パーソナル・メインフレームの夢

2011-09-12 07:01

売れるもマーケ、当たるもマーケという本を読んでいた。


原書は1993年に発行されたようだから、今からみると楽しい記述がそこかしこに存在する。例えば

次はビデオゲーム産業のケースである。80年代末、ここの市場は、75%のシェアを持つ任天堂によって支配されていた。二頭の当外馬がいて、それがセガとNECだった。いまでは任天堂とセガが激しく競り合い、NECは遅れをとっている。

売れるもマーケ、当たるもマーケ p83

セガの凋落に涙するより、NECゲーム作ってたの?というところで驚いた。さて、当時下り坂にあったIBMに対する著者のアドバイスはこうだ。

当然考えられる動きは、新しいジェネリック製品を導入することであろう。IBMにとって最善の方法は、高い処理能力を有するワークステーションの新たな製品ラインに「PM」と名付けることかもしれない。かつて見事な成功を収めたパーソナル・コンピュータ「PC」の例にならうのである。「PM」は「パーソナル・メインフレーム」の略称だ。 (中略)

パーソナル・メインフレーム製品がIBMの二つの主要な収益源の足を引っ張りかねない、というのはたぶんそのとおりだろう。しかし、そもそも会社というのは、新しいアイディアをもって自らに刃を向けるほどの柔軟性を備えていなければだめである。変化を遂げることは決して簡単ではないが、しかし予測不能な未来に対処するただ一つの方法なのだ。

売れるもマーケ、当たるもマーケ p180-181

「パーソナル・メインフレーム」美しい言葉ではないか。この言葉は確かに有効に働いたと思う。私が最初に務めた会社では、コンピュータと言えばIBMのメインフレーム。PCも当時IBMがだしていたIBM5550とかいう不思議なものを大量に使用していたのだ。

そこにこの言葉をつければ、一台100万であっても、大量に購入したに違いない。なるほど、これがマーケティング、というものか(違います)

尚、↑の後半で述べている「新しいアイディアをもって自らに刃を向けるほどの柔軟性」というのは、「イノベーションのジレンマ」を表した言葉、と受け取ることもできる。会社で新規事業の提案をすると必ず

「それは既存事業の役に立つべきであって、足を引っ張ってもらっては困る」

と必ず言われる。それは前提とされているのだが、その前提を硬く守っているといつのまにか衰退するかもしれません、、ということななのだろうか。