Appleが始めた核戦争

2012-07-11 07:14

Steve JobsがiPhoneを最初に発表した時、こんなコメントをだした人がいた。

"'Apple is about to touch off a nuclear war,' said Paul Mercer, a software designer and president of Iventor, a designer of software for hand-helds based in Palo Alto, Calif. 'The Nokias and the Motorolas will have to respond.'"

via: Report: Apple to 'touch off nuclear war' with 'iPhone' that's more 'pocket Mac' than mobile phone - MacDailyNews - Welcome Home
Appleは核戦争を始めようとしている。NokiaとMotorolaは対応せざるを得ない。

そしてそれは本当にそうなった。MotorolaはGoogleに買収され、NokiaとBlackBerryは瀕死の状態だ。

同じ頃MicrosoftのCEO, Steve Ballmerはこう述べていた。

$500の携帯電話?世界で一番高価だよね。おまけにキーボードがないから、メールを打つのが難しい。だからビジネス用途にはアピールしないだろう。今ならWindows PhoneのMotorola Qを$99で買うことができる。音楽も聞けるし、インターネット、メールだってOKだ。私は我々の戦略を気に入っているよ。大いにだ。

それに対して、5年前私はこう書いた。

このインタビューをどのように見るかは人によるだろう。しかし私が見るのは


「恐れ」



「自分が並べ立てている利点に力がないことを自分でわかってしまっているセールスマンの姿」


だ。特に後者はある程度の知性がある人が陥りやすい状態。そのことを理解できるだけの知性がなければ、力強く自分達の強さを主張できるものを。


あるいはMicrosoftは巨人であり、Appleはマイナープレイヤーでしかないのだから


「いや、確かにすばらしい。しかしわが社の次の製品をみてくれ」


くらい余裕をもった発言をすべきだ、という意見もあろう。しかし仮にこれができないとすれば私が考え付く理由は次の二つだ。

1)Microsoftは戦って相手を叩きのめすことで成長してきた会社だ。Red Oceanの戦いでは世界一強い。そうした会社に謙虚なコメントは似合わない


2)恐れ。そうした余裕をもてないほどの。

もちろんこれがあたっているなどと主張するつもりはない。私はそう思うだけだ。

via: ごんざれふ

そして5年前に始まった核戦争は、とうとうMicrosoftにまで及んできた。

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アップルが販売するすべての端末、つまりMacだけでなくiPadやiPhoneも合わせてみてみると、Windowsとアップル製端末の出荷台数の比率はいまや2対1をきる水準まできていることがわかる。上記のグラフからは、いわゆる「ポストPC」時代の端末の登場で、PCが元々持っていた影響力が急激に切り崩されていることがわかる。PCはいまや単にアドバンテージをひっくり返されただけでなく、iPhoneやiPadの普及でかつてのアドバンテージをすっかり打ち消されてしまったといってもいい。

via: Windowsの覇権が失われる時... - Asymco - WirelessWire News(ワイヤレスワイヤーニュース)

現時点で、Windowsマシンの売上はMacの20倍。ところが一時はこれが50倍を超えていた。すばらしい、Macの回復ぶり、、というだけではない。仮にiPhoneとiPadを合わせると、その比率は2:1を切っているらしいのだ。

これはどういうことか?数年前、Mac上でソフトウェアを作ろうと思えば、インターネット上に参考になる情報を載せている日本語サイトは2つくらいしかなかった。そのどちらかに載っていなければ自分で調べるか考える必要があった。

今、iOS上でソフトを作るとき、何かつっかかればいろいろな言語で書かれた山のようなサイトがヒットする。ほとんど全ての問題でだ。これは一プログラマーとしての感想だが、前記「2:1」の比率を実感できる事実でもある。

というわけで、Ballmerはこう明確に宣言したらしい。

"We are trying to make absolutely clear we are not going to leave any space uncovered to Apple,"

via: Exclusive: Microsoft's Ballmer Throws Down Gauntlet Against Apple
このことは明確にしておく。我々はAppleがやろうとしていること全てに対抗する。

Microsoft全面核戦争の宣言である。核戦争だから、戦闘員も非戦闘員も一緒くたである。かくして、これまで忠実にWindows マシンを作ってきたPCベンダーもふっとばされるのであった。

もしもこの噂が真実なら...そして確かに真実のようだが...、HPやそのほかのOEMたちは、Microsoftが近々より優れたハードウェアを発売するので、ARM RT(WART)を搭載した自社製Windowsタブレットの製造を中止する。SemiAccurateはこう報じている:

Microsoftは同社の輝かしい二製品の、チップメーカー使い分け戦略により、ARM系チップメーカーとOEMの両者に手錠をかけてしまった。MicrosoftはOEM各社の製品設計に密接に協力してきたが、それらの設計が完成した次の瞬間にはOEM各社の革新的な機能をすべて取り入れた自社製品を発表し、しかも、その製品は、それらOEMにとって直接の競合製品であるだけでなく、彼らの製品の弱点を十分に知った上で設計された製品でもある。

via: MicrosoftはSurfaceでOEM各社を困らせる, HPは自社のWindows ARM機を製造中止

いや、すさまじい。和をもって尊しとなす日本企業には全くできないねえ。ちなみにMicrosoftの目標だが

Microsoft's goal is to sell "a few million Surface PCs" in the coming year. (I actually thought I heard Ballmer say "a few millions," with an "s.") Ballmer also said that according to estimates, there will be 375 million Windows PCs sold in the next 12 months.

via: Microsoft plans to sell 'a few million' Surface PCs in the coming year | ZDNet

向こう一年間でWindows PCは375×100万台くらい出荷される。MicorsoftはSurfaceを"a few million"売る計画なのだそうな。Appleが最初にiPhoneを発表した時と同じく、シェア1%を目標とするのだろうか。

というわけで、今日も日本の家電メーカーはこんな製品を作り上げるのであった。

本体にはベル音を内蔵し目覚まし時計として利用することも可能。「明るさセンサー」や「照明オフ連動
機能」、「無信号電源オフ」「無操作電源オフ」などを搭載し、テレビ側が自動で節電する機能も備える。

via: 痛いニュース(ノ∀`) : シャープ、テレビに「目覚まし時計」機能を搭載! 本体にベル音内蔵 - ライブドアブログ