとぼ歩く。道の傍らにバス停があるので時刻を見ると、一日3本しか止まらないバスがもうすぐ来ることになっている。これはなんという幸運か。愛子大仏様ありがとうと、手を合わせたというのはもちろん嘘である。

前の章 | 次の章  | 一覧に戻る | 県別Index


注釈