題名:巡り巡って

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日付:2012/1/12


大原山七福天寺:千葉県(2011/12/11)

12月11日の日曜日。私は一人で朝食をすませ、家をでる。通勤電車と同じ経路をとるが、いつもの駅で降りる訳ではない。ずっと乗り続 ける。今日は千葉の奥地で仕事なのだ。会社からは「東京駅発●●時●●分の電車にのること」と指示がでている。

しかし私が乗っている電車はそれではない。理論的にはあと2時間くらい遅くでても問題ないのだが、無駄な早起きは 私の数少ない特技。それを生かさないでどうする。列車は東京駅を過ぎひたすら走り続ける。千葉で外房線に乗り換えると風景は一気に 変化する。一言で言えば秘境。考えてみれば千葉県というのは、東京に近い顔、デニーズランド、それに秘境を併せ持つとても面白い存在なの かもしれん。

などと考えながら列車に揺られることしばらく。そろそろ降りるべき駅が近づいてきたようだ。眠るわけにはいかないからがんばって 目を開けて外を見る。大原という駅で降りる。

秘境といってもJR東日本の範囲内だから、いつも利用しているICカードで清算できるのがうれしいところ。改札を出ると駅にある地図 をぐっとにらむ。そもそもここからどこに出ればよいのか。国道128号というものに向かえばなんとかなるらしい。そちらに進む。

駅を出て、線路を横切りてくてく歩く。そのうち国道が見えてきた。ここで進行方向を間違えると永遠に着かないが(もちろん地球は丸いと いう議論もあるだろうが、お前はフォーリーブスか)多分こちら、と思う方向に進みだす。歩道が狭いところがあり、小走りに駆け抜ける。い つものことだが、この歩道を延々歩いている人間はそう多い訳ではない。

今日の目的地には立派なサイトがあり案内図をプリントアウトしてきてはいるのである。それによれば、128号沿いに進みマクドナルドと スーパーが並んでいるところを左に入れとのこと。そのうち大きな看板が見えてきたがどうやらパチンコ屋のようだ。少し行くとコンビニの大 きな看 板が見える。その先に何やらスーパーがある。しかし名前は案内図に示されているものと異なる。ということは私はまだ歩かねばならんのか。 しかしありがたいことにこんな看板も見えてくる。

看板

ここに違いない。左に曲がるとてくてく歩く。案内図には主要な曲がり角の写真と「撮影ポイント」なる印が記載されている。「撮影ポイン ト」というからそこですばらしい写真でもとれるのかと思えばそうではなく、曲がり角の写真を撮った場所、ということらしい。おおよその目 的地の方向(これには何の根拠もない)と案内図を照らし合わせ、こちらに違いないと思った方向に歩き続ける。

ところどころで人を見かけるが、私より若い(と私が判断した)人は一人しかいなかった。こういう場所を見ていると、高密度に詰め 込まれているマンション暮らしとかけはなれていることに気がつく。などと考えているうち、遠くに目的地が見えてきた。

遠景

これだこれ。まだ先だが、おそらく道は間違っていない。とても安心する。てくてく歩くと、こんな入り口に到達する。

入り口

そこからは坂を上る。地図を信じればここは海沿いとのこと。今から9ヶ月前。朝から晩まで津波警報がでていた時期を思い出す。ここで警 報がでれば、まずここを登るのだな。

右手に続いていた木々が少し途切れこんな光景が飛び込んでくる。

初めて見えた光景

これが本日の目的地である。笠森観音の四方懸造りを思い出すが、多分あれよ り少し規模は小さい。屋根とのコンビネーションでなかなか期待が持てる外観である。すぐ先には銭洗観音の看板があり、そちらに進む道があ るの だが 「通行禁止」というカラーコーンが立っている。どうしろというのか。ふと後ろを振り返ると海が見える。

海が見える

先ほどからこの近くに海があるらしいことは解っていたのだが(そうした地名が存在している)やは りあったのか。そこからしばらく上る。するとこのような場所がある。

祈祷所

看板を観れば、自動車用の祈禱所なのだそうな。他の場所でもこうした自動車用スペースを観たような気がするが。ここで一台だけ祈祷を受 けるのはなかなか素敵かもしれない。眼下には素晴らしく青い海が広がっている。空を見上げると雲一つない空が広がっており、何かが舞って いる。

青い空

その先にはこんな建物が見える。

全景

不思議な建物であるが違和感はない。近づいて行くとスリッパがある。履き替えるとその先に歩いて行く。建物全体が複雑な多角形で構成さ れている。

多角形

正面と思しき場所には 賽銭箱が置いてある。これはその後撮った写真だが、賽銭箱の形も多角形である。

賽銭箱

その先を曲がってしばらく行くと赤いポールが置いてあり、 そこで行き止まりになっている。振り返ると海が奇麗だ。

振り返ると海

そこからてくてくと戻る。先ほど最初に写真を撮った辺りまで戻ると女性が歩いてくるのが目に入る。どうも、と挨拶をすると

「これから開けますけど、観られますか?もういいですか?」

と聞かれる。私は残り時間を計算しながら大丈夫と判断し、「お願いします」と言う。黙って二人で坂を上る。相手が

「近くに住んでらっしゃるんですか?」

と聞く。私は

「横浜です。今日は近くで仕事がありまして、その前に見せていただきたいと思いまして」

と答える。スリッパを履いて、表の方に回ってくださいと言われる。先ほど賽銭箱があったところでぼんやりと待つ。すると中でがたがたと 音がして扉が開く。中はこのような様子である。

内側

奥の方に七福神がおり、その後ろにもう一つ像がある。私は中に入るとしばらくその像を観る。先ほど鍵を開けてくれた女性は帽子をとりい ろいろ仕事をしているようだ。この空間は何もかもが直角ではなく、菱形になっている。

などと考えているうちに、外から声がする。先ほどの女性が答える。なんでも宅急便屋さんが荷物を持ってきたのだけど、どうしま すか、と尋ねているようだ。女性は佐川急便と思っていたが、来たのはヤマト運輸との事。結局上に持ってきてください、ということになる。 彼女と一緒に私も本堂をでる。挨拶してその場所を後にする。最後にもう一度「本堂」正面と思しきところの写真を撮る。

本堂00

本堂01

帰り道はいつも来 るときより短い。ほどなく太い道路に戻る。この案内図が作られたときから、店の名前が変わったということなのだろう。スーパーの名前が変わるのはわかる が、マクドナルドはどこに行ったのだ。スーパーの横には「寺子屋JOY」なる カルチャーセンターのような施設がある。

ジョイ

しかしその建物をしばらく眺めているうち、ここがかつてはマクドナルドであったことを知る。

ドアー

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注釈