おうちにkoboがきた

2012-10-25 07:02

いや、いままで散々けなしていたくせになぜだと問われれば、楽天カンファレンスのライトニングトークで社外から参加した人には全員もれなくプレゼントだったのだな。

太っ腹だなあと思っていたが、今朝こんなニュースを観た。

楽天銀行カード作ったら、クソ電子ブック koboをタダで送ってきた。48を卒業したら、家電ヲタに返り咲きそう(^。^) pic.twitter.com/hxG8MbqH

via: Amazon「Kindle」の黒船来航、一方国内では楽天カード会員に楽天「Kobo」が勝手に送りつけられる事案が発生 : 市況かぶ全力2階建

よっぽどあまってるんだろうなあ、とは考えてはいけない。スピード!スピード!スピード!なのだ。

でもって

いや、物にふれずにけなすのはけしからん。というわけでさっそく使ってみようとした。

噂通り、箱は異常に固くなかなか本体を取り出せなかった。こういうところに「強迫神経症」てきな人間がいるかいないかの差がでるのだな。

でもってマニュアルを読み、無線LAN経由でセットアップを行う。この時点でタッチパネルの反応の悪さにいらいらする。無線LANアクセスポイントのパスワードが丸見えになるのは冗談かと思った。

なんでもkoboは消費電力の少ない電子ペーパーを使っているから、画面の反応速度やタッチの精度をiPadなんかと比べるのは間違いだ、、とまあ知っている人はいうのだろうがこの反応は冗談としか思えない。というか、時計を5年巻き戻せば、これがタッチパネルの「常識的」な反応だったのだよね。iPhoneが異常なだけで。

そのうち準備ができたようだ。というわけでさっそく無料の青空文庫が数冊読めるようになっている。本を読んでいる間はあまりイライラしない。しかし例えば「新しい本」を探そうとすると、いくつもの戦いにうちかつ必要がある。

まず画面が不必要に書き換わるのが見える。まあこれは目をつぶろう。自分もよくやるから。次に「無料の本」で探すと、青空文庫が全部でてきてほしいのだが、そのうち一部しかでてこない。

検索しようと思えば、またあのタッチパネルと格闘し、著者名を入力しなければならない。そこらへんでアウト。うちにはiPad2がある。なぜこんな使いづらいもので本を読まなければならないのかがわからない。

もちろんこれはアンフェアな比較だ。koboのメリットは「カバンに気軽に放り込み、充電を気にせず使いつづけられる」ところにあるのだと思う。私はそうした使い方をしていない。

よし、じゃあ金をだして本を買うか、、ということになるのだがどうも現在こういう調子のようだ。

まず「紙という物理媒体が要らないのだから、きっと安いだろう」と思う。ところが不可思議な日本の出版事情によりそうではないようだ。

新刊以外の既刊本については、Amazonのマーケットプレイスなどの中古本まで競合に入れて比較すると、これは電子書籍には勝ち目はほとんどない。

via: "知ったかぶり"したい人のための電子書籍入門--(1)導入編 - (page 6) - CNET Japan

これほど消費者を馬鹿にした話もないと思うが、なんと紙の本と電子出版を比べると、場合によっては電子出版のほうがすこし安いが、中古まで考えると高いのだそうな。そんなもの誰が買うんだ。

おまけに

とりわけ、買った本が読めなくなる危険性はたびたび指摘される問題だ。ひとつはストア側にまつわるもので、ストアの閉鎖・終息などにともない、購入済みの本であっても再ダウンロードができなくなるというもの。つい先日も、楽天が運営する電子書籍ストア「Raboo」が閉鎖されるにあたり、他ストアへの引き継ぎといった対応が取られずに批判を浴びるケースがあったばかりだ。

via: "知ったかぶり"したい人のための電子書籍入門--(1)導入編 - (page 4) - CNET Japan

いつ読めなくなるかは、運営者のご機嫌次第、ということらしい。となると電子出版のメリットってなんなんだ?

私が思いつくのは「読み捨てる雑誌を買うこと」くらいである。昔Mac Lifeとか、Mac User日本語版を買っていた。ああいう雑誌は面白いが2ヶ月も経てば価値がなくなる。捨てるのも一苦労だ(当時は会社の独身寮に住んでいたので、ゴミ箱の隣においておけば、いつのまにかなくあんっていたが)ああした情報なんかは確かに電子出版に向いているかもしれない。

しかし今やそうした軽い情報はインターネットで無料で手に入る。おまけにkoboはドットの荒い白黒だ。写真とかを主体にした情報には向かないだろう。となると何をこの上で買えというのか?

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思うに映像業界と出版業界は同じ穴にハマっていると思う。既得権益を保護することに熱心なあまり、長く緩慢な死に向かっているという穴に。

じゃあ望みはないのか?といえばこんな意見がある。

・たとえばPixivが、お絵描きの教本を100円で発売しだしたら?
・たとえば保険会社が、健康や医療についての本を100円で発売したら?
・たとえばAKBが、コンプリートで握手券モデルで48冊の100円の本を販売しだしたら?

クズ本だったらば問題ない。だが彼らが、一定品質以上の本を、永久につかえる広告としてバラマキはじめたらどうなるか?
これが電子書籍時代における、出版社の最大のライバルになりうる。

via: どんなに頑張っても、出版社は電子書籍の価格を防衛できない | fladdict

おそらく既得権益にしがみつく人たちを抹消していくのは、こうした試みだと思う。つまり全くの部外者、それによって金を儲けなくてもいい人達による市場破壊だ。

つまり「電子書籍」とは「紙の書籍」とは全く別物であるべきだし、そうなり得る。読者層も、読む動機も、そしてビジネスモデルも全く別物でありえるのだ。

であれば、楽天はどうでもよい

「年内に日本語書籍20万冊」

なんて目標は忘れて、koboの上の「読書」とはどうあるべきかを真剣に考えたほうがよい。楽天が約束を守るなんて誰も思ってないし、既存の枠組み-出版-で戦っている限り、絶対紙の本には勝てないんだからさ。

もう評判はこれ以上下がらないくらい下がってるんだから、失うものないでしょ?楽天のような会社に期待されるのは、それこそ孫氏がADSLモデムをばらまいていたように

「嫌われながらも、既得権益を破壊してく」

役割なんだから。つまり「楽天出版」を作り、そこで質のある程度高く、かつ読み捨てで構わないような「書籍」を次々に発明し、それを一冊99円でばら撒くんだよ。

その時は是非「UI開発失敗の本質」を出版させてくださいな。お安くしとくよ。