いわしの頭

2011-02-10 08:22

EngadgetにNokiaのCEOが従業員にあてたメモと称するものが掲載されていた。

ノキアCEOの戦略メモが流出、再生策を2月11日に発表へより引用:

「我々は『焼け落ちるプラットフォーム』に立っている。我々のやり方をどのように変えていくか、決断しなければらない」このような悲壮なメッセージではじまる、ノキア Stephen Elop CEO のメモとされるものが流出しています。情報源によれば、このメモは社内システムに投稿されたもの。社員向けの士気高揚メッセージが社外に漏れるという例はこれまでにもありましたが、今回のメモはノキアの危機感と焦りがひしひし伝わってくる、ぞっとするくらいリアルなものです。CEO本人が認めたわけではないので(認めるはずがないので)「本物」と表現するわけにはいきませんが、「本物である」と証言は複数から得ています。

Engadgetにも主要部分が和訳されているが、興味を持った部分を和訳した。

われわれも火災を起こしたプラットフォームに立っている。そして新しい行動を決めなくてはならない。

われわれの周りにある火災は、ひとつの爆発によるものではない。いくつもの要因が"火に油を注いで"いる。

たとえばわれわれの競合から強烈な熱が発せられている。Appleはスマートフォンを再定義し、閉鎖的ではあるが、大変強力なエコシステムに開発者を引き寄せている。
アップルは、適切に設計すればすばらしい経験をもたらすハイエンド機を売り、そして開発者がそれにアプリを作ることを示した。Appleはゲームのルールを変え、そして今日ハイエンドマーケットを支配している。

次にはAndroidがある。2年間の間にAndroidはアプリ開発者、サービスプロバイダー、ハード製造業者をひきつけるぷラットフォームとなった。最初はハイエンドから始まり、現ミッドッドレンジで勝者となった。そして急速に100ユーロ以下の普及機に進出しつつある。Googleは重力源となり、業界のイノベーションを集めつつある。

低価格機に起こっていることを忘れてはならない。2008年にMediatekは携帯電話のチップセットに完全なリファレンスデザインを提供した。それによって中国メーカーは信じられないペースで携帯電話を開発することが可能となった。ある推定では、このエコシステムは世界中で売られている携帯電話の1/3を作り出している。そして我々からシェアを奪っている。

競合他社がノキアからシェアを奪っている間、ノキアは何をしていたか?我々は出遅れた。大きな波に乗り遅れた、そして時間を無駄にした。当時我々は正しい判断をしていると思っていた。しかし今我々は何年も遅れている。

最初のiPhoneは2007年に出荷された。我々はいまだにその経験に近い製品を出荷できていない。Androidは2年前に登場した。そして今週彼らはスマートフォンにおいて我々を追い越した。信じがたい。

ノキア内部にはすばらしいイノベーションがいくつかある。しかしそれを市場に投入するのが遅すぎる。MeeGoがハイエンドのスマートフォンで勝利を得ると思っていた。しかし今の調子では2011年中にMeeGoを使った製品をたった一つ投入できるだけだ。

ミッドレンジでは我々にはSymbianがある。しかし北米のような主要マーケットでは競争力を持たないことが明らかになっている。Symbianでは増え続ける顧客の要求を満足させることが困難なことが明らかになっている。また開発には時間がかかり、新しいハードウェアの機能を迅速に取り込むことができない。結果として我々が今のやり方を続けていれば、競合他社との差は広がるばかりだ。

低価格帯の機種では、ノキアの社員が冗談半分にいった様に中国のOEMメーカーが"ノキアがパワポの資料を直すより早く"新機種を作り続けている。彼らはすばやい動きと低コストで我々に挑戦してきている。

さらに、そもそも我々は正しい武器で戦っていない、という事実にはただ困惑させられる。いまだに我々は価格帯ごとに機種を開発している。

機種の戦いは、いまやエコシステムの戦いになっている。エコシステムには機種ごとのハード、ソフトだけでなく、開発者、アプリ、Eコマース、広告、検索、SNS,位置情報利用サービス、コミュニケーションそれにいろいろなものが含まれる。競合他社は機種によって我々のシェアを奪っているのではない。エコシステムによってシェアを奪っているのだ。我々はどのようにエコシステムを作り、そして参加するかを決めなくてはならない。

我々はこうした事柄について決定をくださなくてはならない。そうこうしているうちに我々はシェアを失い、時間を無駄にしている。

一時はNokiaといえば、その製品開発手法が、教科書的に取り上げら得るほどだったのになあ。

しかし

今日書きたいのはそのことではない。日本の携帯電話メーカーは世界市場からはとっくにはじき出されている。

そのとき、日本企業の経営者の中に、こうした率直な現状認識の文書を社員に対して発した人が一人でもいたのだろうか?

今日本の電機メーカーは20年前の輝きを完全に失っている。その事実についてこうした率直な文書を社員に対して投げかけた人が一人でもいるのだろうか?