映画評:ココ・アヴァン・シャネル

2009-10-02 07:02

書きたいことはあるのだが、本日は本家から転載

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私でも知っている(そして買ったことはない)シャネルというブランドの創始者のお話。

孤 児院を出、裁縫の仕事につく。そのかたわら芸能界を目指すが、挫折する。なんとか今の境遇から脱出したい、と飲み屋にきた男のところに転がり込む。この男 とココ(主人公の通称)の関係は面白い。男は"お前は俺のゲイシャだ。俺のためならなんでもやれ"と言い放つが、完全にそれだけではない。女性だが所詮居候なので、使用人達にも見下 される。彼女は自分が得意な、そしてやりたい事がわからないまま何度もそこから出ようとし、また舞い戻る。それしかないのだ。

そうした過程の中で彼女は徐々に自分のファッションスタイルを主張しだす。私はファッションという言葉から遠く隔たったところにいるのだが、それでも20世紀初頭の

"全身装飾のかたまり"

の女性達の中彼女が歩いている姿はエレガントというかかっこいいと思う。自分の瞳の色にあった黒を基調としたシンプルな姿。

さて、最初に転がり込んだ男のところで別のチャーミングな男性に出会う。彼が彼女の中に何を観たかはとても興味深い。羽ばたこうとしているが、翼の動かし方がわからず戸惑っている才能を目にする事はそう滅多にあることではない。

こうした彼女の"出口を求めて苦闘している才能と情熱"はスクリーンから痛いほど伝わってくる。お針子をしていたけど、そんな仕事をしたいんじゃない。"嫌悪感に敏感"な彼女にはあるべき姿がぼんやり見えているが、それをどう形にしたらいいのかわからないのだ。

と思っていたらいきなりお話が終わった。Wikipediaで調べてみればココの人生はそれからも波瀾万丈の連続だったようだ。映画3部作にできるくらいの。そのためバッサリ切るという選択肢もありなのだろうが、いささか驚く。

主演はアメリの人。この映画に関して言えば順調に歳を重ね、それっぽい顔つきになったと思う。最初に彼女を拾う男、そしてかっこいい英国人もそれぞれ役にはまった感じ。終わりの唐突さが気になるが、少なくともシャネルという人について調べてみよう、という気にはさせられた。

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Wikipediaをみて驚いた。この後も彼女はいきなり会社を閉めたり、ドイツ軍とうまくやったり、と本当に波瀾万丈の人生だったのだな。

ただのお針子としていきることを拒否し、そのためなら自分の身を売り飛ばすことさえいとわなかった(愛人として生きるとはそうしたことか)彼女の覚悟に畏怖する。私にはそうした覚悟がない。