車とはなんなのか

2011-12-13 07:12

東京モーターショーに行ってきた。

自動車メーカーというのはひどく保守的で画一的なところである。いくら新しい製品を展示する東京モーターショーと言われても新しいものに出会えることはめったにない。会場を見てまわる。よくもまあみんな

・エコです!電気自動車です!
・車の中の配置を見直しました!一番効率がいいのかはこの箱型です!

と同じようなことを言えるものだ、と思っていた。最後にトヨタのブースを見るまでは。

----
今回のモーターショーを前にして、トヨタは、ドラえもんを使ったCMを放映していた。久しぶりに観たジャンレノがこんなに太っていたこと、ドラえもんを演じて全く違和感がないことに驚いたわけだが、

「ドラえもんか。。」

と複雑な心境になったのも事実である。昔の国民的漫画だよりか、、と。

しかしこれはトヨタが発した明確なメッセージの一つの現われだ、と気がついたのはこのコンセプトカーを見てからだ。

車とは何か?地点Aから地点Bまで出来る限り効率的に人と物を移動させるものだ。他の自動車メーカーは所詮そこから抜け出ていない。あるいは「ドライブの楽しみ」として新しい地点を推薦するとか、走り自体に意味を持たせるとか。

しかしこの提案は車から「走り」という要素を完全に落としている。

トヨタの豊田章男社長は、TOYOTA Fun-Viiを「スマートフォンにタイヤをつけたようなクルマ」と表現したが、これまでにはない一歩踏み込んだ「つながる」を提案したクルマだといえる。

via: 【大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」】 PCとデジタル家電に続いて自動車でも「つながる」がキーワードに ~東京モーターショー2011からITと自動車の融合を探る

評論家の無駄な文章は無視するが確かにこれは「スマートフォンにタイヤをつけたようなもの」である。なぜタイヤをつけたかといえば、そうすれば所有者と一緒に移動できるからだ。理由はそれだけ。

もっと端的に言おう。このコンセプトカーは「車」ではなく

「ネットに接続された、巨大な移動ディスプレイ」

なのである。これには心底驚いた。もちろん世界のトヨタに在籍しているデザイナーからこのような提案がでること自体は不思議でもなんでもない。驚くのはそれを全社的なメッセージとして世界に発信した点にある。

-----
前掲の記事には、こんな文章が続く。

これは自動車とITとが融合することで、未来の自動車はどんなものになるのかを示したものだといっていい。

 ストーリー仕立ての内容はこんな感じだ。

トヨタでは、コンソールにスマートフォンを置けば自動的にカーナビのディスプレイおよびハンドルと連動するプロトタイプを出展

 あるビジネスマンが自宅で目を覚ますと、枕元にあるスマートフォンから、電気自動車の充電状況を確認。すると、現在の渋滞情報やこれまでの傾向をもとにして、目的地までどれぐらいの時間がかかるのかといったことを逆算し、自宅を何時頃に出ればいいのか、渋滞を回避するにはどんなルートを通ればいいのかといったことを指示してくれる。

 出発予定時間を目標に、事前に車の中でプレ空調を行ない、寒い日や暑い日でも車内を快適な室温を設定してくれる。スマートフォンを通じて、音声で自分の好みの温度に設定することも可能だ。

 また、スマートフォンで開錠したのち、自動車に乗るとスマートフォンは車載デバイスとして利用。スマートフォンに蓄積した情報と自動車とが同期して、「マイエージェント」と呼ばれる音声案内を利用し、1日のスケジュールを確認したり、運転中に別の車両が自分の車に接近していることを知らせたり、走行ルートの先に豪雨地帯があるといった情報を知らせてくれる。

 豊田章男社長は、「車と自分が語り合うことができる、未来の車」と、これを表現する。

via: 【大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」】 PCとデジタル家電に続いて自動車でも「つながる」がキーワードに ~東京モーターショー2011からITと自動車の融合を探る

こういう「あたりまえで、つまらなくて、想像力のカケラもない」未来を提示するのが、自動車メーカーの関の山と思っていたが。。何事も過小評価してはいけない。トヨタというのはそれ独自の文化をもつ国のような存在であり、「文化を理解しない未開人」には理解できない奇妙な行動も多いのだが、伊達に世界一になってはいない、ということか。