題名:巡り巡って

五郎の 入り口に戻る
日付:2013/1/10


沢田マンション:高知県(2013/12/06)

広い国道に一度でてから目的に行ってもいいのだが、ここは細い道を通ろう。すると山にそって墓地が点在していることに気がつく。体力に余裕があっても、登りたくないような急な坂道の上に墓が見える。

行ってみたい気もするが先を急ぐ。そのうち少し雰囲気が違うアパートが見えてきた。あれは目的地ではないか?結果から言えば外れだった。しかしその先に目的地がある。

遠景

これが今日の目的地沢田マンションである。wikipediaから引用しよう。

沢田マンション(さわだマンション)は、高知県高知市薊野(あぞうの)北町に建設された、集合住宅である。鉄筋コンクリート建築を専門職として手掛けたことのない者が、夫婦二人で(のちにはその子も加わって)造りあげた。通称「沢マン」(さわマン)、「軍艦島マンション」とも。

引用元:沢田マンション - Wikipedia

入り口にはこんな表示がある。

注意

ここは実際に人が住んでいる場所であり、たしかに住んでいる人からすればあまり写真など撮られたくない。というわけで皆が集まるのを待つ。

間もなく人が集まり、今日案内してくれる人が現れる。沢田マンションの住人代表のような役割をしている岡本氏である。説明が始まる。ここは3期にわかれて作られたとのこと。最初に作られた部分には当時使われていたらせん階段の跡がある。

螺旋階段のあと

ちなみにこの団体というのは某カンファレンスの参加者であり、何が普通の人とは様子が異なっている。ワンショットで360度撮影できるthetaというカメラを持っている人がいる。しかも複数。長い棒の先にとりつけられたカメラが何本もつきでている様子を見ると「この人達は何かが間違っているのではないか」という感を抱かされる。

次には正面から見えたスロープを登り始める。

スロープ 突き当たり

登ったところにこんな物があり、何人かが何かを購入している。ここで道はマンションの中にはいる。反対側に出た所にはこんなスロープが続いている。

裏のスロープ

一見普通の坂なのだが(そもそもなぜマンションの2階とおぼしきところから坂が続いているかは問わないとして)足下を見てみよう。

足下

下が丸見え。本当にここは大丈夫なのだろうかと皆が慎重に歩き出す。説明によれば、どこかの教授がきて「こんな構造は観た事が無い。でも多分大丈夫でしょう」といって帰ったとかなんとか。下がよく見えるスロープを登って行くとこんな「広場」にでる。

広場

広場の端にはTVのアンテナが林立している。そのうちの一本はこのように曲がっている。

アンテナ

なんでも過去に火事があったときに曲がったのだそうな。当時住んでいた女性が天ぷらを作っていて火事になってしまったとのこと。火は消し止められたが、その女性は家財を失った。そこで住民同士が「困ったときはお互い様」と助けの手を差し伸べたのだそうな。その先にはこんな場所がある。

リフト

外からもよく見える「リフト」である。問題はそこへつながるこの「道」だ。

リフトへの階段

「リフト」へつながる先のない階段。ここを進んでしまうと間違いなく転落し大変なことになるだろう。慎重にそこを避け階段を上る。すると屋上に出る。

クレーン

このクレーンも手作りなのだそうな。なんでも2回折れているとのこと。最初はカウタンーバランスをつけることを忘れて荷物を持ち上げたらぼき、っといったのだそうな。近くでみてみる。確かに電気配線は手作り感にあふれているが、全体はかなり立派だ。建物も設計図などは一切かかずに作ったとの事だが、果たして私に設計図なしでこのクレーンが作れるだろうか。

屋上

一見のどかな田園風景に見えるが、ここがマンションの屋上である事を忘れてはならない。右に見える小屋には鶏もいるがあくまでもマンションの屋上である。鶏の近くには柱が何本かたっている。ここは作成者が死の直前までさらに上の階を作ろうとしていた名残との事。

ここで一旦一同は坂を降りる。最後に地下室を見せてくれるらしい。

ピンホール写真

ここでなぜ立ち止まるかといえば、小さな窓がピンホールカメラの穴の役割をして、非常にぼやけてはいるが外の像ができているから。この写真の左端に道をはさんで反対側にあるヤマダ電機の「黄色」が映し出されていることがわかるだろうか。

駐車場

その先は駐車場になっている。おそらくは昔の日本車のサイズに合わせて作られているのだろう。というかここまでの道に梁がでていたから軽自動車でなければ通れないのかもしれない。その先にこんなエリアがある。

多目的室

多目的エリアである。合気道の道場であり、アメージンググレースの練習場であり、ソファも置いてある。反対側を観ると、ここがまだ「建築中」の建物であることが解る。

建築中
建築中その2

ここで見学は終わり。岡本氏は質問を受け付けてくれる。若い人とか、芸術関係の人が多いという印象を持つ人が多いようだが、そうではない。若者は2割しか無い。また芸術関係の人はほとんどいないとのこと。雨漏りがひどく、カビが問題。しかし住環境が悪く、通路がマンションの中を通っているため、住民間の交流は活発との事。引きこもろうにも、通路を通れば顔があってしまうし、扉を開けないと暑いのだろう。「昔の長屋のような生活」と言っていた。

質疑応答中

といったところで沢田マンションの見学はおしまい。今日は見学者が多かったので、大分説明をはしょったとのこと。いつかまたここに来てより詳細な説明を聞く事があるだろうか。周りは典型的な郊外の風景。スターバックスがあり、しゃれた店が建ち並んでいる。その駐車場から写真を撮る。

全景

こちらは一階にあった、マンションの模型と思しき物。

模型

最後にマンションの裏に回ってみる。山との間にはやはりお墓があるのであった。

アンテナの空
マンション裏側
裏のはか
裏のお墓

この近くには幕末の志士の墓があるらしいのだが、私にとっては今やもっとも大事な問題は帰りの電車の時間までに高知駅にたどり着く事である。方向を適当に決めるとてくてく歩く。夕日が薄曇りの静かな空にぼんやり光っている。

夕日

そこから家まではまた長い長い道のりが続く。

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注釈