WISS2012に行ってきたよ(その1)

2012-12-10 07:21

というわけで、青森県三沢市から返って参りました。毎度のことであるが、たった2泊3日なのに、そのあと日常生活に感覚が戻るまでが大変である。

というくらいにあれこれ刺激を受けるイベントなのだが、今日はまずその「運営」について書きたい。(研究については後日書きます)

想像だが今年は「無駄な時間を徹底的に省く」というのがコンセプトとしてあったようだ。例年最初の一時間は「開催中使うシステム」とか「ホテルの中の案内」とかに費やされる。今年は事前に「旅のしおり」が配布されそうした説明はばっさりカット。一気に10分である。すばらしい。


いや、それ以前に「受付」の改善がすごかった。例年WISSでは受付に長蛇の列ができていた。その場でお金を受け取るから、お釣りがどうとか大変だし、領収書の発行も何かと面倒だし。その列で「あら、こんにちは」とか挨拶がなされるのも恒例行事だったのだが。

今年はほとんど歩くのと同じスピードで受付である。基本的に参加料は事前振込だし、領収書は参加者個人に振られたID順に整然と並んでいる。考えてみれば、自分の名前をずらっとならんだ紙のなかから探すのは、本人が一番早くできる。受付の人が、リストをあれこれ見ているのだが、自分のほうが早く見つけることが多い。
であれば、本人に探してもらったほうがいいではないか。というわけで領収書を受け取り、山とつまれた予稿集を受け取れば受付完了である。

もう一つ感心したのは、デモの一分間発表だった。私が参加する学会ではデモ発表がなされることが多い。でもって大抵事前に「一分間発表」というのがある。これがなかなか大変だ。デモを行う側は本来の展示とは別の説明を考えねばならぬし、その準備のためにながーい列に並ばなくてはならない。そしてだいたい「3B-8で発表をやっています」とかいうのだが、そんな数字誰が覚えられるというのだろう。

というわけで改革である。カメラが2台実際のデモを行う場所を周り、担当者に一分しゃべってもらう。実にテンポよく画面が切り替わるので、見ている側は楽しいし、実際にデモを行う実物を見ることができるからイメージもわく。(登壇するタイプでは、大規模はデモ装置を見せることができない)いやすばらしい。

後から知ったことだが


素人がやる学会中継としては最大規模だったと思う。特にデモ中継は質問者x2、カメラマンx2、ケーブルさばきx2、+アルファ(スイッチャ、中継者とか)で運用した。まあ、やりゃあできると言われればそうだけど、問題はこれをどうやって持続可能な形にするかだと思う。


via: Twitter / DaisukeSakamoto: 素人がやる学会中継としては最大規模だったと思う。特に ...

というすさまじいことをやっていたようだ。感嘆と賞賛の他はない。

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ちなみにおじさんはこの中継をみて変なところで感心していた。私が子供の頃、NHK教育にでてきたどこかの先生がものすごく硬い表情で

「私はいま大変緊張をしていますが..」

と述べた事を覚えている。何の話だったかは全く覚えていないが、その表情だけは覚えている。

つまり今より一世代、二世代前の日本人にとって

「カメラに向かって話す」

というのはそれほど非日常的で心理的な圧迫を与えるものだったのだ。

しかしまさしく「時代は変わった」のだ。デモの一分間発表を行う人達の流暢なこと。(いや、もちろん緊張はしているのだろうけど)

カメラと一緒にデモを回っている二人のレポーターというかなんというかの上手さは言うまでもない。産総研の塚田氏が「茶番」を入れるたびに、会場のチャットでは「安定の茶番」という言葉が飛び交う。ああ、最近の若者は素晴らしいなあ。

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と書いているうちに思い出した。もう一点の改革。

超消極的な人でも安心して使える学会での交流促進システム
西田 健志(神戸大),濱崎 雅弘,栗原 一貴(産総研)
「積極的に交流した方がいいよ」とは言うけれど、それができないから苦労しているのです。「それなら誰と交流したいのか教えてよ、紹介するからさ」とは言うけれど、もしうまく話せなかったらどうします?私となんか交流したくなかったらどうします?それでも心に秘めたこの想い...。そんな奥ゆかしいあなたをこそ私たちは応援したい。

via: プログラム - WISS2012

これである。学会の時の食事の席ぎめというのはいつも私を悩ませてくれる。いや、私そもそも友達少ないし。仮に同じ所属から来ている人がいても、わざわざ外部の集まりまできて一緒に座るってのも変だし。それに日本には上座とかあるじゃない。えーっと床の間があっちだから、ここらへんは上座なのかな?でもってそもそも誰と喋ればいいのか。

というわけでこの交流促進システムである。自分の希望。他人が書いてくれた自分を含む希望、あるいは単に「交流したけど交流怖い」でもいいのである。とにかく何か書いておけば、席が割り振られる。いや、素晴らしい。お陰様で一日目、二日目とも楽しく夕食時に会話させていただきました。思わず

「どんな希望書いたの?」

と聞きたくなるような席ぎめもあるのだが、それはご法度とのこと。「セキハラ」とでも言うべき事象のようだ。この「セキハラ」ってのは今思いついた言葉だがなかなかよろしい。これから忘年会シーズンなので、上司が男女問わず席を割り振ったり、あるいは席決めについてあれこれ言ったり、詮索したりすることをこれから「セキハラ」と呼ぶことを提唱したい。

というわけで明日からは(もち覚えていれば)いろいろ見聞きした研究のことについて。