先行する者を追う者

2011-11-22 07:35

というわけでいきなり引用から。

「おもしろい!」と思わせる研究計画書

・先行研究が丁寧にレビューしてあること
・先行研究の問題点を端的に指摘できていること
・問題を解決するための「新しい」アイデアが述べられていること
・「新しい」アイデアに応用可能性や広がりがあること

via: ylab 山内研究室::Blog

この文章を書いた人にとって「おもしろい!」とは既に先行研究が存在している問題領域に対して、解決のための新しいアイディアを提供することらしい。

誰もが気がつかなかった。あるいは気がついていても研究の対象としなかった「新しい問題」を取り上げ、それに対して解決策を提案することは「おもしろい!」の範疇には入らないのだろう。

独創性、という言葉もある。しかし研究業界の「独創性」というのは少し定義が異なっているようだ。

①世界あるいは日本国内で,第1人者あるいはそれに並ぶ高い評価を受けている研究であること.[中略]

②自分が樹立した系統(株),あるいは自分が見つけた疾患(患者)などを有し,それを多くの人が使ったり,引用したりされている場合.

③自分が開発した研究技術,解析手法などを駆使する研究.

④多くの研究者が注目している分野で,自分の研究の位置づけと意義を明確に示すことができ,しかも具体的な研究計画が示されている場合.

⑤全く新しい技術,方法を強い説得力で提案する研究.

via: 若手研究者に求められる「独創性」とは - 生駒日記

4番を見よう。すでに多くの研究者が注目している、すなわち問題としている「問題として確立している」ことが必須条件なわけだ。What の部分は定義済みで、それに対して新しいHowを提案することが「独創的」というわけだな。

どんな業界にもルールがあり、その業界にいる限りにおいてはそれを尊重する必要がある。しかしどんな「業界」であっても多様性があるのが興味深いところだ。

WISSというワークショップの査読者をやらせてもらった。今年担当させてもらった論文のうち3っつは

「先行研究なし」

というものだった(ちょっと誇張して書いてます)だから引用した人たちの価値観からすれば

「おもしろい!」

とはいえず

「独創的」

ともいえない研究ということになる。しかし私はその3っつの論文に巡りあえた事を査読の神様に感謝した。新しい、思っても見なかった問題領域に「そんな解決方法があったか」という提案を見ることほど面白いことはない。

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というわけで(結局宣伝なのだが)WISS2011が12/1-3まで開催されます。物理的に参加するのは定員一杯になってますが、UStream, ニコニコ生放送で是非ご覧下さい。「議論に値しない」という評価をもらいながらも、私もこっそり発表しますが、その時間帯は昼食にいくなり、昼寝するなりして有効に活用いただければと思います。

人によって価値観は本当に様々ですが、見ていただく方にとっても「おわっ」と思える発表があってほしい、と願っています。