題名:巡り巡って

五郎の 入り口に戻る

日付:2006/5/18


燕趙園: 鳥取県(2006/5/3)

ここを発見したのは全くの偶然からである。鳥取県にあるスポットについてあれこれ情報をあさっているうち

「国内最大級の中国庭園」

というキャッチコピーに出くわしたわけだ。みてみれば鳥取県に中国づくしのテーマパークのようなものを作ったとのこと。ああ、きっ とここには何か脱力を誘う物があるに違いない。勝手にそう決めつけるとそこに行くための手段をあれこれ調べる。

5月3日。私にとっては連休の5日目だが、1,2日が出勤の人は私が考えているより多く、そしてその人達にとっての連休初日。とい うことで電車が無茶苦茶混むことに考えが及ばなかった私は愚か者なのだろう。目的地は鳥取から数駅とのこと。名古屋から鳥取に行くには、姫路あたりまで 行ってそこから北に向かうようだ。名古屋から姫路の間は新幹線と特急が並行して走るから新幹線から特急への乗り換え駅によって経路に様々なパターンがでて くる。数十円だか数百円だか安いという理由で私は新大阪乗り換えを選択した。結果から言えばこれは一番愚かな選 択だった。

3日の朝早く名古屋駅に着く。切符売り場に表示されている下り方面の列車は見事に空席なしだ。ふふふ。それくらいは覚悟の上、と自 由席特急券を購入する(実はこの日から3日間私が使っている銀行のカードが使えない、という事実を知りながら金を下ろしておかなかったのも馬鹿げた行為 だった。この事実はこの旅行に多大な影響を与え、この時もクレジットカードでの購入を余儀なくされた)とんとんとん、と新幹線ホームに向かう。到着した列 車には奇跡的に空席があった。いつも指定席を予約するときには忌避するB。つまり三列シートの真ん中だが、立っている人達をみやりながら

「今日はついているわい」

とほくそえむ。

新大阪に着くと特急に乗り換えだ。30分近く前から並び列の最初1割のところにいたのだが無駄だった。この列車は京都発だったので ある。自由席に座ろうと思えば京都で乗り換えるべきであった、、と今更悔やんでもはじまらない。しょうがないから指定席の車両に行き、デッキに座り込む。 所要時間は3時間足らず。まあデッキでも座れればよいとしなくては。

などとのんびりしたことを言っていられたのは短い間だった。途中とまる駅で人がわらわら乗り込んでくる。座るなどということは夢の 又夢とかした。私は普段異様にラッシュの混雑を嫌悪している人間なのだが、この混雑ぶりはそれに近い物。ええい、いつまで続くのか、とのろいの言葉を吐 いているうち、姫路をすぎてようやく人数が減少に転じた。やれうれしや、と息をつく。鳥取にかなり近くなって再び座ることができる。ここまでくるとかなり 頭が呆けており、時間が早くたつようになる。

鳥取につくとさらに電車を乗り換える。ワンマン車両になり、ボタンを押して扉を開けなくてはならない。おまけに2両あるうち前の車 両しか扉が開かない、とかまあいろいろある。松崎という駅で降りるとさて、と辺りを見回す。駅前にある地図を信じふらふらと歩き出す。

途中交差点があり、そこにあった看板に従い歩いていく。そのうち前方に中国風の建物が見えてきた。

国民宿舎

近づいてみればそれは目的地ではなく、国民宿舎だった。しかしこの中国への傾倒ぶりはどうしたことか。などと頭をひねっているうち に、前方に緑色の瓦屋根が見えてきた。

遠景

をを、あれだあれだ。心は弾む。しかし後から考えればここが一番楽しいところだった。

天気は快晴。気温は外出に丁度良く結構な人出である。とはいっても行列ができるほど混んでいる、なんてことはもちろんない。閑散と せず押し合いへし合いでなく適 度に人がいる。500円払うと入り口をくぐる。この場所の売り文句は

「すべてがメイド・イン・チャイニーズ(原文ママ。 Made in Chinaではなかろうか)

中国の歴史シンボルがココ日本で蘇る 梨の花温泉郷の一つ、東郷湖畔に湧く東郷温泉のほど近く、鳥取県と中国河北省の友好のシンボルとして建設された中国庭園。 園内には、歴代皇帝が造った様々な皇帝庭園方式をそのままに再現。 その威風堂々たる建物の数々は、設計から加工まで、すべてが中国本土で行われました。 そう、造るのも中国人なら、造られた場所までが中国。当館はそれだけ、より本場の雰囲気に近づけるための努力を惜しみませんでした 」(ホー ムページから)

それは確かにそうなのだろう。しかし観た印象は

「ヌルい」

としか言いようがない。園内の建物が中国で造られたことを疑うつもりはないが、どうひいき目にみても「威風堂々」という感じはうけ ない。先ほど見えた堂々たる緑屋根は「ゆアシ ス東郷 龍鳳閣」という隣の温泉保養施設で、中国庭園内の建物は小さく、そして庭園自体がとても狭い。各所に説明を流してくれるボタンがあるが、観るべき物 はほとんどない。中国への愛情という点で言えば「太陽公園」 の1/100 にもならぬのではなかろうか。いや、担当者は熱意を持って取り組んだのかもしれないが、観客に伝わってくる熱、という点では天と地の差がある。

全景

壮大な緑屋根は隣接する温泉施設
そのまえにちまちまあるのが、有料エリアの中国庭園

というわけで園内の写真はほとんど撮っていない。観るべき物としては

美女

くらいか。中国四大美女といいながら、その絵柄は今の日本人に受け入れやすいように大幅にアレンジされている。おまけに三国志演義 に登場する架空の美女、貂蝉まで並んでいる。どうせ三国志演義を取り入れちゃうなら、関羽から張飛からとにかく三国志を中心にすれば日本人受けする思うが そうした考えもないようだ。というわけで孔子、孟子像の 写真なぞとってみる。いや、それより印象深かったのはその隣にあった20世紀梨の木だろうか。やっぱり鳥取だし。

20世紀

ここではチャイナドレスの貸し出しとか中国雑伎団の演技とかがあるらしい。園内は家族連れ、カップルがふれふれと歩いている。確か に仲の良いカップルであれば、そこがヌルい施設でも楽しく過ごすことができよう。私だってうちの子供を連れてくればそれなりに楽しく走り回ったり、、、に は狭いしつまらなすぎるなあ。

というわけで「ああ、俺は一体ここに何をしに来たのだ」と落ち込みつつ園外にでる。隣には無料のボタン園があり、そこに「パンダの 楽園」という唯一期待の持てる(こういう期待の持ち方自体が全く間違っている、と主張されたとしても私は異を唱えるつもりはない)施 設があるはずなのだ。

パンダの楽園

というわけで行ってみるとそこにはパンダの置物がころころしている。そこで唯一私の顔が緩んだ。

顔出し

やはりパンダの顔出し。しかも石製である。ああ、これだけがこれだけが今日の3時間の経ちっぱなし特急、それにこの好天の元鳥取ま で来たかいがあったと思わせてくれるものだ。

少しだけ気が晴れた私は鳥取に向かう。この後泊まるところを探して数軒ホテルをうろつきまわることになったのだが、それは本論とは 関係ない。さて、明日は珍寺探訪だ。

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注釈