小売業で働く人たち@USA

2011-03-24 07:20

最近この本を読んでいる。



この本の著者の主眼とは異なるのだろうが、今まで読んだ中では以下の一節が一番驚きだった。

「アメリカの小売業界の従業員の多くは、崩壊過程の出身者です。私を含めみな、学校の成績が悪く、教師に対して異口同音に「くたばれ!」などと言っていた人間なのです。」(中略)この業界で働くのは、若年者か移民、そうでなければ理由はさまざまにしろ、これ以上いい職に就くのが難しい人たちである。

隠れた人材価値 より

わが国とは事情が異なるように思う。
ここで取り上げられているのは、メンズウェアハウスという紳士服チェーン店の事例である。そういわれて思い出した。ひげをはやしたおっさんが

"I guarantee it"

ときめ台詞を言いまくるCMを流している企業だ。

これは2009年のもの。私が見ていたのはもう15-20年も前になるのだな。おっさんも老けた。(こちらも老けたが)

そのような境遇で育った人間を採用しながら、どのように会社を回していくのか。この本に書かれていることは

「メンズ・ウェアハウスは、過去にいろいろな問題があった人間や、家庭や職場で苦しい経験をしてきた人間を採用している。必ずしも最良の労働力ではないかもしれないが、だれに限らず人間のポテンシャルを開発することこそ当社の責務だ、という信念がこの会社にはある。」

ほかに面白いと思ったのは店舗が月間販売目標達成をしたときの報酬である。「よければ」一人あたり$20、「大変よければ」ひとりあたり$40である。

この額は米国においてはあまり「生活の足しに」ならない大きさだ。しかし実際にはこの額がちょうどよいと言う。意味をもち、かつ深刻に目指すには少なすぎる額(仮にこの額が収入の大きな割合を占めるようだと、不正が横行するかもしれない)がちょうどよい、ということなのだろう。

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この本はどちらかといえば会社の公式発表を元に書かれている。実際には

「それでも解雇せざるを得なかった人たち」

とか

「実態は違う、という従業員の声」

もあるのだろう。そうしたものまで含めればもっと深く考えることができると思うのだが。