映画評:ノウイング

2009-07-22 06:47

試験の夢をみた日は、本家から転載。

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予告編を見る。ニコラス・ケイジである。飛行機が落ちてくる。ということは、きっと能天気な"地球が危機だよん映画"に違いない。

そう思って見始める。50年前、とある小学校でタイムカプセルを埋めることになった。みんなは未来の絵を描いたが、一人だけ数字の羅列を書いておさめた少女がいた。

ここで話はいきなり50年後になる。ケイジ君はMITの教授。最近のMITでは講義に学生がみんなノートPCをもってくるのだな。(時々持ってきていない学生も混じっているのがリアルだが)

おっと、忘れていたというわけで教授が息子の小学校に行く。タイムカプセル開封の儀が執り行われるのだ。なんだこの数字の羅列は、というわけで教授が解析を始める。

こ のシーンにはComputer Nerdの端くれとして突っ込まずにいられない。映画ではホワイトボードに数列を書いた後解析を始めるのだが、MITの教授ならまずコンピュータに数列を 入力するだろう。一旦デジタルに変換すれば解析し放題。なんなら、日付と緯度経度をGoogle Mapにプロットするプログラムだってあっというまに作れる筈だ。

なぜそんなことを考えるかと言えば、そこまであまり隙がなく重苦しい雰囲 気で話が進むからだ。数列が表しているのは大規模な死亡事故のおこる日付と緯度経度。そうとわかればケイジ君が大活躍し事故を回避、とはならない。(そう なってくれればもっと気楽に見られるものを)数列の最後にはEEと書いてある。他の人すべてが犠牲になる、と。それはどういう意味か。それがわかるところ は唐突と思うが終末に向かって映画は神妙に歩を進める。ケイジ君はにこりともしない。ヒロイン役は美しいがどことなく幸が薄そうな容貌。彼女が途中から暴走しだすのだが、おいつめられた人間とはそうしたものかもしれん。

映画としての出来はミストに及ぶべくもない。しかしケイジと息子の別れでぐっとくる。ええい、息子を持つ父親にこんな映像を見せるとは卑怯ではないか。こんな映画に1080円の値段をつけろというのか。

しかし映画の神様は私に味方した。どうもCGの予算があまったらしい。その後冗漫かつ派手なCG満載のシーンが続く。そこで感動は薄れ、私はこころ穏やかにこの値段を付けることができるわけだ。いや、そんなに感動を忌避するわけではないのだが。

ちなみにベートーベン交響曲第7番第2楽章が2カ所で使われている。この映画だとただの悲しげな音楽になってしまう。第一楽章、第四楽章がはいる余地はこの映画にはないからね。それらを盛り込めたらあるいは傑作と成り得たかもしれないが。

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いや、まさかこんなに真面目に重い印象を持つとは思わなかった。

子供ができてからというもの、映画の感動するポイントはずいぶん変わってきていると思う。独身のころみて"なんだこれは"と-1800円をつけたLife is Beautifulは今みたら、、どうだろう。イライラしつつも、あの状況で子供に

"これはゲームなんだ"

と言い、最後の瞬間までその嘘を貫き通す父親の姿をどう思うのだろう。そう思えば、駄作だと思いながらいくつかのシーンが頭に焼き付いているな。