遙かなる女子会

2012-05-21 06:50

昨今「女子会」なる言葉をよく聞く。ホテルとかレストランも「女子会プラン」なるもので集客を試みているようだ。

存在は知っているが、その内容は私にとっては謎のままである。ところが先日この内容を垣間見るチャンスが訪れた。

かつての同期生が集うFacebookのグループが存在する。そこで女子会が催されたのだ。そろそろ宴たけなわか、と思いグループを見ると

「女子会で出された料理」

の写真がアップロードされている。しかしこの料理はなんだろう。先日男同士で居酒屋に行き

「鯖の水煮缶」

がでてきたので歓喜したのは私です。しかるにアップロードされるのはフレンチだかイタリアンだかの観たことも聞いたこともない料理だ。

さて翌日、参加者からいろいろな感想が書き込まれる。●●ちゃんのスーツ素敵だった!食事もワインもおいしかった!時間が足りないくらいでもっとおしゃべりしたかった!

それを読み私は沈思黙考する。まるで別世界だ。男性と女性をホモ・サピエンスとしてまとめるのは間違っていて、それぞれに違う学名をつけるべきではないか。

それにこの楽しそうなコメント。同期会といって男女混合で話すのもの楽しいが、女子だけで集まるほうがもっと楽しそう。割合は1:3くらいで女子会を多く開催するのが正しいのではなかろうか。

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なぜ唐突にこんなことを言い出したかと言えばこの記事を読んだからである。

「宴会」とは、もともと農耕社会のひとつの共同体における季節事の祭祀に端を発し、共食・共飲・遊興(芸能)を主軸とした祝祭空間であると言われています(小林 1995)。
  その目的は、共同体の構成員の紐帯の確認、帰属意識の強化をめざすものであるということです。故に、共食・共飲・遊興等によって、意識的にハレをつくりだすそうです。

 つまり、「宴会」とは、「メンバーの選択拘束性が強く、目的志向性が強い集い」であり、めざすところは「主従盟約」なのです(井上 1995)。そういう目的のもとに集うことが、「宴会」であるわけです。

via: NAKAHARA-LAB.NET 東京大学 中原淳研究室 - 大人の学びを科学する: 「宴会」でも「パーティ」でもない「第三の集い」:今の組織に必要な「集い」とは何か?

会社というところが概ね男性優位の社会であった間はこの「宴会」でも十分に機能したと思う。しかしあの「楽しい女子会」のコメントを見ていると、宴会に出席するということは私達鈍感な男達(お前が代表するな、という意見もあろうが)の想像以上に女性にとって苦痛なのではなかろうか。少なくともそれは彼女たちが目指す社交の姿ではない。

逆を考えてみればいいのだ。女性優位の会社で「部署の宴会」を行うとすれば、きっと女子会のようになるのではなかろうか。そしてそこに一人紛れ込んでしまった男性がどのように感じるか、と。

でもってアメリカにいるときには時々パーティーなるものに行った。

「パーティ」は「宴会」に比べて、「祝祭性」は弱く、それはあくまで「日常」の延長上にあります。目的は「共同体の帰属意識強化」をめざす宴会とは明確に異なっています。「パーティ」は、プライベートな人間関係を発達させることをめざすそうです(小林 1995)。

 つまり、パーティとは「選択自由性・プロセス志向性が強い集い」であり、めざすところは「一期一会」なのです(井上 1995)。そこは、「共同体」というよりも、むしろ、「アトム化した個」が単位の空間であるということです。

via: NAKAHARA-LAB.NET 東京大学 中原淳研究室 - 大人の学びを科学する: 「宴会」でも「パーティ」でもない「第三の集い」:今の組織に必要な「集い」とは何か?

そこでの主役はあくまでの個と個の会話である。であるからして、英語と英語で交わせる話題に乏しい人間にはつらい空間である。米国滞在1年して出席したパーティーで初めて

「ちゃんと会話できた」

時のうれしさは未だに忘れていない。

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さて、話はずれていく。合コンである。無駄に合コンの回数だけ重ねたことには自信がある。その観察結果から合コンの会話は

・宴会的な集団で話すパターン
・パーティー的な1対1で話すパターン

が流動的に存在するという結論に達した。

この合コンというのは、「場を共有することによる親密感の醸成」も目的だし、「アトム化した個」が会話する場でもある。どちらも有効だし、必要なのだ。そりゃ狙いが決まっていればその人とお話したいし、そうでなくても、いろいろな話が聞けるのは面白い。一番つまらないのは誰かの演説を延々聞かされるパターンだが、それが相手に受けていれば「親密感」が醸成される、、、のかな?

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話しを戻そう。遙か彼方に存在しているのは女子会である。
ある友達(♂)は女子会の感想をよみ

「世の中に女子会という言葉はあるが、男子会という言葉がない理由がよくわかった」

と書いていた。私も同感である。まあオヤジは、鯖の水煮缶でも食べて安酒すすってろということだ。