栄枯盛衰

2008-12-17 08:06

トヨタの業績が急速に悪化しているのだそうな。

少し前まで

「自動車業界はしばらく大丈夫でしょう」

というセリフを何度か聞いた。それを聞くたび私はあることを思い出していた。


もう20年以上前になるが、私は大学を卒業しある会社に勤めだした。上司は他事業所から転勤してきた人だった。

最初に務めた会社は、いろんな事業を手掛けていたから、どこかが不況になっても首をきらず「配置転換」をしたわけだ。

その上司が以前従事していたのは造船業。私がまだ物心つくかつかないかのころ、造船業は日本の花形産業だったのだ。しかしそれから10数年で状況は変わった。当時は造船という名前だけで学生もこないわ、会社のイメージは悪いわで大変だった。

ある時その上司がぽつりと言った。

「少し前まで造船業には仕事が”無限”にあると思っていた」

その言葉は今でも私の頭に焼き付いている。それから20年余り。いろいろな産業が「花形」「今後10年は大丈夫」ともてはやされた。そう。あたかもその産業には「無限の可能性」があるように思われたのだ。

遠く知らない土地に転勤してきて、全く初めての仕事に四苦八苦してた上司の姿を新入社員ながらに覚えている。

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もうひとつ考えることだが、こうした「産業の栄枯盛衰」というのはたちの悪い椅子取りゲームのようなものだ。

衰弱の引き金を引いた人たちは、多くの場合「勝ち組」のままで「上がり」を迎えることになる。貧乏くじを引く人というのは、たまたま衰弱が始まったときにその椅子に座っていた人達。

世の中がフェアにできていると言った人間はいないが、あの上司を思い出すたびその感を強くする。