インタラクション2013に行ってきたよ(その1)

2013-03-04 07:04

というわけで、電車の中で鼻をすする音が聞こえるようになったらインタラクションである。今年も感想をぱらぱらと。とはいっても私インタラクティブ発表は、空いているものしか行っていません。だから賞をとるような人が殺到するものは最初から見ていないのです。

一般発表:節電ボリューム: 節電の手間を軽減するつまみ

ものすごくまとめていうと

「つまみ一つで節電できるようにしよう!」

というもの。発表者も認めていたが、まだ「コンセプト提起段階」であり、これを行うことによって問題点を洗い出すといった段階。

面白かったのが

「人間にはOnする動機はあるがoffする動機はない」

というもの。いつもトイレの電気をつけっぱなしにして子供に怒られる私としては深くうなずかざるをえない。しかし発表者が社内でそういったところ、反対のコメントが多かったのだそうな。まず現実を見ましょうよ。

Primer Streamer: ユーザの関心事へと引き込みを行なう常時映像閲覧システム

これは面白かった。何が面白いといって

「常時装着しているHMDの画面内に、例えば野球のスコアを表示しておくと、視界内にある野球道具に気が付きやすくなる」

というもの。この結果に基づけば、たとえばiPhoneアプリでまるで関係なく表示されている広告と、アプリ内のアイテム選択に相関がある、ということになる。

面白いとともに恐ろしい話だ。有料課金ゲームで、ゲームアイテムと、表示する広告を連動させると売上が上がるとかそんなことが実際に起こりうるのだろうか?

えっ、もうやってるんですか?(空耳)

アクティブ音響センシングを用いた把持状態認識

物体にスピーカーとマイクを取り付ける。物体が音を伝達する特性に応じてマイクの入力が変わる。

それを人間が持つと「指での持ち方」に応じて伝達特性が変わる。それで持ち方が判別できるのだそうな。発表も興味部会が、関連研究に関してチャットで盛り上がっていた内容がまたおもしろかった。

実体で身体動作を提示するロボット会議によるソーシャルテレプレゼンスの強化

人間が「会話」する相手として「ロボット」を使うと遠隔地にいても人間のような緊張感を感じます!という結論が先にあり、それにごてごてくっつけた研究(断言)

どっかで「目の前にいるロボットは単なるロボットだ」ということに気が付き、そんな効果はなくなるんじゃないかなあ、と思うがこういうインタラクションシステム研究の常として

「物珍しさによるポジティブ効果」

しか評価されないのであった。いわば「踊りがすばらしい」のではなく「熊が踊っていることが珍しい」という段階。聞いていて実にイライラする発表。

何がいらいらするか?例えば比較対象としてディスプレイに映し出された「アバター」がある。この「アバター」の造形のやっつけ感といったらない。そりゃこんなものが表示されれば誰も「これは人間だ」とは思わんわな。それで「比較した所有意差がありました!」と断言されてもねえ。

などと思っていると、朝のNHKニュースで「お年寄りの会話にロボットを参加させる」というものが取り上げられ、作成者が「会話機能を鍛えています」とか発言している。こういうCHIshな研究はいつまでもそこにある。(つまり進歩しない、ということ)

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ここからインタラクティブ発表

平面感情分布モデルを用いた直観的な顔文字選択支援システム

感情にあった顔文字を選択するシステム(と称している)何をするかといえば、例によって

「感情を8っつに分類した平面上で、今の感情を入力しそれに強さとか付与すると顔文字が選択される」

というもの。この説明を聞いていて私は確信した。「感性情報」をつかったシステムには「オープンループでも途中の選択ロジックに感性、という言葉が含まれていればよい」という一派が存在するらしい。

このシステムでも、途中の説明は長々しいが

「じゃあ表示された顔文字が自分が意図したものと違ったらどうすればいいんですか?」

という質問にはまともな答えが帰ってこない。せめて

「感性マップをなぞると、それに応じた顔文字が隣のウィンドウにリアルタイムで表示される」

というものになっていれば、自分が意図した顔文字が選択しやすいと思うのだが、ハナかなそうした考えはないようだ。つまり最終結果に対するユーザフィードバックを想定していないのである。去年からこうしたシステムにはいくつかお目にかかるその度にいらいらさせられた。インタラクティブ発表だと発表者相手に議論ができるところがいいところだ。

Round-Table Browsing: 対面共有ウェブ検索を支援する場の創出 -回転寿司メタファによる履歴共有-

多人数で協力して情報を検索するさい、隣の誰が何を検索しているかノートPCの画面のウラに表示するといいですよ。あるいは検索履歴を「回転寿司」のように流しておくといいですよ、という試み。

大型ディスプレイにみんなが検索しているものを分割して表示したほうが一覧性も高くいいのではないかといっても全く話が噛み合わない。履歴を横に流すから回転寿司とか言われてもねえ。これも結論ありきの研究。作成者の熱意だけはよくわかった。


TweetChair: モノへの愛着を利用した健康支援の試み

椅子に座ると、体重を検知して「重いくなったす」とか椅子がfacebookに書き込む。また場合によっては他の人が使う椅子が「こっちは軽くなったす」とか対話をする。

たしかNTTのオープンハウスで似たようなものを数年前にみたことがある。それはコップを落とすと「痛いっす」とかいうものだった。それを指摘したがサーベイしていないのだそうな。

こうした研究は実に「デモ向き」だがすぐ飽きる、という問題点に答えていない。人間が見ていておもしろい会話を持続させるのは困難なのだ。(現状はルールベースで設定された会話を表示しているだけ)こうした試みは何度も繰り返されているのだから、そろそろ「会話に飽きる」という問題に正面からタックルしてほしいものだが。

長くなったので明日に続きます。