題名:巡り巡って

五郎の入り口に戻る

日付:2005/12/20


太陽の丘:香川県小豆島(2005/12/8)

というわけで所持万端片づけて私は車のハンドルを握る。そう、私の珍スポット巡りは公共交通機関を用いるのが売りだったのだが、(誰が買うというのか)今回はそんなことは言っていられない。もう一カ所行く場所には30分ほど歩けば行けるらしいのだが、第一の目的地には公共交通機関では行けないらしい。となればここは妙なポリシーに拘っている場合ではない。

というわけで小豆島のスカイラインを走る。スカイラインというくらいだから山の上、曲がりくねった道をひたすら走る。そのうち展望台が近いという看板がでる。それとともに道路上に何かが見えてきた。雪である。ううむ。これは考えていなかった。道路が凍結していたら私は目的地にたどり着けぬではないか。なんとか完全凍結になりませんように、と祈りながらのろのろ進む。ほとんど車と出会わないから楽だね、などと考えているといきなり車がでてきてキモをつぶす。ぶつかったらこれまた目的地にたどり着くことはできないし、ありとあらゆる不幸が巻き起こる。とにかくのろのろ慎重に進む。そのうちスカイラインの一番高いところを通り過ぎたようだ。雪が減ってきた。ぶつかる危険性も少しは減ったことにしよう。などと喜んでいたら道を間違えてしまった。「間違えたのではないか」という恐怖にとらわれたまま少し進んだが、これはまずい、とUターンする。はてそろそろの筈だが、というところで看板が見えてきた。駐車場に車を止めると私はいやな予感にとらわれる。2001年宇宙の旅の小説版にこんな下りがある。

「ここは、もはやパーキング・センターではない。宇宙の屑鉄置き場なのだ。何万年かの差で、これを建設したものたちとすれちがってしまったのだ。そう思い当たった瞬間、ボーマンは急に意気が喪失するのを感じた。」

何故こんなことを書き出すかと言えば、どうみてもそこにある建物が廃墟と化しているからだ。ここは既に捨てられた場所なのか。

柱がギリシャ風なのはお約束か。張り紙を読めば平成16年4月1日をもって閉店したのこと。ううむ。来たのが少し遅かったか。最近あまり見ない「世界の行く先」看板もはげかかっている。

しかしとにかく前進だ。まさか入れないということはないだろう。私は坂をかけあがる。何かの石碑がある角を曲がると見えてきた。

いきなりギリシャだかローマ風の建物の中に日本の鐘である。一回つくために100円ということだが誰がその100円を回収に来るのだろう。そして正面には紛う方無き神殿形式の神社が存在している。

一瞬自分がどこにいるのか分からなくなるが、気を確かに持たなくてはならない。ここは小豆島であってギリシャではない。建物の屋根部分に書かれているのはギリシャの神々ではなく、二十四の瞳なのだ。

どんな格好をしていようが神社であるからには絵馬もちゃんとかかっている。しかしその痛み具合からして最近はほとんど掛けられていないのではなかろうか。おみくじセットだってあったのだろう。しかし今はもうこれらを買うことはできぬか。

説明看板も下に落ちてしまっている。語られている言葉は格調高いのだが。

奥に歩を進めるとギリシャから持ってこられたという火が燃えていた場所がある。しかし今その永遠不滅の聖火は消えてしまっている。

さらに階段を上がる。するとその先に小さな「祠」がある。その外見はギリシャかローマ風であるが、だまされてはいけない。その中にあるご神体は和風のそれなのだ。

この取り合わせ。それが何を意味しようが作った人間の熱い叫びが聞こえてくるかのようだ。あまり聞きたい気もしないがとりあえず叫びは叫びである。しかし普通の人は来てくれないだろうなあ。というわけで人の通わぬ場所となったか。

願わくばあのレストランが開いている時に来ればもう少し多くの事を知ることができたかもしれない。そして何故ここがこれほどまでにギリシャ風なのかを知ることができたか。しかしそれはかわなぬこと。私は再びハンドルを握ると来た道を戻る。今日はもう一カ所行く場所があるのだ。

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注釈