事業計画なんてものはゴミだ

2013-02-07 07:02

と私は信じている。そもそもその製品が何台売れるかなんて誰にわかるのだろう。そんな数字はいくらでも創りだすことができる。

おまけに「計算できる未来」というのは、所詮現在の延長線上にしかない。今あるすべての変数が連続的になめらかに変化する、という無茶苦茶な想定でのみそれは成り立つのだ。

なぜこう書くかといえば、過去に何度も「机上の空論」を作ったし、それが予測しなかった非連続的な変化にふっとばされたからだ。そしてそのことを正直に告白する人は少ない。

僕はデコメールサイトに関わっていたことがある。事業計画を作り、会社から資金を貰い、サービスを立ち上げた。後発ながらそれなりの規模まで成長させ、他の者に引き継いだ。

立ち上げる際、適当なグラフを作る。ここで言う「適当」は難しいのだけれど、同じスピードでキレイな曲線を描いていくグラフなんて基本的に無く、市場変化だったり、サービスのアクションだったり、何かしらグラフを最低2ヶ所は曲げさせる。

数字なんて実際は誰にも分からず、「意思」を反映した方が良いと思っている。もちろん、精度を高めるため、あらゆる数字を集めて、根拠は作る。

(中略)

今、現在どうなったのか。

LINEというアプリが大流行し、デコメールの変わりに「スタンプ」が流行っている。現在もデコメールを使っているのは、ガラケーを使用しているわずかなユーザーのみ。今後デコメール市場は更に縮小されていくと思われる。

何が悔しいかといえば、僕はLINEを全く思い浮かばなかった。本当に「全く」だ。正直、こんなに悔しいことはない。

via: デコメール死亡 「LINEの登場」を予測できなかったプロデューサーのお話 | サイプロ ~とあるサイトプロデューサーのブログ~

あらゆる数字を集めたところで未来に発生する非連続的な変化は誰も予想できない。くだらない数字を集めてあれこれ議論するのが好きな人はやればいいと思うが、そうした会議に私を呼ばないでほしい。

この記事はもうひとつ面白い点を提示している。すなわち

「業界の事情に詳しい人が進歩を妨げる」

というやつだ。

キャリアメールのアドレスは変わるわけ無いよ、というそれまで正しかった「業界の常識」が簡単に覆ってしまったわけだ。

「スマホ使いにくいな。。。」と思っていて、ガラケーからスマホへの移行が遅れたことで、発想を妨げる原因になったと思います。

via: デコメール死亡 「LINEの登場」を予測できなかったプロデューサーのお話 | サイプロ ~とあるサイトプロデューサーのブログ~

おそらくこの人はガラケーが育んでいた特殊な生態系に安住していたのだろうと思う。そりゃ「詳しい」人はそう思うよね。私みたいにあの下品さを毛嫌いして触らなかった人と違って。たとえばこの人もそうだけど。

iPhone3Gを弄繰り回してみてたどり着いた結論が『やっぱニッポンのケータイインターネットマシンとして見てもすげぇよくできてる』だ。まぁなんていうか、皆色々期待感ある発言してるけど、もうそろそろわかってきてるんでしょ? やっぱ日本のケータイインターネットマシンとして見てもすげー便利だ、ってことに。

via: iPhone 3Gはインターネットマシンとして見ても微妙? ガラパゴス・ケータイはやっぱりすごかった - キャズムを超えろ!

つまるところは「変化を見通す力のない"事情通"の意見は、有害だ」ということになる。iPhoneが出た時に、どういう反応を示したか。LINEが勃興しつつあるときに私みたいに「Skypeあるじゃん」とか馬鹿なことを言わなかったか。そういう観点で"事情通"を採点すると面白いんじゃないだろうか。

いや、しかし今あらためて和蓮和尚氏という「事情に詳しい人」の未来予想を見ると、大変興味深いものがあるな。というか「革新」を殺すのはこういう「事情通」ではないかと真面目に考えているのだ。

最後にちょっとビジネスの視点から。まぁ日本は一旦この状況(コンテンツまで含めてガラパゴス最適化)が出来上がってしまったので動きはほとんどないと思うのだが、諸外国でどういう動きになってゆくのかが興味深い。

via: iPhone 3Gはインターネットマシンとして見ても微妙? ガラパゴス・ケータイはやっぱりすごかった - キャズムを超えろ!