題 名:巡り巡って

五 郎の 入り口に戻る

日付:2007/5/20


韮 崎三題:アメリカヤ(閉店)、星野家墓地、韮崎観音:山梨県(2007/5/6)

ゴールデン ウィークである。とってもいい天気である。なのに大坪家は交代でしつこい風邪をひいてしまった。いや、何ごとも前向きにとらえなくてはならない。どうせ風 邪になるなら休みの時期でよかったではないか。どうせ世の中どこに行っても混んでるに違いないし。

などと半ば自分 を信じ込ませることに成功するのだが、一つの事実は動かしようがない。数少ない珍スポット巡りのチャンスは消えようとしているのだ。ああ天気がすばらし い。会社は休みだ。

などと嘆いていてもしょうがない。猖獗を極めた風邪もどうやら収束の気配を見せてきたようだ。 というわけで連休の最終日

「私は 放浪の旅に出る」

と宣言をする。本来(何が本来か知らぬが)ならば一泊で釜石、それに常磐ハワイアンセンターの近 所に行こうなどと企てていたのだが、それはまたの機会にしよう。地理的には比較的近くにありながら今まで足を伸ばすことかなわなかった山梨に向かうのだ。

五 月六日の朝、私は最寄りのバス停からバスに乗る。私鉄に乗りJRに乗り換え中央本線下りの特急に乗る。今日は連休最終日だが、下り方面だからがらがらであ る。ぐーすか寝ているうちに甲府、という声を聞く。ここにきたのは数年前の友達の結婚式以来だ。しかし今日ははここでは降りない。次の停車駅、韮崎まで行 くのだ。
というわけで韮崎のホームに降り立つ。 懸念していたこととはいえ、雨がふっている。これは珍スポットめぐりにはつらい気候だが、あまり天気がよいと「おれはこんな素晴らしい日に何をやっている のだ」と考え込むこと にもなりかねない。というわけで小雨交じりの天気にも良い点はある。何事も前向きに考えよう。
さて、目的地はどこだ、と目をあげれば ホームから見えるところにちゃんとあった。
遠景
 わーい わーいと喜んでいるともう一つの目的地もみつかる。 改札をでるとさっそく見えてきた方向に進んでいく。まずは閉店してしまった「アメリカヤ」だ。
アメリカ屋

今 は表から写真をとることしかできないが、それでも十分異様な力は伝わってくる。ここについてはこちらを参照していただきたい。かつてはとてもすごい場所 だったのだが、オーナーがなくなってしまい閉店されたまま今後の予定も決まっていないとか。見上げると鷹が停まっている。

鷹

ビルの右端にはこのような空間がある。

左の空間
温泉

かつては ここから温泉が流れ出していたのかもしれないが、今はクモの巣が張っている。

ここに「平和観音にちかいみち」とい う札があるが、なんだか怖いのでそこに進むのははばかられる。 というわけで、まともそうな道から丘の上を目指す。しばらくして今日雨が降っていることに利点があることに気がついた。今は私の嫌いな毛虫の季節である。 常に上方に気を配っていないと何が落ちてくるかわからない。しかし今日であればおおっぴらに笠をさしていることができる。傘の上に毛虫がのってもきっと半 狂乱になると思うのだが、いきなり頭の上にのられるよりましである。そんなことを考えながら歩き続ける。ショートカットと思しき道を登ると火葬場のような ところに出た。ということはこの近くにアメリカヤのオーナーだった星野氏の家の墓があるのだな。雨の中傘をさしながらあれこれ捜す。ふと気がつけばこんな ととこ ろに「アメリカヤ」の文字が。

看板その1

この近くということだったが、と先ほどみたコンクリート舗装された道路を通る。しかし見つからない。かつては旗も翻っていたそうだが、こちらも星野氏の死 去とともにすべて撤去されたとのこと。とはいえ結構目立つ構造のようだったが。 うろつくこと数分。火葬場の裏を、横手方向に進んだところにその墓はあった。

銅像

星野氏の銅像が飾ってある。これは生前からあったらしい。こちらの観音様は奥様のイメージとのこと。

観音

かくのごとく今でも何かと特徴の ある墓だがかつてははるかに飾られていたとのこと。手を合わせ星野氏の冥福を祈る。私はここに来るのが数年遅かった。 さて、そこから再び視線を移せば、観音様の後姿が見える。

後ろ姿

てくてくとそちらに近づいていく。小高い丘のちょうど端に立っている。 前にある石碑を読めば昭和36年に世界平和を祈って立てられたとのこと。当時世界平和を祈り大観音、大仏を作るのが一種のブームだったのだろうか。

観音-正面

費用は市民の浄財 でまかなわれたとあるが、想像するにアメリカヤも多大の貢献をしたのではなかろうか。近くにあるこれの意味は今ひとつわからないのだけど。

鉄板

というわけで坂を下り始める。左手にはアメリカヤが見える。見事にしまっているなあと考えているうち、こんな道があることに気がついた。

近道

どうやらこれを下っていくと先ほどの「平和観音にちかいみち」にでるのではなかろうか。草がおいしげっており、虫と雨水にぬれることを恐れるが、やはりこ こは星野氏の好意に甘えるべきであろう。意を決してそちらを下っていく。

アメリカ屋-裏

アメリカヤの裏手にある階段の一番したはこうなっており、かたくなにふさがれている。さびた物干しの何かが物寂しい。

ふさぐ

そこを回っていくと予想通りアメリカヤの前に出た。ここは商店街のようだが、日曜日の朝とはいえ人の気配がない。かつてここが営業していた頃、この人気の ない商店街でアメリカヤはどのような光をは なっていたのだろう。今はその様子をぼんやり想像する事しかできない。

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注釈