題名:ちょっとタフな自然一杯の山

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日付:1998/2/5

 


池木屋山(千三百九十五,九M)中級者向き

登山最適期  通年

地形図    大台ケ原,高見山

登山所要時間 八時間

あらまし

 台高山脈のほぼ中央部にある山で宮川,櫛田川,吉野川と3大河川の源頭をなしている。松坂から西へ入って行くのだと聞くと何となく身近に感ずるが,実際に地図上で距離を当たって見ると大阪と同じぐらいで,名古屋からはかなり遠い山である。

 かっては,奥が深く人跡稀で訪ねるのに難しい山であった。昔時の登高記録を読むと,まさに探検といった雰囲気が伝わってくる。20年前でも,北の明神平から稜線づたいに,片道約6時間のピストンを強いられた。今では殆どの登山者は飯高町蓮川からのルートをとり,往復8時間弱の比較的身近な山となってきた。

宮の谷登山口へ

 車を松坂から西へ走らせる。伊勢街道,和歌山街道などと呼ばれ,かって京都と伊勢神宮とを結ぶ主要道であった国道166号線の台高町犬飼から奥香肌峡保養センターを目指し南へ入る。蓮ダムを過ぎ左手に辻堂橋を渡り蓮川左岸を上流へと走る。蓮ダムは平成3年に洪水調整,利水,発電の多目的ダムとして完成した。暫く行くと宮の谷へと書かれた看板がある。ここで橋を左に渡る。間もなく林道は終わり谷沿いの遊歩道となる。ここに車を何台か止められる。対岸で猿の群が木を揺さぶり,のんびりと鳴き交わしていた。

 この辺りの谷は,土地の隆起が早く岩が固いい上に多雨の条件があるからであろう,深く険しく刻まれ,随所に滝を掛けている。

 いまの宮の谷遊歩道は鉄の梯子や橋で整備され,簡単に探勝することができる。これらが無ければ,さぞかし時間はかかるが面白い遡行であっただろうと想像される。犬飛び岩や鷲岩などの奇岩怪石もあるが,それらの見物は帰途に譲ろう。紅葉が豪華だった。ことに僅かに散り残った紅葉の彩は,ひとしおと思われるのであった。若葉の頃もさぞや美しいことだろう。

高滝へ

 やがて谷は二つに分かれる。道標に従い左の風折滝への道を見送り,池木屋山へと右の道を辿る。この辺りから,遊歩道はようやく山道らしくなってくる。そして間もなく落差と水量に恵まれ,四囲を圧し豪快に轟いている高滝が現れる。

 滝の下で一息いれたら,滝の右側の急な崖を巻いて登ろう。最初にこの滝にぶっかった人はどんな気持ちだっただろうかと,先人の努力に感謝の気持ちが湧いてくる。

 ここから猫滝までの間が,全体の登山路の中で一番塩っぱい所である。このあたりの岩っぽい所や,ザラ場は,いわばどんな山にでもある程度のものではあるが,運悪く足を滑らすと,着地点まで見当がつかぬほど落差があるので,一歩一歩,慎重の上にも慎重な行動をお願いしたい。また,天候などで悪条件の時は無理をすべきでない。

山頂を目指して

 巾5センチもある,登山路と印刷されたテープに導かれ,渡渉を繰り返すと,やがて池木屋山に突き上げる尾根の登りにかかる。この尾根は表土が薄いためなのか植生が疎らである。あまりはっきりした踏跡があるとは言えないけれども,例のテープに従って,強引に直登して行くのに迷うことはなかろう。この尾根に私が訪れた日は,明るい黄色の落ち葉が地上に散り敷き,その上に頭上の黄色の葉を透けた陽光が降り注ぎ,まさにこの世の天国と言うべき有様であった。また1日で標高差約50?下ると言われる紅葉前線の動きを目の当たりにすることが出来た。やがて丈の低い笹の原とブナの林が現れれば,今までの苦闘が報われる時は近い。はやる気持ちを抑え,一歩一歩踏み締めて足を運ぼう。もう間もなく頂上である。

 寂しい頂上には,ただ西からの冷たい風だけが鳴っていた。北方はるかの暗い雲の下には,遠くに高見山が,また南方近くには国見山と,その奥に大台ガ原がその名のとおり巨大な台状の姿を見せていた。下山に掛かるとすぐ,東方に迷岳が西日を受け,そのゆったりとした巨体を見せ,次の機会の登行欲を掻立てるのであった。

           紅葉賞ず足下にて滝轟けり  (大坪重遠)

交通アクセス,コースタイム

 名古屋(東名阪,伊勢道,国道一六六号・三時間三十分)宮の谷入り口(一時間)風折滝分岐(二十分)高滝(三十分)猫滝(二時間三十分)頂上(三時間二十分)宮の谷入り口(三時間三十分)名古屋

踏査年月日     一九九四年十一月二十日

アドバイス一,道路崩壊のため,現在片道一時間余分に歩くことが必要。復旧予定平成5年中

二,公共交通機関利用ならば,近鉄松坂駅から三重交通バスで奥香肌峡保養センター行き  終点まで1時間40分。便数が少なく不便

三,問い合わせ先 飯高町産業課(電〇五九八四,五,0一三七)

                            変わりゆく秘峰

ドウの天井(一三三二,七M)

上級者向き

登山最適季 四月上旬

地形図 平家岳,下大須

登山所要時間 十一時間

あらまし

 奥美濃最後の山と呼ばれることもある懐の深い山である。容易に近づくことができず,また周りの山に抜きんでた標高を持っているので,展望にも優れている。

 このあたり約六千?の土地は,地元のある豪家の所有である。そのご当主は自然の土に木に心の底からの愛情を抱いておられると聞く。

 近時,国民の貴重な水力エネルギー確保のために,発電所の建設を認められた。そのご趣旨を尊重し,自然に手を加えるのを最小限に抑えながら工事が進めらている。

 われわれもそのお気持ちを尊重し,できるだけ自然のままのルートを選んで登頂した。小滝あり,激藪,雪の斜面ありの難路で,そのひとつ一つにチャレンジを味わいながら,自然に身をまかすこと自体を楽しめる人にだけお薦めできるルートである。

本文

 残雪の時期を狙っていたが,いろいろの都合で四月の中旬になってしまった。有名な淡墨桜の時期と重なったので,早朝,渋滞の始まる前に樽見の町を通過した。根尾東谷川を遡り,巨大な石積のロックフィルダムからさらに先に進み,二股を右にとり舗装道路の終点に車をおいた。

 川原に下り適当に渡渉しながら上流へ進む。やがて谷は二股になっている。正面の尾根に取りつけば,安全ではあるが藪こぎのアルバイトを強いられそうだ。われわれは手に負えなければ引き返すつもりで,右の明神沢に入った。

 この沢の右手が明神山である。地図上のギザギザマークが示す岸壁が威圧的だ。イワウチワ,コウゾの花が次々と現れ心を和ませてくれる。来て良かったなと憩う耳に水音が快い。

 次々と現れる滝をなんとか巻きながら登ってゆくと,段々に水量が少なくなり,ついに源流のガラ場にかかる。落石に気をつけながら通過し樹林帯に入る。

 なんとなく藪の薄い右上へ登ってゆく。シャクナゲと岩が出てくる。雪も現れるが適当にずり上がってゆく。稜線を左上に辿ると数本の檜の大樹が立つ明神山(千百四十一M)頂上に着く。能郷白山や屏風山,そしてこれから目指すドウの天井の展望を楽しもう。

 一息いれたら見事な?が混じる痩尾根道を南へ進む。小さなコブを4つばかり越えてゆく。たまには猟師が通るのか幽かな踏跡がある。やがて登りにかかるが,ここはもう千百Mを越え雪の世界である。植生もブナが主体の気持ち良い林となっている。立派な踏跡に導かれ間もなく頂上に着く。

 前回来た時は人の気配など微塵もない静かな山頂であった。だが今はここも様子が変わってしまっている。おなじ山を愛する仲間なのだから,後の人達のためにできるだけ自然のままの姿を残しておいて欲しいと祈らざるを得なかった。

 聞けばさらに新しい発電所建設の計画があり,ドウの天井の脇を通る工事用の道路ができるとのことである。今日来たクラシックルートを苦労して登る人が,あと何人あることだろうか。なんとも言えない複雑な思いで,真っ白な北アルプスから伊吹山,能郷白山、加賀白山と三百六十度の展望に刻を過ごした。

 時刻はすでに一五時に近く往路を戻る余裕はない。見れば尾根を真南に下がったところに道が見える。山を志す者としてまことに恥ずかしかったが,ほかに選択の道はない。一目散に下り,あとは一部雪の残る車道を今朝の出発点まで延々と下った。安全圏内に入った安心感はあるものの,標高差八百M,十KMの道程は相当なものだった。

・遠き日の好意のごとく萌え初むる             (大坪重遠)

交通アクセス,コースタイム

 名古屋(国道二十二,二十一,百五十七号,三時間)上大須ダムより道路終点(三時間)

 明神山(三時間)ドウの天井山頂

踏査年月日  一九九五年四月一五日

アドバイス

一,公共交通機関は大変に不便である。

二,発電所工事用道路は一般の通行禁止

三,問い合わせ先 根尾村観光課

  TEL〇五八 一三八 二五一一

  

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