タブレット端末は、ただのハードメーカーには作れないのがはっきりした

2011-09-30 06:58

KindleFireが発表された。なにより驚いたのはその価格である。なんと$199である。
指摘された記事によると、Kindle FireのH/W自体は、Blackberryが既に発表しているPlayBookと非常に似通っているらしい。

右が発表されたばかりの7型タブレットAmazon Kindle Fire。左はRIMがちょうど一年前に発表した7型タブレット BlackBerry PlayBook。わざわざ持ち込んで並べている理由はこちらの記事を参照。どちらも7インチのシンプルなデザインだけあって、また外装や厚みも兄弟のようによく似ています。

via: アマゾン Kindle Fire vs. BlackBerry PlayBook 比較ギャラリー

つまりH/W的に画期的な点はないわけだ。ではなぜこんな価格を実現できるのか?それはこれがHTCから発売されたのではなく、Amazonから発売されたからだ。

Apple is also monetizing the hardware upfront with a 30%+ gross margin on the iPad, whereas Amazon is likely losing about $50 per Kindle Fire.

via: Analyst: Amazon is likely losing $50 per Kindle Fire - Apple 2.0 - Fortune Tech

一つの推定によると、iPadは30%もの利益率をもっている。逆にKindle Fireは一台売るごとに$50の損失になるのだそうな。

H/Wを損失覚悟でうるのは、ゲーム機では当たり前らしい。なぜならその上で動かすアプリを普及させることが目的だからだ。Amazonも同じである。H/Wで儲ける必要はない。その上で書籍を売りまくればいいのだ。

もしこれが電子書籍閲覧専用端末なら、他のPadメーカーは「そうだねえ」とのんびりしていられるだろう。しかしそうではない。メールの閲覧、Browserもちゃんと備わっているのだ。(このブラウザの仕組み自体大変興味深い点があるのだが、それについては今日は書かない)つまり常日頃

「iPadがもう少し軽くなればねえ」

といっている奥様なら、これで十分ということになる(Kindle Fire 413g v.s. iPad2 601g)
アプリケーション?そもそも奥様はアプリなんかインストールしない。

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之に対して先日終了が宣言された日本が誇る家電メーカー、シャープが発表したガラパゴスの5.5inchモデルはなんと39,800円。円高を考慮すれば16,000円のKindle Fireとは比べ物にならない。

これではっきりした。タブレット端末は、むしろゲーム機のハードに近い性質を持っている。自分で良質のコンテンツを確保し、それで収益をあげられないハードメーカーは、表舞台から退場するしかない。(製造請負はできるけどね)


いや、日本にもハードウェアとコンテンツ両方をもっている企業は存在する!親愛なるソニーだ。CEOもこう強調しているぞ!

 ストリンガー氏によると、ソニーのタブレット端末は同社の音楽や映画サービスとの連携により、エンターテインメントライブラリとして活用できるため、その点で競合各社との差別化を図れるはずという。

via: 価格もハードウェアも凡庸──「Sony Tablet」に海外で厳しい評価 (2/2) - ITmedia ニュース

でもね、価格はiPad2と同じ。質感は

ガジェットサイトEngadgetの編集長、ティム・スティーブンス氏によれば、この端末のハードウェアはがっかりなレベルであり、質感やデザインはiPad 2やGalaxy Tabには到底及ばないという。

via: 価格もハードウェアも凡庸──「Sony Tablet」に海外で厳しい評価 (1/2) - ITmedia ニュース

携帯OSを何にしましょう?

2011-09-29 07:14

先日こんな写真をみつけた。

2010年6月 iPhone4に人々が行列をつくっていたとき孤独な戦いを続ける専務時代の田中社長
1109250517_305_1.jpg

via: au版「ホワイトプラン」、『プランZシンプル』9月28日から開始。月額980円で1~21時のau同士通話無料

この写真を見て、KDDIに非常に好感を持った。KDDIという企業はどこで聞いても評判が悪い。実際に社員の方と接すると良い人ばかりなのに、、と不思議に思うことがある。こういうのは組織文化の問題というやつなのだろうな。

しかしこの社長には期待せざるを得ない。というかどこからかこういう人がでてくるのは、日本の大企業の強みだと常々考えている。遠くシアトルに住みながら、日本の原発について寝言を並べている中島氏だが、本業(に近いところ)では未だに的確な分析をしている。以下の意見には全く同意だ。

iPhoneを担いでシェアを着実に増やしているソフトバンクに対抗するには、妙な小細工はせずに、本業の通信の部分に総力を結集して「だれよりも良い土管」を作るしかない、という決断のように思える(iPhoneを売る事がなぜ「土管になること」に通じるかについては、来週号の週刊 Life is Beautifulで解説する)。

via: Life is beautiful: auの決断と通信事業の未来と


OpenはプラットフォームとしてのAndroidは実質的に終焉した、と私は主張している。いい加減に認めようじゃないか。auがなぜiPhoneを出すことに固執するのか。少なくとも現時点では携帯は垂直統合しなければビジネスにならない、ということだ。Googleがそれを認めた今、Motorola以外にはどういう選択肢があるのだろう?

NokiaはWindowsPhoneをとった。日本では今のところ「取っ付きが悪いが、使ってみると悪くない」という報道ばかりが流れている。しかしその後のサポートについてはどうだろう。

米国では新しいOSが公開された。その注意書きを読もう。

そこで、われわれは意識的にゆっくりと開始することにした。今週は、10%のユーザーがこのアップデートを入手できるようにする予定。」

つまり、良いニュースは:98%の人たちが今日からアップデートを手に入れられる。みんな今すぐ取りに行こう!
しかし、悪いニュースは:わずか10%の人たちが、実際に入手、インストールして使用できる。

ゆっくりとした提供は、もちろん理にかなっている。以前のWindows Phone 7のアップデートは、レンガ造りの携帯電話ぐらいひどかったから。今回彼らのメッセージは、どうにも明快でなく、用意された「私のアップデートはどこ?」もあまり親切とはいえない。繰り返すが、彼らはアップデートを今日「配布している」と言いながら、特別小さなアスタリスクの先には、このアップデートは数週間有効にならない場合があると明記されているのだ。わけがわからない。

via: Windows Phone 7.5「Mango」出荷開始

H/Wにきびしい制限をかけているWindows Phoneでこれである。Androidがどのような状態かは推して知るべしだ。(もちろんMicrosoftの開発能力に疑問符をつけることもできるが)

じゃあ他に選択肢はあるのだろうか?

Web OS ? HPのCEOはあっというまにまた変わった。どっかの国の総理大臣なみである。

他に選択肢はないのか?ニュースを見るとまたもや新しいプラットフォームが発表されたようだ。

Linux Foundation と LiMO Foundation が、スマートフォンやデバイス向けの新たなソフトウェアプラットフォーム Tizen を発表しました。Tizen はLinuxベースで、クロスプラットフォーム動作するOSおよびコアアプリケーション群、開発環境からなるオープンソースのプラットフォーム。

via: MeeGo 後継のTizenプラットフォーム発表、サムスンとインテルが舵取り

英語で読める記事には、Limo Foundationにそうそうたる企業名が並んでいる。

Also joining the effort is the LiMo Foundation, a dedicated consortium with shared leadership and decision making consisting of ACCESS, Panasonic Mobile, NEC Casio, NTT DoCoMo, Samsung, SK Telecom, Telefonica, and Vodafone.

via: MeeGo is dead: Meet Tizen, another new open source OS based on Linux | This is my next...

しかし年をとった私はこういう企業名を見てもなんとも思わない。「有名企業が名を連ねる」ことに何の意味もないことは十分思い知っているからだ。Tizenに何ができるかは結局実際に手を動かしている中核メンバーで決まる。その結果はまだわからない。


Flashの終焉とWindows8の悩み

2011-09-28 06:38

iPhone(というかiOS)がFlashをサポートしないことについてはいろいろなことが言われていた。しかし先日こんな情報を知った。

マイクロソフトの公式ブログによると、次のWindows 8に搭載されるInternet Explorer 10には2つのモード、Metroスタイル版とデスクトップ版の2種類があり、このうちMetroスタイル版の方はプラグインフリー、つまりFlashやSilverlightなどの各種プラグインは動作しなくなる、とのこと。

via: Windows 8のIE10(Metroスタイル版)はFlash非対応に、バッテリー持続時間やセキュリティなどが理由 - GIGAZINE

ちょっと待て、Silverlightもか、という気もするがMicrosoftらしからぬ割り切り方である。PCの大半を占めるWindowsパソコンで、デフォルトでは(Metroスタイルがどれほど使われるかわからないのだが)Flashが動かなくなる。Flashの終焉がやってきたようだ。

前の会社で作っていたのは、携帯情報機器用の、UIミドルウェアだった。何も知らない人は必ず「Flashと比べてどうですか」と聞いた。

しかし不思議なことに実際FlashでまともなUIを構築した会社はいつまでたっても現れなかった。

ただし、AdobeはFlashをよりローエンドのデバイスに搭載しようとはしていないとWinokur氏はいう。

 モバイル市場は依然として、Flashにとっては最大の難問のままだ。しかし、Adobeがまだあきらめていないのは明らかだ。

via: 「Flash Player 11」で巻き返しを図るアドビ--その戦略を探る - (page 4) - CNET Japan

つまるところはパフォーマンスなのだと思う。私が扱っていたミドルウェアより、Flashのほうがはるかに機能が豊富で、書くならそちらだ。しかし実際の製品で動かすとなると話は別である。PC上でいくら綺麗に動いたところで実機で動かなくてはなんともならない。

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話は変わる。MetroでFlashを切り捨てたWindows8のほうだ。

Sinofskyの説明にある通り、Windows 8は従来型Windowsと新しいMetroベースの体験の両方を提供する、それは、どちらのやり方を取ることにも議論があったからだ。だから彼らは・・・えーと・・・妥協した!

これは重要だ、なぜならこの手の妥協がうまくいくことは稀だから。そう、誰もが今あるものも新しいものも欲しがる。しかし、時にこの優柔不断さをユーザーに押しつけた結果、第3の選択肢を強いる危険を冒すことになる、それは「無」だ。

via: マイクロソフトの「妥協しない」の解釈は、「妥協」の定義そのもの

私にも今のところWindows8のMetroと従来型Windowsデスクトップの「両立」は単なる妥協に見える。おそらく、tablet上ではMetroが使われ、PC上では今までと何も変わらない用にデスクトップが使われるのではなかろうか。

「インフラ」となってしまったWindowsに「Metroだけを提供する」という選択肢は最初からなかったのだろう。それは妥協そのものであり、結局ほとんどのユーザは今までと変わらず普通のWindowsの世界に住み続けるのだろう。XPの世界に。


auの秋冬モデル発表会

2011-09-27 06:51

auの発表会をストリーミングで見る日がくるとはなあ。席上こんな発表があった。

プランZ4 件シンプルは、月額980円の基本料で、午前1時から午後9時までのau携帯電話宛ての国内通話を無料で提供する新料金プラン。

via: 新料金プランとWiMAX搭載スマホ向けキャンペーン発表 - KDDI | 携帯 | マイコミジャーナル

さてここで問題です。このプランをどうやって発音するのが正しいのでしょうか?
少なくともKDDIの社長は

「ぷらんじー」

と発音していた。「ぷらんぜっと」は不正解。その他にも英単語をやたらと米国式に発音しようとしている。経歴を調べてみればStanford卒だった。なるほど。

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この「じー」と「ぜっと」についてはいつか調べてみる価値があると思っている。私も中学校の英語の時間では「じー」とならった。しかし南アフリカ人(彼は英国人だと思っている)に言わせると

「正しい発音は"ぜっと"だ」

とのこと。彼が補講で「ぜっと軸」と発音したら、生徒から笑いが起こった。
なぜ日本人は「ぜっと」で、米国語は「じー」なのだろうか。
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しかしiPhoneが発表されるか、料金プランがなんなのか明らかになる前から

「これでSoftbankから移れる」

という人の多いこと。そんな中auはひっそりと「Android au」のページを閉鎖している。

auが勝ってもsoftbankが踏みとどまっても笑うのはAppleなのだが、それを百も承知の上でおそらくは理不尽な要求を丸呑みしたのだと思う。
こういうなりふり構わない態度は嫌いではない。1年前にある話を聞いたときには「auはもうだめだ」と本気で思ったものだが、自分のダメさを自覚して、できることは何でもやる姿には妙な好感すら覚えてしまう。


キャリアと端末メーカーの力関係

2011-09-26 06:51

iPhoneが登場したときにも痛感したことだが、今回の「iPhone by au報道」でもその思いを強くした。

日本ではキャリア様はとても強い存在だ。端末メーカーはキャリア様に気に入っていただける製品をつくるべく日夜研鑽を重ねる。

それが従来の図式だったのだが、iPhoneはそれをひっくりかえした。今や選択権は端末メーカーにあり、キャリアは腰を低くしてそれを出してもらえるようお願いする立場なのだ。

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他にもいくつかわかったことがある。

・AndroidがあればiPhoneがいらない、などと本気で思っているキャリアがいたとすればDocomoだけ。あれほどAndroid Auとか言っていたAuは影でAppleの無茶苦茶な要求を飲むことを決定していた。もしAndroidが本当にiPhoneキラーだとすればこんなことをするわけがない。

・iPhoneを使うためにSoftbankに来てくれた人の大半は、Softbankを愛してはくれなかった。こんなことを言ったり

電波改善の件、必ずドコモを抜きます。少し時間は、かかりますが男のプライドにかけて必ず成します。

via: Twitter / @masason: 電波改善の件、必ずドコモを抜きます。少し時間は、かか ...

こんなことを言ったりしていたが

電波の件、本当に申し訳ないです。全国的に改善すべく、秘策も含め鋭意準備中です。

via: Twitter / @masason: @takapon_jp 電波の件、本当に申し訳ないで ...

震災の後に正義の味方を気取ってみたりしたが、結局のところ電波状況は改善されていないようだし、誰もSoftbankを愛してはくれなかった。auから実際にiPhoneが発売されれば、そのことがよりはっきりすると思う。

iPhone日本で出してくれれば、一家そろってSoftbankにする、といっていた私だがすいません。前言を部分的に撤回します。PHSからSoftbankにした奥様だが、高い高いと年中文句を言っている。というわけで、同じSoftank配下のPHSにします。


物悲しさの募る秋

2011-09-22 07:20

孫の代までSony製品は買わない、と公言している私だが、もはやソニーは「嫌う」対象ですらなくて、「物悲しさを覚える」存在なのだな。

 ソニーが、この製品に「ソニータブレット」という名称をつけたのは、ソニーが提供するエンターテインメントの世界を実感していただくための端末であるからです。ソニーマーケティングが取り扱う製品のうち、テレビ、PC、スマートフォン、タブレットの4つが、エンターテインメントの窓口となる製品。その世界で、タブレットは重要な役割を果たすことになります。ソニーはタブレットに本気です。その本気を感じてもらえる製品を、今回のソニータブレットによって、市場に投入できたと考えています。

via: 【大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」】 ソニータブレットでソニーの「本気ぶり」を感じてほしい ~ソニーマーケティング・栗田社長に聞く

社長の意気込みは素晴らしい。ではコンシューマーの反応はどうだろうか。

9 :名無しさん@涙目です。(千葉県):2011/09/21(水) 07:25:36.97 ID:ZB9Ksls+0
お前等は知らないだろうけど、
昔はどんな製品を出してくるのか世界が注目した企業だったんだぜ

中略

27 :名無しさん@涙目です。(静岡県):2011/09/21(水) 07:29:13.19 ID:/sV+46YD0
何か寂しい・・
馬鹿にする気なんて全然起きない
ただただ切なくて胸の奥が締め付けられる
うっすら涙すら出てきた・・

via: Sony Tablet販売初日が酷すぎて葬式会場に:ハムスター速報

それでも時々異業種交流会などでソニーの人に会うと、そのプライドの高さはひしひしと伝わってくる。肥大化したプライドと、客観的な現実と。この組み合わせは、シニア向けのパソコン教室で一部の男性に見られる姿だ。


使い方を説明すると「わかっている」という。すばらしい。じゃあ一人でできますね、というと何もできない。また説明すると「わかっている」というそれに加えて、自分が過去にどんな重要な仕事をしたか、自分の家族もどんなに成功しているかを滔々と語り出す。

それ自体は悪いことではないのだが、「えー、わかんないわよー」と言っている女性のほうがどんどん使い方を覚え、先に進んで行ってしまう。自分でもそれに気がついているのか、「成功自慢」に一層熱が入る。


企業文化というものは一朝一夕には変わらないのだろう。そもそも変わろうとしている、という話も聞こえてこないが。

ウォークマンでは、すでにiPodのシェアを超え、2011年の年末商戦では55%以上のシェア獲得を目指しますが、これはもともとウェークマンとして一定のシェアを持っていた上での積み上げによる数字。

via: 【大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」】 ソニータブレットでソニーの「本気ぶり」を感じてほしい ~ソニーマーケティング・栗田社長に聞く

こんなことを公言できてしまうようでは、もう衰退の一途をたどるしかないのかもしれない。


HIS2011感想(その2)

2011-09-21 06:33

というわけでインタラクティブセッション(つまりはデモ、ポスター発表)からいくつか印象に残ったものを。

その1:インターホン玄関子機のタッチパネル化についての実験的検討
川澄 未来子 ( 名城大学 ) 玉木 克志 , 高幡 幸太郎 , 阿部 智仁 , 花井 雅敏 , 中島 菜月 ( アイホン )

ちなみにうちの玄関にはアイホンがついている。世帯主はケータイすら持っていない。どうでもいいですね。すいません。
インターホンで玄関側に設置する子機に画面をつけたらどうなるか。どのような可能性が広がるかを研究しているとのこと。一番面白くないと思ったのが

「本人のかわりにポケモンがしゃべる」

というやつ。これを聞いたときはがっかりしたが、帰らなくてよかった。この後が面白いお。
「親機側で、文章を選択すると、それを他人の声で読み上げてくれる」

これはいい。「子どもだな」とか「女性が一人か」とか相手に悟られる心配がない。

「待たせている間、広告を表示する」

一番気に入ったのはこれだ。今や私は民放TVなどみない。だから何億かけてTVCMなど製作・放映したところで何の役にもたたない。私が唯一見る動画のCMは電車内のディスプレイに表示されるものだ。

つまり今や人はTVの前で呆然と座ってはくれないのだ。であれば、人間がぼーっとす動けない時間をつかまえることが必要になる。インターホンというのはその点とても気に入った。第一に押した人間はそこから動くことができない。第二に他にすることがない。(何かをするにはあまりに短い時間だからだ)第3に画面に何か必要な情報が映し出されるかも知れない、と思えばそこから目を離すことができない。

話を聞くと、ナースコール用の端末も製造しているとのことだが、入院して暇な患者さんであれば、絶対CMを見てくれると思う。だって暇だもん。他にも

「そういえば、エレベーターの中って動けないし、気まずいからディスプレイがあると救われますよね」

とかあれこれ話が弾んだ。

その2)漫才におけるオープンコミュニケーション構造の定量化 −観客の有無による非言語行動の比較−丹野 匡貴(同志社大学)

漫才が観客がいるときといない時でどのように変化するかを調査した研究。一番分かりやすい指標としては

「観客がいないと、時間が2/3になる」

というものだろうか。なんでも、ボケは変わらなくても、ツッコミがはいるタイミングが変わるのだそうな。ボケでお客さんが笑うとそれと重なるのを避けるのだとのこと。

岡山県立大学のどこかが「聞き手が頷いていることによる発表者への影響」を長年研究していると思うが、これもそれと関連した領域の研究と思う。

その3)ニブログによる災害時の周辺状況の収集と提供の支援 横部 径

Twitterによる情報を、災害時に利用しようという研究の一つ。Twitterの情報発信者に「信頼度」という値を設定しているところが特徴。デマを流すと信頼度ががたっと下がるのだそうな。

議論しているうちに気がついたのだが、こうしたシステムは「災害が起こったその時」に動いてもらわなくては困る。そこから信頼度が上がったり下がったりするのもいいが「今の情報」が重要なのだ。

となると、普段からユーザに情報の信頼度をつけておくことが必要ではないか。私の考えでは

「拡散希望」

と書いてあるTweetを一回でもRTした人間は全て信頼度0にしてもいいと思う。あとこれは予想だが、フォロー関係を分析すれば

「信頼度が高いクラスターと信頼度が低いクラスター」

が分別できるのではないかな。信頼度が低いクラスターが「みんな同じ意見を持っている」と安心してしまうところがこうしたソーシャルメディアの恐ろしさなのだが。

その4)HI は「もの」にならない?:HI 技術が事業化に結びつきにくい 要因に関する経験的考察 新西 誠人

HIの面で特徴があったが事業化につながらなかったプロジェクトを題材にその要因についてインタビューした結果の報告。

「つまるところ、金を持っている人間の考え方一つではないでしょうか」

といったが、まあそれだと身も蓋もないので別の方向性を考える。

分析の結果要因は三つあり

・HIが製品に近づくにつれ応用範囲が狭まり、事業規模が小さくなる。
・少数のユーザの声に振り回され、特定用途、特定ユーザに特化してしまい応用範囲が狭くなる。
・開発している間に他の技術が発表されてしまう等。

このうち2番目だが、これは製品を設計するほうが悪い。ユーザの声に耳をかたむけるのと、ユーザの言う事を聞いてそれを反映させることは全く別だ。

受注製品ならいざしらず、一般消費者向けに設計するのであれば、勇気と責任をもって
「ユーザの声を無視する」
ことができなければならない。確かAppleのフィル・シラーがそういったことを述べていたように記憶する。(とはいったが見つけることができない)

とかなんとか言ったところで、金を持った人が押すプロジェクトはそれがなくても通るし、そうでなけりゃダ(以下略)

その5:片付けを楽しく導く収納家具の提案 脇屋 玲央
独身男の部屋におくための、収納家具。これはすばらしい。

まず独身男は、まともに服をたたみはしない。だから適当におって上から入れらる構造にした。

また横にスリットがあいており、そこから引きずりだすことができる。服の山をかきわけるよりずっと効果的だ。

またスリットから見える様々な色の生地は見た目にも美しい。つまりずぼらでありながら、見た目を整えるということができるのだ。私ともう一人(名前を知らない人)で

「是非これ売ってください。」

とお願いしてきた。いや、無印良品かなにかで出せば売れると思うのだけど。


HIS2011の感想(その1)

2011-09-20 08:02

というわけで仙台で行われたHIS2011というシンポジウムに参加していた。

ただ聞くのではなく、何か発表を、とは前にこの仕事をやっていたときに考えたポリシーだが、今はネタがない。というわけで3日あいだいろいろな話を聞いたり議論をした。

というわけで、何回続くかわからないが、頭に残っていることを。

その1:アフォーダンスからシグニファイアへ −ノーマンの『複雑さと共に暮らす』から
岡本 明

家から始発ででたとしても、この講演には少し間に合わなかった。最初から聞いていれば、と残念に思うほど興味深いトピックだった。

「誰のためのデザイン」で有名なノーマンであるが、最近アフォーダンスではなく、シギニファイアという言葉を使うようになったのだそうな。なんでももともとアフォーダンスという言葉を使ったギブソンは

「アフォーダンスとは、観察者がいなくてもそこに存在している」

という立場で、ノーマンは

「認知的アフォーダンス」

ということで人間が知覚する作用と切り離せないものだ、と考えたらしい。私のような素人からすると、ギブソンが言っている意味はよくわからない。でもってノーマンとギブソンが直接議論することもあったらしい。

でもって新しくノーマンが使い出した言葉がこの「シグニファイア」である。何かを指し示している物、とでも理解すればいいのだろうか。例えばコピー機のカバーの設計が悪いと本来持つべきでないところを人間が持ち上げてしまう。

そこで分かりやすい「持つ場所」を付ける。これがシグニファイアだとかなんとか。また最近「複雑さと共生する」ことも「許容する」ようになったのだとか。これは本読まなくちゃ。

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何度かこのブログでも書いていることだが、私は

「説明書なしで使えなくてはいけない」

原理主義には反対である(全ての原理主義に反対もいう気もするが気にしない)自転車に練習なしで乗れた人はいるだろうか?ピアノや、バイオリンを練習なしで引きこなせる人はいるだろうか?ではなぜそれらの

「絶望的なまでに狂ったインタフェース」

は生き残り続けるのか?これに関連して駄弁をふるってしまったのが、以下の対話発表。

その2:即応的な発話を可能とする音声合成装置の身体的なユーザインタ フェース
尾林 慶一

これは面白かった。既存の音声合成装置は、パネルから音声を選んで発話しているだけだが、それでは会話のタイミング、イントネーションなどを変化させることができない。そこで、手で握り連続的な値を入力する(つまりあれこれひねったり、ぐにょぐにょする、と理解したが)ことで複雑な音声を発声させられるインタフェースに関する研究だ。

説明の途中で「●●の操作は取得が困難、、」とか説明者が言ったところで、私は聞き始める。仮に取得が困難だとして、まず優先すべきは

「自由にイントネーションなどを付与した、パネル選択では絶対にできない発声」

ができることではないか?仮に習得するのに3ヶ月かかるとしても、このデバイスを使えば、自然な発声ができる、ということであればそれだけの価値はある、と。

などとわけのわからない事をいうおじさんに対して、説明者は根気よく理由を教えてくれる。なんでも想定しているユーザがあまり自由に手を振り回せないのだそうな。それ故、操作性にも気を配らなくてはならない、と。

でもなあ、とうるさいおじさんは続ける。いろいろな事情はあるのだろうけど、パネル選択が切り捨ててしまっている音声の大切な要素を、自由に操れる入力装置を作れば絶対価値があるとおもうのだけど。。世の中に狂ったようなインタフェースはいくらでもある、自転車しかり、バイオリンしかり(以下省略)

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この発表者が所属している研究室では「不便益」という面白い概念を提唱しているようだ。(サイトはここ。↑の研究はここ

非常に興味深い取り組みだと思う。発表されたものを聞いている限り、まだこの新しいコンセプトに関しては試行錯誤段階と思うが今後の発展に期待したい。

これは前に働いていた会社でデザイナーの人から聞いた言葉だが

「一輪車」

について考えてみよう。一輪車はそれこそ「狂ったようなインタフェース」である。自転車よりさらに非人間的だ。

ではなぜ子供(なぜか女の子ばかりだが)は一輪車に乗りたがるのか?また不便であるがゆえに、それを達成したときの喜びは大きい。そして使いこなせば、自転車とは違った面白い操作ができる。これも不便益じゃないですか?違いますか?そうですか。


Google Dev Quizが終わって

2011-09-13 07:01

というわけでGoogle Dev Quizが終わったわけだ。

前にも書いたが、より詳細に自分が何をしたかを書いておく。

ウォームアップクイズ:Tweetを参照すると人によって表示される問題が違うのだそうな。少しググレばでてくる問題ばかりだたったので10分くらいで終了。

分野別クイズ:
これはまず「何を解くか」について悩む。
Web Game:Chrome Extensionについて勉強しましょう
Go! : Go言語について勉強しましょう。
Android:Androidで何かを動かしてみましょう。
Google Apps Script: Scriptを勉強しましょう。
一人ゲーム:これはアルゴリズムだな

というわけで、この機会に新しいものを勉強しよう、と思う。Androidにまずとりくむが、問題文を読んで絶望する。

以下の AIDL で定義されるサービスを持つ Android アプリケーションを配布します。インターフェースを利用し、解答コードを手に入れてください。

AIDLって何?書いいとうコードを手に入れるって何?添付されているAIDLとやらをみて

「きっとAndroidアプリ間のインタフェースを規定したものに違いない」

と思い込む。あれこれ調べる。ああ、Google検索って素敵。MacにAndroidの開発環境を詰め込んで、動かして、、とやったらなぜかエミュレータが立ち上がらない。別のMacではすんなり動いたのでそちらで作業。

要領が分かってしまえば話は簡単でした。画面に表示されたコードを打ち込むと、点数が加算される。これでほっと一息。

次にGo!にトライ。pngの色数を調べるコードを書け、とのこと。

そうか。これはきっとpngのフォーマットを解析して、Decodeで、、、といきなりpngについて調べだす。

これは一筋縄ではいかない、とGo言語の仕様を見ればpngのDecodeが標準でついてるじゃん。何をやっているんだか。息子が筆算の試験で「引き算なのに、足し算と思い込んで不正解」というのをよくやっている。「ちゃんと問題を読みなさい」と言っていたのだが、他人に説教たれている場合じゃない。

というわけで書き始めるが。。パッケージ読み込みとpngのdecodeのところで何故か躓く。Quiz終了後他の人がアップロードした正解を見ると大筋あって行ったようなのだが、なぜかコンパイルが通らない。こういう時にマイナーな言語はGoolge先生の教えをうけられなくて困る。おまけにGoというのは検索語としてあまり適当ではない。もっと変な名前にしてくれればよかったものを。

というわけでGoは諦め、Web Gameに切り替え。

これは神経衰弱。最初の一面は手でも解けるがきっとそのうちものすごい数のカードがでてくるのだ。

しかしそもそもChrome Extensionってどうやるの、というとこからスタート。一番肝になるコードは与えられているので、Hello Worldが表示出来れば話は簡単である。

動かすと、どんどんページが進む。そのうちカード枚数が1024というページにつきあたる。さすがに時間がかかる。数分かかったかな?

そんなページが何枚も続く。朝出かける前に動かし始めたので、そろそろ出発の時間が気になる。そもそも総当りはあまりにも芸がない。既に裏返したカードはスキップするように改造しようか。いや、もう少しで終わる、いや時間がない。
しょうがない、と改造を決意したところで全部のゲームを解き終わった。これで100点獲得。

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この時点ではまだボーダーラインが70点くらいだったような気がする。しかしそこから100点までの間にはあまり人がいない。つまり遠からずボーダーラインが100点を超えるに違いない。というわけでスライドパズルに取り組まざるを得ないわけか。。

スライドパズルとは、いわゆる15ゲームのように、ボードをスライドさせて順番を揃えるものである。ひねりが二つあり

・動かせない「壁」が存在している
・各手順(左、右、等)の総数が決まっている

さて、どうするか。

まずGoogle先生にお伺いをたてるのはいつものこと。すると「幅優先ではメモリがたらなくなります」とでてくる。そうだよなあ。きっとすぐ爆発するに違いない。

というわけであれこれ探し続ける。するとA*なるアルゴリズムがあることを知る。懐かしいOperations Researchで習ったような内容だ。深く考えずこれで行こうと決める。

このアルゴリズムでは、各状態の「ゴールへの距離」を定義する必要がある。最初は単に「各ボードが最終位置からどれくらいズレているか」で計算していたが、そのうち壁の存在を考慮する方法に切り替える。

動かしてみると、まず最初の問題がいつまでたっても終わらない。10分くらいは動かしていただろうか?各状態の「ゴールまでの距離」を表示させるのだが、さっぱり収束している気配がない。

これはいかん。そもそも問題は5000問もあるのだ。こんな調子では前に進まない。というわけで時間制限をもうけ、数日動かせば5000問チャレンジできるようにする。会社のマシンにこっそりと忍び込ませ動かし続ける。

とかやって得点は5.9になった。つまり590問解けたわけだ。Twitterを見ると
「4000問解けた。」
とか
「ゴール」
とか景気のよい言葉が飛び交っている。実力差を感じるなあ。しかしこれ以上このクイズに時間を費やすことはできない。そこで打ち止めにする。得点分布を見ると100点台の棒がものすごく長くなっている。他の問題は全部解けたが、このスライドパズルで止まっている人が多いのだろう。100点台の詳細ヒストグラムなど見せてもらえないかなあ。

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終了後Tweetをみると、幅優先+枝刈りでも4000問解けたという人が多い。そうかあ。 幅優先でも結構できたのだな、と思うが後の祭りである。興味深いコメントをいくつか。

スライドパズルの探索アルゴリズムは早々に諦めて、左上から縦横潰すパズル解きを実装。壁なし約1200問のみ倒す情けない作戦だけど、回答に20秒もかからないから地球には優しかったはず(笑)

via: twitter ツイッター検索 from:superrush4x

ううむ。そういう手もあったか。

手法は結果的に焼きなまし風味を加えたA*。本当の両側A*じゃなくて、最初にゴールからある程度を完全BFSしてゴールそのものを広げる感じ。

via: Kohsuke Yatoh (kohyatoh) は Twitter を利用しています

この人は、私が前働いていた会社のスーパーインターンです。私は採用で面接などさせてもらったわけだが、この実力差はどういうことであろう。どうもゴールからもある程度探索するのが良い方法だったのだろうか。

あとAndroidの問題を解くのに、配布されていた「別のアプリ」のソースを見て、エミュレータすら立ち上げないで解いた人もいるとのこと。

これだけたくさんの人がトライする問題だと思いも寄らない「解法」があって面白い。
ちなみに一番笑ったTweet


「3*3がやられたようだな」「ククク...3*3は我らスライドパズルの中でも最弱...」「総当たりに負けるとは、パズルの面汚しよ」


via: @Ryu_Project's (りゅう) recent tweets

3*3くらいまでは総当りでも解けるのだけど、少しボードが大きくなると急に難しくなるというのが体感できた。
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さてボーダーラインは101点前後とのことだが、105.9点の私は参加できるでしょうか?でもあれだよね。参加賞に「総得点」とか書いてあったら泣いちゃうよね。


パーソナル・メインフレームの夢

2011-09-12 07:01

売れるもマーケ、当たるもマーケという本を読んでいた。


原書は1993年に発行されたようだから、今からみると楽しい記述がそこかしこに存在する。例えば

次はビデオゲーム産業のケースである。80年代末、ここの市場は、75%のシェアを持つ任天堂によって支配されていた。二頭の当外馬がいて、それがセガとNECだった。いまでは任天堂とセガが激しく競り合い、NECは遅れをとっている。

売れるもマーケ、当たるもマーケ p83

セガの凋落に涙するより、NECゲーム作ってたの?というところで驚いた。さて、当時下り坂にあったIBMに対する著者のアドバイスはこうだ。

当然考えられる動きは、新しいジェネリック製品を導入することであろう。IBMにとって最善の方法は、高い処理能力を有するワークステーションの新たな製品ラインに「PM」と名付けることかもしれない。かつて見事な成功を収めたパーソナル・コンピュータ「PC」の例にならうのである。「PM」は「パーソナル・メインフレーム」の略称だ。 (中略)

パーソナル・メインフレーム製品がIBMの二つの主要な収益源の足を引っ張りかねない、というのはたぶんそのとおりだろう。しかし、そもそも会社というのは、新しいアイディアをもって自らに刃を向けるほどの柔軟性を備えていなければだめである。変化を遂げることは決して簡単ではないが、しかし予測不能な未来に対処するただ一つの方法なのだ。

売れるもマーケ、当たるもマーケ p180-181

「パーソナル・メインフレーム」美しい言葉ではないか。この言葉は確かに有効に働いたと思う。私が最初に務めた会社では、コンピュータと言えばIBMのメインフレーム。PCも当時IBMがだしていたIBM5550とかいう不思議なものを大量に使用していたのだ。

そこにこの言葉をつければ、一台100万であっても、大量に購入したに違いない。なるほど、これがマーケティング、というものか(違います)

尚、↑の後半で述べている「新しいアイディアをもって自らに刃を向けるほどの柔軟性」というのは、「イノベーションのジレンマ」を表した言葉、と受け取ることもできる。会社で新規事業の提案をすると必ず

「それは既存事業の役に立つべきであって、足を引っ張ってもらっては困る」

と必ず言われる。それは前提とされているのだが、その前提を硬く守っているといつのまにか衰退するかもしれません、、ということななのだろうか。


Androidケータイの終焉(Motorolaを除いて)について

2011-09-09 07:50

Androidを搭載したケータイ電話のH/Wを作ることがビジネスとして成り立たなくなる、とう認識はあまり広まっていないようだ。

2年後くらいに

「ああ、こんなバカな事を書かなければよかった」

と後悔するのを覚悟の上で、以下の記事を引用しよう。

Lead device concept: Give early access to the software to partners who build and distribute devices to our specification (ie, Motorola and Verizon). They get a non-contractual time to market advantage and in return they align to our standard.

via: FOSS Patents: Shocker for Android OEMs: Google document proposes giving Motorola time-to-market advantage to build Android "lead devices"

GoogleとOracleの特許紛争に関連してでてきたGoogleの内部資料である。ここではGoogleの仕様に基づいて端末を作る会社に対して、新しいバージョンのソフトウェアにアクセスを許可し、マーケットにそれらを早く出す上で便宜をはかることを明確に述べている。

今後はGoogleが所有しているMotorolaがこうした恩恵を受けることは火を見るより明らかである。つまり他のケータイH/Wメーカーがどんなに努力したところで勝てるわけがないわけだ。

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DocomoのWeb版カタログを見ると、最初のページから力いっぱい若い女性限定向けだ。

まるで若い女性以外眼中にない、という姿勢だがここまで徹底すれば大したものだ。

しかしこれからどうするんだろうね。国内メーカーがホソボソと作り続けるAndroidケータイに日本特有の「女子向けスキン」を載せて売り続けるのだろうか。国内メーカーはいつまで「ガラスマ」を作り続けられるのだろうか。


WISH2011+に途中まで参加したよ

2011-09-08 06:26

というわけでWISH2011+というイベントに途中まで参加したのだ。
思えばこれの第一回に参加して「この人達は何をしにきたのだろう」と思ったのは2年前。今回はそれに比べてプレゼンの内容、質ともに向上していたように思う。以下感想を項目ごとに。

15:10 オープニングトーク 「日本ならではのベンチャーの作り方」
     株式会社はてな 代表取締役社長 近藤淳也氏

はてなボトルに切れてから、はてなブックマークを除いてとんとご無沙汰のはてなである。いつのまにか社員が90名を超えているのだそうな。
ベンチャーはとにかく潰れないで立っていることが「勝利」である。それを考えれば、90名を超える社員を雇用して安定的に仕事を生み出すというのは偉大なことだ。

しかしいつもの「近藤氏の話」を聞きながら、はてなが新しいサービスをリリースする、と聞いても全然気にしていないことに気がついた。

16:10 パネルディスカッション1
    「日本のベンチャーのグローバル展開への課題と期待」

ベンチャーキャピタルの方々が日本のベンチャーについてあれこれ語る、というパネルディスカッション。面白かったのは以下の発言。


「怪しいベンチャーキャピタルっていますからねえ。その人のブログ、発言などを調べてみるといいと思います。」
「たとえばTwitterで毒吐きまくっている人とかは。。」

この年にしてようやく悟ったのだが、何の媒体であっても「毒を吐きまくる人」というのはできるだけ避けたほうがいいような気がする。(ああ、耳が痛いのはなぜ?)

17:30 パネルディスカッション2
    「新サービス・新製品にとってのソーシャルメディアの可能性」

このディスカッションで覚えているのは一点だけ。

最近の起業家は気持ち悪い、そしてそもそも起業家ではない。

会話を聞きながら「確かにそうだなあ」と思う。この気持ち悪さはどこからくるのか。

CEREVOの岩佐氏はもうしゃべりたくてたまらないようだ。(それをうまく抑えていた徳力氏は見事だと思う)しかし彼が創り上げたプロダクトを知っている身としては

「プロダクトで語れ」

としか言うことはない。ああ、気持ち悪い。いやちょっとまて。直前のパネルディスカッションで

「日本は起業家に対してネガティブすぎる」

という議論を聞いたばかりではないか。よし、ここはSan Jose convention Centerで彼らは全て英語で会話している、と脳内変換するのだ。ここはシリコンバレー。ほらポジティブに聞こえてきたでしょう?

だいぶ自分に言い聞かせたが無理だ。やっぱり気持ち悪いものは気持ち悪い。

それで以下がメインイベント、新しいサービスのプレゼン。例によって「プレゼントして私がどう感じたか」だけを書いていく。

1. 宅麺.com

シンプルかつ体育会系のノリをもったプレゼンは悪くなかったと思う。提供しているサービスもリアルの世界、人間にしっかり根を下ろしたもので好感が持てる。そもそも私はラーメンというものをあまり食べないのだが、カレーで同じサービスがあれば利用したいと思う。どうですか。日本のカレーも世界に誇る食材です。宅カレー.comを立ち上げてくれませんか?

とはいえ残念ながらプレゼンのリハーサルが少し足りなかったように思う。「この人達を世界に引きずり出したいんです」を繰り返しすぎたせいか最後に時間オーバー。あとなんで「誰もが自分たちのサービスを知っている」というところからプレゼンを始めるかね。

2. giftee

あとで調べれば今回はこのサービスがふたつ受賞したらしい。オシャレに綺麗にまとまったプレゼン。サービスの内容も

「ネットだけの知り合いで住所をしらなくても、小さなギフトを送ることができる」

というニッチに徹した気持ちのいいサービス。

3. たべにこ

社長が「こういうプレゼンは若い人がやったほうがいいだろう」ということでプレゼンしたのだそうな。まずやたらと仕込みをしていることが外観から伺える。なにやら手袋のようなものをして

「ウィッシュ」

といって思い切り外す。7分という短いプレゼン時間の中で、会社の紹介ばかりでなく自己紹介まで始めるのに唖然とする。

今回WISH2011のプレゼンに応募しながら果たせなかった会社はいくつもあるはずだ。そうして得た貴重な時間を自己PRに使うわけ?

あんた自社のサービスをアピールにきたの?それとも自己顕示欲を満足させにきたの?こういう人間にプレゼンをさせるってどういう会社?

そこで切れてしまい、アルゴリズム開発にとりかかったので何の会社かは知りません。
(↑こういう毒を吐きまくる人は避けましょう)

4. iQON

今回のプレゼントしてはダントツNo.1.まず画面に2枚の写真をだし

「どちらかがVogueでどちらかがiQONで投稿された画像です。どちらがVogueでしょう?」」

と会場の人間に手を挙げさせる。みんなほとんど正解(やはり出来に差があるのだ)だが

「半々ですね」

といって笑いを取る。様々なファションの写真をweb上で組み合わせコーディネートした形で公開できるサービス。サービスも内容は私のような人間からは遠いところにあるのだが、プレゼンはテンポがよく要点を外さない。

残り一分になったところで「未来ビジョン」のストーリーを始める。大丈夫か、と思ったが笑いをとりながらみごと時間通りに終わった。お見事。

5. Snapeee

写真をデコれるiPhoneアプリ。驚いたことに、台湾と香港だけでダウンロード数の46%を占めている。日本は3位なのだそうな。

つまり生まれながらにして海外育ちというわけだ。というわけでサービスは面白いのだが、プレゼンは単調。綺麗にまとまってはいたけどね。

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ここで力つきてかえる。

最後に懺悔です。

各社のプレゼンが始まる前に「恒例となった」パンが配らえた。

あとで画面をみて「一人2個程度」だったことを知る。

最初に3個とって、まだ余っているみたいなので2個とり、合計5個たいらげたのは私です。すいません。


Quizを解くのだ

2011-09-07 07:04

Google Developer Dayというのが開かれるそうな。問題はそれに参加しようと思うと、DevQuizをとかなくてはならん、ということだ。得点が高い人から招待状が送られるとのこと。参加の可否を運に任せるとしても、最初のウォームアップクイズというのはとかなくてはならない。

問題は三つのカテゴリに分かれており

1)ウォームアップクイズ:ネットにつないで20分も調べれば大丈夫(40点)
2)分野別クイズ:Google機能拡張で神経衰弱、D言語でpngの色数しらべろとか5問中2問の得点が加算される(60点)
3)15ゲームのようなパズルを5000問解く(50点)

毎日得点分布が発表される。30点からなだらかに0にむかって減少していく山がある。これは最初のウォームアップを解こうとして面倒になった人たちだな。

次に70点に小さな山がある。これは分野別クイズを一問だけ解いた人。

一番大きな棒は、100点にある。つまり分野別クイズまでは解けたのだが、最後のパズルで止まっている人たちだ。ちなみに私もここにいる。

毎日招待状をもらえるボーダーラインも更新される。32点→40点→54点→62点→70点→76点とか遷移してそのあと92点となった。山を見ればそこにはほとんど人がいないことがわかる。と思っているうち「100点前後」になった。つまり最後のパズルを解いてなおかつちゃんと点を出さないと通らないわけだ。

Twitterからの情報だが

朝の定点観測。DevQuiz1問以上提出したのは2,322人で現ボーダーラインはついに100点となった。依然1日100人増。100点台は44人増えて824人に。満点が3人に。110点以上の人は172人→202人

via: (2) Twitter / 検索 - #gdd11jp

とのこと。100点台の棒を抜け出さないと無理そうだね。ああ楽しい。(ちなみに私が前働いていた会社にいた「スーパーインターン」は適当に書いて一晩動かしたら4300/5000問解けたのだそうな。実力差を感じるなあ)

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さて、そのGoogleだが最近方針の変更が目立っている。

一方Googleは、その広大な製品群の平原で、この夏をめいっぱい使って、大量の雑草駆除を行ってきた。同社の実験的遊技場だったGoogle Labsはどうなったか? 刈られた。昨年$182M(1億8200万ドル)で買ったSlideは? 刈り取られた。昨年$50M(5000万ドル)で買ったAardvarkは? これも姿を消した。十把一絡げで袋に放り込まれていた、さまざまな製品やサービスは? 完全に刈られた

(中略)

それは、Googleにとって良いことか? ビジネスとしては、もちろんイエスだ。同社は焦点を絞り、製品を整理し、社内の官僚主義を減らさなければならない。しかし同時に同社は、独立した実験的なプロジェクトの多くを閉鎖または放置して、Google PlusやGoogle Offersのような人真似プロジェクトに注力しているのが現状だ。Googleはいつから、その優れたアルゴリズムとスケーラビリティによって革新と変貌を続ける企業から、利益のために他社の真似をする企業に落ちぶれてしまったのか?

via: 「技術」の時代は終わり「経営」の時代に変わる-AppleとGoogleの変貌の意味

日本語のニュースには、Google Labsが閉鎖とか断片的に話が伝わってくるだけだが、このように並べてみると彼らの方向が明らかにシフトしていることが伺える。

いつの日かGoogleもMicrosoftのようになるのだろうか。そしてその最大の価値は、人材を育成し、新しい分野のベンチャーに送り込むことになるのだろうか。そうなるかどうかはもう少し時間をかけてみないとわからない。


続:ガラスマ(笑)

2011-09-06 06:44

いつもながら、こういう記事に顔を名前を出せる度胸には関心する。

―― 開発陣には女性がいないと聞いていますが本当ですか?

池田氏 はい、ほぼアラフォーの男性ばかりです(笑)。ただ、フィーチャーフォンの女性向けモデルやスライドモデルで培ったノウハウを生かしたり、分からないことは素直にターゲットユーザーである女性に意見を求めたりできたので、男性ばかりでも問題はなかったですね。

via: 開発陣に聞く「P-07C」:大画面がいい、でも片手で操作したい――二律背反に挑戦したパナモバ初のスマートフォン「P-07C」 (1/2) - ITmedia +D モバイル

ガラケーの道には迷いがないが、ガラスマの道にも迷いがない。何度も言ってるけど

「意見を聞く」

のは駄目だってば。(誰も聞いてません)

池田氏 我々が男性ばかりだったので、とにかくたくさんの女性の意見を聞くことを繰り返しました。皆さん好き勝手に言いますが(笑)、それをまとめると「画面は大きい方がいい。多少大きくても、持ちやすさやデザインがかわいい方がいい!」という声が多かったんです。我々としては、どこが本質かをしっかり見極めることができたと思っています。

via: 開発陣に聞く「P-07C」:大画面がいい、でも片手で操作したい――二律背反に挑戦したパナモバ初のスマートフォン「P-07C」 (1/2) - ITmedia +D モバイル

こういうメンタリティだからあのような製品を世の中に出して恥じるところがないのだな。羨ましい気もする。

彼らの女々しい言葉と、小悪魔アゲハ編集長のこの男らしい言葉を比べよう。

「読者の心をつかむコピーを考えようとするとき、『読者に憑依する』。といっても別人格になるわけではない。私自身がこうなりたいと思う気持ちがあることしか書けない。だから読者に憑依するといいながら、結局自分そのままの気持ちなんですけど(笑)」

中略

「好きなモデルややりたい髪色や欲しい服は人によって違うけど、唯一共通しているもの。それが『本当の気持ち』。『本当の気持ち』だけはみんな共有できる」(⇒なので、読者じゃない人がよむと、特に共感はできないかもです)

via: 『小悪魔ageha』中條寿子編集長が語る 読者に憑依して書く「キャッチコピー力の極意5カ条」とは? « 編集者.jp | あの本を作った編集者の哲学・仕事術

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聞きたいんだけど、ITMediaの記事に顔を出している人たちは、自分でこのガラスマ使ってるんだよね?こう公言するくらいだから。

村本氏 デザイン、UI、プリインアプリなど、ターゲットユーザーの方々に満足いただける端末に作り上げたという自負があります。自信を持って市場に出していける端末ですので、皆様よろしくお願いします。

via: 開発陣に聞く「P-07C」:大画面がいい、でも片手で操作したい――二律背反に挑戦したパナモバ初のスマートフォン「P-07C」 (1/2) - ITmedia +D モバイル

意外性をもった情報とは

2011-09-05 07:14

先週はWI2という研究会に行ってきた。

話題には登るのだけどなかなか話が進まない問題というのがいくつかある。情報推薦における「意外性」というやつもそのひとつではないかと思っている。あたりまえの推薦ばかりじゃおもしろくないよね。じゃあ意外性を持った情報を推薦しよう、という話はずいぶん前から話題として登っており、実際真面目に取り組んでいる研究もあるのだがなかなか話が進まない。

WI2参加中に、このようなTweetを見つけた。

アテンションが向いている座標系から暗黙的な座標系に一端変換した上で距離を計算し、近距離のものの座標を再び逆変換することで、アテンションは向いていないが潜在的に興味を持ちうるアイテムを推薦できる。

via: gnsi_ismr (gnsi_ismr) は Twitter を利用しています

こういう考えは面白いと思う。問題はこの「座標変換」だ。どうやって座標変換を行うのか?ペレリマンのポアンカレ予想の解決にも似たような下りがあったような。離れている場所が実は近傍にあるとかなんとか。

その昔某所で「そもそも旅行で出会った意外な情報とは」というインタビューをやったことがある。これは実に面白かった。「意外で面白い情報」というのはあごが外れるほどバラバラなのだ。でもそこからこういう一つ取り出せるのは

「過去の自分の経験と繋がっている情報」

というやつである。ああ、そういえば、、と自分の過去と合わせて思い出される情報。これは結構意外性を持っていて面白い。

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と人前で話したら


「ああ、それはこういうアルゴリズムを使えばだせますよ」


とさる高名な研究者にコメントされた。いや、アルゴリズムはいいけどそもそも何をどうモデル化すればいいのか、そこから議論しようとしているときにいきなりアルゴリズムだされても、、これだからアルゴリズム原理主義者は嫌いだ。


IKEAのソフトクリームとAndroid端末

2011-09-02 05:14

昨日家族で外出することがあった。帰りが遅くなったので奥様が「どこかで食べて帰りましょう」と言う。向かった先はIKEA。
IKEAではうまくメニューを選べばかなり安く食事をすることができる。おまけにソフトクリームは50円だ。ここ数日
「IKEAのソフトクリームが食べたい」
といっていた娘は大喜び。食べながら

「なんでこんなにソフトクリーム安いの?」

と聞く。

それはね、IKEAは家具をうることでもうけていて、ソフトクリームでは儲けなくていいからなんだよ。だからソフトクリームだけ売って商売しているお店は、絶対に価格でIKEAに勝てないね。

その証拠に見てご覧。お母さんは何か買いに行っているだろう?IKEAはこうやってお客さんに来てもらって、あれこれ買ってもらえればいいんだよ。

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というわけで話はいきなりAndroid端末である。Googleは端末のH/W製造でもうけを出す必要が無い。

グーグル側は『Androidビジネスの広告収入によって、投資は回収した』と発表しているように、一国のキャリアやメーカーに配慮しなくともペイできている。

Android端末はケータイ業界の福音か? 無償OSでも原価アップ"スマホブーム"に泣く企業 (サイゾー) - Yahoo!ニュース から引用

Androidを利用した端末が普及すればするほど、広告収入は増える。もうけはそこから出せばいいのであって、H/Wは原価で売ればよい。

こうなるとIKEAのソフトクリームと同じ状態である。つまりAndroid携帯だろうがタブレットだろうがもうH/W製造に関してはビジネスにならない。





iPhoneが爆発的に売れ、各メーカーはスマートフォンの開発が急務に。ここで世界標準だったAndroidを採用したのですが、ノウハウがなかった各メーカーは自分たちの開発部署では対応しきれず、海外メーカーの技術を使わざるを得なくなった。そして、メインのCPUを海外製にしたことで、周辺機器についても自社開発が困難になり、結果、原価5~7万円という高額な機種になっているんです



Android端末はケータイ業界の福音か? 無償OSでも原価アップ"スマホブーム"に泣く企業 (サイゾー) - Yahoo!ニュース から引用

そもそも全世界に同じハードウェアを展開しているHTC、サムソンに勝てる訳もなかったのだが、今後Gomolaの誕生によってその傾向は加速するだろう。

合理的に考えれば、HPがPCのH/W事業を切り離したように、日本のメーカーも携帯電話事業を採算が取れる線まで縮小させる-多分のこるのは少数の二つ折ケータイとらくらくホンだろう-のだろう。問題はその決断を早く下す事ができるか否か、である。

迷いのないガラケー道を高らかに宣言していた富士通は最近よく車内広告を出している。ものすごい画像エンジンをつんでいるから、カメラが奇麗です。宇宙服にも使われている素材を使ってます。タッチパネルの感度がものすごくいいんです。

読んでいるうちに悲しくなる。ユーザからみてタッチパネルの感度に影響する要素は大きい。H/Wももちろん重要だが、それは一部でしかない。その上で動作するOS,アプリ、それらがそろって初めて

「サクサク動くタッチパネル」

が実現できるのだ。そうして自社独自技術をアピールしている間に、Gomola(日本人ならゴモラと発音しよう)は50円でH/Wをばらまき始めるのだが、、独自技術で差別化でしょうか?

(追記)

 しかし韓国政府はこれに懸念を示し、サムスンとLGにアンドロイドを放棄し、韓国企業の共同開発により、国内で新たなOSを開発するよう求めた。韓国商務部副部長は、「長期的に見れば、現在のようにグーグルに依存し続けるわけにはいかない」と政府の懸念を表明している。グーグルがモトローラが生産する機種に対して優遇措置をとれば、サムスンやLGなど、ほかのスマートフォンメーカーは必然的に不利になる。

  一方で記事は、「アンドロイドが世界のスマートフォン市場の53%以上のシェアを獲得していることから、サムスンやLGがアンドロイドを放棄するかどうかは疑問だ」と報じ、サムスンがwebOSを買収するといううわさが流れたが、サムスン側はこれを否定したと報じた。

アンドロイドを放棄し、対抗OSを開発せよ 韓国がサムスンに要求 2011/09/01(木) 11:55:54 [サーチナ] から引用