敗者のいないゲーム

2011-07-22 07:31

ワールドカップ女子サッカーで日本チームが優勝した。これは事実だ。

しかし決勝戦に敗者はいなかった。

アメリカ在住の友達がFacebookで教えてくれた動画である。彼曰く

「CBCのレターマン・ショウにUSAチームのソロとワンバックが​出演。宮間あやの試合後の態度についてのソロのコメントに注目。」

その部分を私なりに訳してみよう。(動画の7:06あたりから)(追記:他の記事をみて注釈を追加)

ソロ:日本チームには私の友達がいるの。名前は宮間あやの。背番号8.彼女は最初のゴールをきめ、2番目のゴールをアシストした。

彼女はゲーム前私にメールを送ってきたの。私はワールドカップの試合前に相手チームの選手と話したことなんかなかったけど、そのメールには、プライドと、敬意と(あと何か一つ:訳せません)が込められていた。だから

「結果がどうあろうと、この瞬間を楽しみましょう」

と返事をした。

ゲームの後、彼女がやってきた。彼女は勝利にはしゃいだりしていなかった。(She was not celebrating)彼女はアメリカチームに敬意を表したかったの。彼女はアメリカが敗れたことでどれだけアメリカチームが悲しんでいるか知っていた。彼女はそんなにもアメリカに敬意を払ってくれたのよ。
(「いかに彼女たちの国が敬意を受けるに値するかわかるでしょう」、という訳もあるようですが、よくわかりません"that shows how much respect they have in this nation"と聞こえますが。)

司会者:どんなスポーツでもそれはいいこと、、

私は言ったの「あなたたちはワールドカップで優勝したのよ。日本の歴史の中で初めて。お祝いしなさいよ」と。

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こうしたショーに二人が出演することからして、米国でも少しはサッカーが知られてきたのかと思う。しかしこんなやりとりもある。

司会者:ところでサッカーでは何人審判がいるの? ワンバック:4人。二人はサイドラインにいてオフサイドをみている。オフサイドといってもあなたにはわかんないと思うけど。

この「あなたにはわかんないと思うけど」は何度かでてきた。

何年前か忘れたが、スポーツブランドのCMである選手がサッカーについて語る。そして最期に

「ところで、僕はNCAAサッカーの得点王だ。はじめまして」

というものがあった。Football(日本語でいうアメフト)のスタープレーヤーであればCMでNice to meet you.などと言うはずがない。それくらいサッカーは米国においてマイナーなスポーツだったのだが。

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司会者:(ワンバックに向かって)ところで君はヘディングでたくさん得点しているね。
ワンバック:そうよ
司会者:大学時代体育の授業でサッカーをやった。そのときヘディングの練習をしたけど、後から「ヘディングをやりすぎると脳に影響がある」と聞いた。
ワンバック:(冗談めかして)なんですって?
司会者:それは気にならない?
ワンバック:まあ確かにヘディングやりすぎると影響があるかもね。でもあのゴール(日本戦での2点目)の瞬間は素晴らしかった。あれのおかげでアホになるとしても悔いはない。

このやりとりの前に、ソロが日本戦に関して

司会者:ゲームの最期について話してくれないか ソロ:ブラジル戦?日本戦ね。率直にいって、あれは私がプレーした中で最高の瞬間だった。
この後のセリフがちゃんと聞き取れないため訳さない。しかしソロの言葉からは

「あのゲームに敗者はいなかった」

ことが伺える。

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多くの人が書いていることだが、この決勝戦におけるアメリカチームおよびアメリカメディアの負けっぷりの良さは特筆すべきものだ。そのことを知る人が増えれば、狂ったような日本の報道もいつかはもう少しましになるかもしれない。