出る杭を打つのは日本独自の伝統芸と思っていますか?

2011-11-04 07:06

さて、今日も遠くSeatleから強力な電波を発信し続けるLife is beautifulである。

やっかいなのは、この拒絶反応には「首謀者」がいないこと。裏から操る一人の黒幕がいるのであれば、その人さえ排除できればなんとかなるのだが、リーダーシップを持つ人物を徹底的に嫌うDNAがまるでキラーT細胞のように日本の政治家、官僚、マスコミ、経済界の中にはびこっているので、誰かがリーダーシップを発揮しようとしたとたんに徹底的に叩かれるのだ.

via: Life is beautiful: 「秩序の維持」のために「出る杭」は徹底的に叩く日本

このような論調は多い。自分が好きな人が非難されれば「これは日本の悪いところだ。出る杭をうつから、新しい産業が生まれない」とかなんとか。「自分の好きな人」に否があるって?全ての情報は操作されている。実に汚い陰謀だ。(そもそも自分の好きな人が表舞台に立てたことは、情報操作の結果ではないよ、もちろん)

先日サウスウエスト航空がアメリカで生まれたときの話を読んだ。


「一つの事件で、向こうは12人から15人の弁護士をそろえていたのに、こちらはハーブ一人だったんですよ」とパレットは言う。「よってたかってハーブを、もう起き上がれそうもないほどにたたきのめしました」(中略)

「私の理想主義に対するいわれない侮辱だった」とケレハーは言う。「自分の理想の実現を阻まれたまま手をこまねいていたら、米国という国は私の理想とは全く異質の国になってしまうのだ。我が国の仕組みは相手にわれわれを不当に攻撃する機会を与えるし、しかもそれはなかなか改まらない。だが、その仕組によって不正が正されたことも忘れてはならない」

サウスウエスト航空が起業したとたん、既存の航空会社からの訴訟の嵐に直面した。

TACが満場一致でサウスウエスト航空の申請を受理し、認可を与えることを決定した翌日、ブラニフ航空、トランス・テキサス航空コンチネンタル航空の三社は、このささやかな第一歩に最初の一撃を浴びせてきた。-TACがサウスウエスト航空に飛行許可証を発行することを禁じる一方的緊急差し止め命令を入手したのである(中略)

裁判の結果でた判決は、ダラス、ヒューストン、サンアントニオの航空需要は既存の航空会社で十二分に満たされており、新たな航空会社の参入を許す余地はない、というものだった。

破天荒 p31-32


何度も繰り返された訴訟、下院議員の反対。これが「出る杭は打たれる」行為で無くてなんであろう。ビジネスの成功事例では「常連」とも言える、サウスウエスト航空は、こうした「生みの戦い」を勝ち抜いて生まれることができたのだ。

先日スティーブ・ジョブスがなくなり、多くの人が彼のユニークな経営方法について知ったと思う。しかしまだまだアメリカには強烈な経営者がたくさんいる。Amazon, AMD,サウスウエスト航空もそのひとつ。あるいは、ビジョナリー・カンパニーで主張されているように

「本当に優れたCEOは名前の知られていない人だ」

ということもできる。
これに比べると我が国のCEOはどことなく情けない。いや、もちろん私が知らないだけで強烈な人、面白い人はたくさんいると思うのだけど。