deim2012にいってきたよ

2012-03-06 07:08

DEWS と呼ばれていることから存在は知っていたのだが、参加するのは初めて。平たくいえば「データベース学会の全国大会」なのだな。というわけで、査読はなく誰でも発表できます。結果として内容は玉石混淆。

データベース学会というから、

「データベースの最適トランザクションの理論的考察」

みたいなものばかりかと思えば、そうではなくWebサービスの話とかが多かった。

しかし

やはり根は「データベース学会」なのだろうか。そのサービスは何がうれしいのだろうか、という問題よりも

「こんな難しいアルゴリズム使って、こんな有意差がでました」

的な発表が多かったように思う。もちろんそうした領域に特化した研究もいいと思うのだが、そこまで割り切っているようにも見えない。

人間を相手としたインタラクションでは、システムがいかにアルゴリズムをひねったところで、情報の精度には限界がある。それ以上なんとかしようと思えば

「精度向上を図ります」

という決まり文句ではなく、インタフェースでなんとかしなければならない。しかしそうした概念はあまりないようだった。

というわけで、二つだけ「これは」と思った発表について書いておく。(あと細かいところをごちゃごちゃと)

好き嫌いラベル付き食材分量を考慮したレシピスコア算出方式: 中川 明莉沙, 高畑 麻理, 中島 伸介 (京都産大), 上田 真由美 (京大)

私は「レシピ推薦に関する研究を見るとかなりの高確率でわめきだす」人間である。理由は単純。うちの奥様の「レシピ決定」プロセスと、それらの研究が前提としているプロセスがあまりにもかけ離れているからだ。

冷蔵庫の残り物をどうしよう、とかたまたま特価になっていた肉を使ったものとか、とにかくレシピの決定プロセスというのは偶発的であり、謎である。

そうした現実を無視して「栄養バランスを考えたレシピ推薦」とかものすごいデータ入力料を前提に述べられても「はあ」としか思えない。

しかしこの研究は大変いいと思った。その人が好きな食材、嫌いな食材を入力させる。それで「嫌いな食材がはいったレシピは推薦しない」だったら、また私はわめきだすところだが、そうではない。

「嫌いな食材がはいっていても、少しだったら気にしない」

推薦システムなのだそうな。これのどこが気に入ったか。人間の嗜好の幅を広げられるのではないかと思うからだ。「嫌いなものを推薦しない」システムでは人間は蛸壺にはまっていくばかりだ。嫌いと思っていたが、おいしいじゃない。そういう発見を促すようなもの。情報推薦システムの根っこはそうであってほしいと思っているのだが。

2段階GrabCutを用いた注目物体の視認性を向上させたサムネイル生成:新井 啓介, 武井 宏将 (早大), 山名 早人 (早大/NII)

これは実に「目的から、手段から評価まで」きっちりそろった発表だった。スマートフォン上でサムネイルを見るとき、そのサイズは限られる。そのため、

「中心となる物体を自動で切り出し、それを拡大して背景の上にのせる」

という試み。よくみると不自然なのだが、サムネイルとして一覧するのであれば、実に効果的だ。評価実験の結果でも、自分が興味をもつものに辿りつくまでのクリック数と時間が半分に減るという結果がでている。

この発表に大変感心したのはdeim2012の発表の多くが

「問題設定、あるいは評価があまりにもおざなり」

といったものが多かったせいかとも思う。まあそんなネガティブな話はどうでもよくて、是非どっかに売って欲しいような実用的な研究だった。

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他に感想をばらばらと

・「意外性のある推薦」という言葉を何回か訊いた。しかし「そもそも意外性とは何か」というところでここ数年停滞しているように思える。

・地域特有の話題発見につながるスマートフォン向け検索サービス: 発見探地図エリアダス:というAndroidアプリはなかなか「実用的」に思えた。しかし名古屋で表示してもらったところ、あまり関係のない単語も表示されていた。会社が公開してるアプリらしく、ものすごく真面目で面白みがない。画面遷移が多すぎるところを改善したほうがいいと思うのだが。

iOS版は、、ときこうと思ったがNTT相手にこの質問は禁句に違いない。実際アプリのログをとってもよい結果がでている、ということだったがダウンロード数は2000なのだそうな。なかなかアプリを公開してもたくさんの人に使ってもらうのは難しい。

・一日目のナイトセッションは「パネルセッション「若手研究者・技術者のリア充」」私は「非リア充」なので「けっ」と思って参加しなかったのだが(そもそも夜眠いし)これは失敗だった。Tweetから引用する。

会場の笑いがだんだん元気なくなってきているような.怖いです... #deim2012


「次にあらふぉーで必要になってくるのは?」 #deim2012
mtsmr 2012/03/03 22:09:41

リアルすぎる・・・リアルすぎるよ・・・ #deim2012
nakamura 2012/03/03 22:10:06

「経済力と忍耐は足して70%であればいい」わわわわ #deim2012
mtsmr 2012/03/03 22:10:39

きっとそうだわ...たしかに、ダンナさん忍耐強そうやし... RT @nakamura: これはリアルなKWI家なのだろうか #deim2012
mayum1n 2012/03/03 22:12:00

さすが旦那さん RT @mayum1n きっとそうだわ...たしかに、ダンナさん忍耐強そうやし... RT @nakamura: これはリアルなKWI家なのだろうか #deim2012
nakamura 2012/03/03 22:12:21

大人ってこわい #deim2012
tekuno47 2012/03/03 22:12:32

絶対に無理だ・・・ #deim2012
nakamura 2012/03/03 22:13:12

結婚ってつらい #deim2012
KiyotakaGoto 2012/03/03 22:14:12

これを観た男子学生の多くが結婚を諦めるのではないだろうかというくらい怖いプレゼンだった #deim2012


「いや、聞きたかったです」と言ったら「聞かないほうがいいと想いますよ」と言われた。それくらいリアルで怖いプレゼンだったらしい。いったい何が話されたのか。

・最終日の神戸大学寺田さんによるTutorial.実世界でセンサーを使って様々なデータを集めアプリケーションを考える試みが大変おもしろかった。確かに音楽を使う分野では数十ミリ秒のディレイがどうしようもなくうっとうしく感じる。それを除去し、なおかつ信頼性のある処理はどうすればよいか。

そうした分野で寺田さんが着実に成果をあげていることがよくわかるプレゼンだった。感動しました。