Microsoftの蹉跌

2013-06-24 06:35

しまった。こんな面白い話があったとは。。

話はXBox OneのE3発表以前に遡る。Microsoftがこう発表した。

「Xbox Oneは最大で24時間,オフラインでプレイできます」

via: Microsoftが「Xbox One」の常時接続や中古売買などに関する,多数の疑問に公式サイトで回答 - 4Gamer.net

つまり、24時間ごとにオンラインで認証をしなければゲームができなくなる、というやつだ。考えてみればiPhoneとかiPod touch上でゲームをしている場合、こういうことは意識せずに行なっている。両方共常時接続が前提だしね。

スマホがこれほど普及したんだから、こうやってもいいだろう、と誰かが決めたんだろうな。

しかしゲーム機というのはそれ自体長い歴史と文化を持ってきた製品だ。私のような人間はそもそもXBox oneを買おうと思わないが、それに大枚払ってきた人にとってはこの変更は大問題だったらしい。

大きな反対の声が巻き起こった。しかし話はそこではとどまらない。「文字を読むだけでは驚くと思うけど、今の使い方を調べてみたら、99.99999%のユーザは全く影響がないことを確認しているんだ」とか適当に答えておけばよかったのだが。

どうも今Xboxのトップをやっている人は正直な人のようだ。彼はインタビューに対してこう答えた。

Xbox chief Don Mattrick, in response to the backlash over the Xbox One requiring an internet connection, said that "fortunately, we have a product for people who aren't able to get some form of connectivity, it's called Xbox 360."

via: Xbox chief: we have a product for people who can't get online, it's called Xbox 360

【要約】インターネット接続ができない奴はXBox360でも使ってな

確かに今時、24時間に一回インターネット接続ができない人はあまり多くないのかもしれん。(先進国では)しかしそれを言っちゃいかんだろう、というやつだ。

引用元のビデオを見てもらえばわかるが、これは決してインタビュアーが意図的に誘導して引き出した言葉ではない。Microsoftの人はペラペラと自分からこの言葉を述べている。つまり弁解の余地はない。

かくしてこんな見出しが作られることになる。

パンがなければケーキを食べればいいじゃない。
インターネット接続がなければ、XBOX360を使えばいいじゃない。

おそらくSonyの幹部は今年のE3の発表順に、そしてこの発言に感謝したに違いない。

「中古ゲームに制限をつけないよ」と言っただけで満場の大歓声。ただこの歓声はたとえばJobsがiPhoneを発表したときのそれとは若干異なった雰囲気を持っていると感じるのは私だけかな?それは喜び、驚きというよりは怒りの声に聞こえる。

この物語は、Microsoftが様々な制限を撤廃したところで幕を下ろす。

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私は最初に「Microsoftは常時接続があたりまえだと考えた」と書いたが、これはかなり好意的な見方だ。なぜならMicrosoftはこうも宣言していたから。

"Similar to the movie and music industry, games must meet country-specific regulatory guidelines before they are cleared for sale," A rep from Microsoft confirmed to Digital Trends. "We will continue to work with our partners to follow these guidelines with Xbox One."

via: Xbox One Region Lock Confirmed by Microsoft | Digital Trends

映画や、音楽に国別のロックがかかってるんだから、ゲームもそうするよ、という宣言だ。

ここでは、「国ごとに個別の制限があるから」とリージョナルロックを正当化しているが、今の区分けをみればそんなのがキレイ事だというのは誰の目にも明らかだ。

今DVDやあれこれに存在しているリージョナルロックがユーザのためではないことだけは確か。つまり現世代のゲーム機戦争で勝利を収めた(と多分自分たちは思っている)Microsoftはその権力を利用しようとした、、というのが多分正しい見方だろう。

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これらは、全て「沈みつつある船の中でのいさかい」のようにも見える。古くからのユーザの声を尊重しようが、無視しようが、ゲーム人口の減少を食い止めようとしているようには見えない。新日本プロレスと全日本プロレスの戦いのようなものだな。

唯一違う視点で戦おうとしている任天堂の運命だけが気にかかる。最近子供たちは「新トモダチコレクション」の話をよくしてくれる。彼らはDSを持っていないが、友達に貸してもらったり、あるいは息子の場合クラスメイトが勝手に息子のキャラクターを登録したのはいいが一度も食事を与えてくれないのだそうな。

Wiiのマリオを買えば、いつまでも遊んでいられる(つまり先に進まない)うちの子供達のような人にとって、任天堂が唯一のゲームメーカーだ。岩田社長の運命やいかに。勝負は年明けには明らかになるだろうが。