Google眼鏡にみるありがちな「駄目なコンセプトビデオ」

2012-04-09 07:09

Googleが長らく噂されていたヘッドマウントディスプレイについて情報を公開した。

そのニュースはちらちら目にしていたのだが、記事を読んでみようとは思わなかった。HUD(ヘッドマウントディスプレイ)についてはもう何年も「そのうちはやる」という言葉ばかり聞かされてきたからだ。でもって記事のヘッドラインからは

「とうとう商用化されうるものがでてきた」

ことが伺えなかったからだ。しかしこんな記事の見出しをみては読まずにはいられない。

彼は、実に正しく、こう指摘した。存在しない技術に関する派手なビデオを作るのは、最悪の会社だけだ。

via: Googleメガネを批判する人々

というわけでビデオを見てみた。

確かにこの批判は正しい。このビデオの中には「存在しない技術」がいくつもある。もちろんGoogleには賢い人がたくさんいるので、本当にこうした技術を実現してくれるかもしれない。ここではそれを具体的にあげておく。

・手を使わないで「クリック」する技術:これは何年もいろいろな人が取り組んでいるが、未だに解決方法が見つかっていない問題である。瞬きやら音声やらいろいろあるけどね。
しかしこのビデオではその「問題」をあっさり無視している。ユーザが欲しいとき(というかビデオの都合の良いとき)に「誰かが」システムをクリックして、ユーザの入力を確定し、ユーザに情報を提示してくれるのだ。

・ユーザが欲しいものを「ピンポイント」で指定する技術:このビデオの世界では、システムはユーザが求めるものを、ピンポイントで提示してくる。しかしこれにはいくつもの関門がある。システムがユーザの意図を推定する際の誤差。また仮にそれが推定できたとしても、それに適合する情報がない場合のエラー。例えば、Googleに検索キーワードを入力したとしても、一件目に必ず一番欲しい情報がくることはあり得ない。

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このように「重要な技術だとわかっているが、誰もが実現できずに苦労している技術」をあたかも「解決済み」としてコンセプトビデオを作るのはまあよくあることだ。

しかしそうした「コンセプトビデオ」が何も生み出さない、というのは過去数十年にわたり我々が何度も経験してきたことだ。ここ数年もう一つ明らかになった「失敗パターン」が存在する。それは

「難しい問題をネットに向かって丸投げする」

ことだ。これはソニー(というか日本の電機メーカー)がよくやることだが

「すごいハードを作りました!皆さん使い方を考えてください!」

というやつだ。PS3,PSP Vita, Sony Tablet(誰か覚えている?)みんな同じ道を辿っている。しかし不幸にして天才Googleはそれを学んでいないようだ。

We're sharing this information now because we want to start a conversation and learn from your valuable input.

via: Project Glass - Google+

「情報をこのように公開するのは、皆さんと会話し、貴重なインプットを得たいと思っているからだ」

残念ながらこの「誰か考えて下さい」はうまくいった試しがない。そして売れる製品を作ろうと思えば、その「問題に対する答え」は自分で作り上げ、そして製品として提示していかなければならない。

Well, if you're listening (watching?), Google Glass Team, I'll tell you what I want. I want you to take this Steve Jobs quote to heart:

People don't know what they want until you show it to them.

via: Google has finally "unveiled" Project Glass. I say... - Not Stolen. Permanently Borrowed.

こうした「情報の公開」は私が最近抱き始めた「Googleに対する漠然とした不安」を増大させるのだが。。